帝国魔女奇譚~そのご遺体、承ります~

水芙蓉

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第一章 名医の条件、仁医の条件

何がどうしてこうなった?

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『やっと終わった』

グタッとする桔梗を乗せ、二頭立ての馬車が進む。
哨鎧騎士団は馬車を十台持っており、その内の三台を客用として使っている。
特別な事情がない限り、新人騎士が御者を務める。
上流階級の作法を学べるからだ。
平民であれ、下級貴族であれ、哨鎧騎士になれば上流階級の仲間入りをするので、それなりの作法を身に付けなければならない。
権威には飾りが必要だ。

『何でこうなるかなぁ。
アイツら他人の話まっっったく聞きやがらねぇ。
耳付いてんのか?』

桔梗は口を曲げ、心の中で苦情を並べた。

約三時間の交渉の末、桔梗は哨鎧騎士団に一ヶ月毎に十本の抗真菌薬を納め、その替わりに二人の哨鎧騎士が彼女の助手として派遣される事になった。
ほぼフランシスの目論見もくろみ通りである。
彼は全力で抵抗する桔梗をなだめ、すかし、時に脅し、巧みな話術で誘導した。
素晴らしいコミュニケーション能力だと称えるべきか、腹黒いと罵るべきか………。

『どうしよう。
時間稼ぎは出来たけど、三日で片付くかな、あの診察室。
最悪ウチに押し込もう。
見られたらヤバイ物もあるし。
診療所の客間は大丈夫だから、診察室さえ何とかすればいい。
セシリャさんとフィリップさんなら哨鎧騎士団の情報持ってるかもだし、後で訊いてみよ。
今優先すべきは……………、私の尻だ』

この国の馬車は戦時を想定して造られており、実利を重視している。
実利一辺倒と言っても良い。
つまり、快適は二の次三の次だ。




約一時間後、桔梗は地獄の馬車から這う這うの体で降りた。
既に尻が悲鳴を上げている。

『やっと……、着いた。
もう馬車には乗らない。
乗って堪るかっ!
騎士団の客用馬車でこれじゃ辻馬車なんて近付きたくもない。
てか、クッションくらい用意しろよ。
公務員のくせにケチりやがって』

心の中で悪態を吐き散らし、ノロノロと歩く桔梗。
グスタヴス邸(別邸)は目の前だ。

大きな噴水と色取り取りの睡蓮が浮かぶ広場を抜け、その先にある玄関を目指す。

『何でこんな遠いのよ。
別邸って聞いたけど、別邸がこれなら本邸どうなってんの?
金かけ過ぎだろ、デカイし、遠いし、もうちょっとコンパクトにしろよ。
冒険者がいない世界で迷宮造んな』

尻の安全を優先した事を心底後悔する桔梗。
玄関まで乗せてもらうべきだった。
たとえ尻が痛くとも。

ややあって、玄関のような物が見えてきた。
ようなと付くのは、玄関に有るまじきブツが引っ掛かっているからだ。

『……………、住所間違えたかな?』

玄関の真ん中、今にも動き出しそうな骸骨がプラプラと揺れている。
まるでお化け屋敷だ。
貴族の、いや、人の家とは思えない。

桔梗は目を点にしたまま立ち尽くした。
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