六華 snow crystal 3

なごみ

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自信を失って

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*遼介*


次の配達へと車を走らせながら、たった今会った、彩矢ちゃんとゆうりに思いをはせる。


ゆうり、あんなに大きくなって、おしゃべりまで出来るようになっていた。


今のところ、いじけたようには見えないし、スクスクと育っているように思えた。


松田先生は可愛がってくれているのだろうか。俺の子だから優しくなどしてもらえるとは思えないけれど、さっぱりとした性格だから、案外上手くやってくれているのかも知れない。


あんな立派なマンションに住んで、俺なんかが父親でいるよりも、ずっと良かったような気がする。


ゆうりの幸せな様子に安堵しながらも、この寂しさはどこから来るのか。


彩矢ちゃんは宅配業などやっている俺を見て、なんと思っただろう。


松田先生と結婚して色々大変なこともあっただろうけど、結局は俺を選ばなくてよかったと思っているだろうな。


俺の仕送りや助けなど本当に必要なくて、彩矢ちゃんが言ってた通り、はじめから何もあてになどされていなかったんだ。


有紀からも彩矢ちゃんからも、なんの頼りにもされていない自分が哀しく情けない。


有紀もつまらないだろうな。こんな男と結婚して、がっかりしていることだろう。


朝早く夜も遅いので、夫婦の会話も少なく、たまの休日も休んでいたくて一緒に外出などする気にもならない。


3月の住宅街はまだ雪が残っていて、ガタガタとそろばんのようになっている道路の運転は腰にくる。


今日は一日中陰鬱な気分が抜けず、仕事を終え、夜10時過ぎにアパートへ帰宅した。


主任になった有紀は、夜勤の仕事がなくなったので土日祝日が休みになった。


昇給したのに夜勤の手当てがなくなって、給料が下がったとぼやいていた。


俺の仕事に不安を感じるのか、お金の心配ばかりしている。


そんな心配をさせている俺が悪いということはわかるけれど、あまりにも生活感丸出しでうんざりする。


新婚当初のような、可愛らしさまでなくなってしまったような気がして悲しくなる。


それも俺のせいなのだろう。まだ子供もいないのに、何にそんなにお金がかかるというのか。


確かに子供ができたら産休に入ったりして、俺だけの稼ぎでやっていかなければならないのだから、貯金が必要というのはわかるけれど。


俺などあてには出来ないということなのだろう。


こんなにくたくたになるまで働いても、全く信用されてないという寂しさ……。







今日もまた、荷物の中に彩矢ちゃんの名前を見つける。


ゆうりに会いたい気持ちがないではないけれど、一体どんな態度を取っていいのかがわからない。


インターホンで宅配業者と名乗る。


エレベーターに乗り、28階で降りる。マンションのブザーを押し、彩矢ちゃんがドアを開けて笑顔を向けた。


「あ、こんにちは。荷物の確認お願いします。間違いがなかったら、ここにサインして、、」


「佐野さん、ちょっと待ってて、」


彩矢ちゃんはそう言うと、慌ててリビングの方へ行ってしまった。


今日はゆうりはいないのだろうか?


程なく彩矢ちゃんが戻って来た。


「これ……、貰ってくれる?」


そう言って差し出したのは、ゆうりの写真だった。


生まれた時から、最近までの写真が10枚ほどあった。


「あ、……いいのかな?  俺、貰っても」


「迷惑じゃなかったら」


彩矢ちゃんがうつむきながら言った。


「迷惑なんてことないよ。嬉しいよ、すごく」


「本当?  」


彩矢ちゃんが顔をあげて俺を見つめた。


どんな顔をしていいのかわからず、今度は俺の方が下を向く。



「ゆうり、おいで!  ゆうりのおもちゃが届いたよ!」


彩矢ちゃんがリビングに向かって、そう叫んだ。


「え~  おもちゃ?  ゆうりの?」


ゆうりが手に仮面ライダーの人形を掴んだままやって来た。


「そうだよ。ゆうりのおもちゃを宅配のおじさんが持って来てくれたのよ」


彩矢ちゃんがそう言って、ダンボールの荷物を子供に渡した。


「なんだろう?  おじさん、ありがとう!」


ゆうりに礼を言われて、一層みじめな気分にさせられる。


「お礼は働いているお父さんに言うんだよ。あ、じゃあ、ここにサインお願いします」


そう言って、彩矢ちゃんに伝票を差し出した。


彩矢ちゃんがサインをして、まだ何か言いたげに俺を見つめていた。


「あ、じゃあ、これで。……写真ありがとう。大事にするよ」


「佐野さん、、」


「じゃあ、失礼します」








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