4 / 61
自信を失って
しおりを挟む
*遼介*
次の配達へと車を走らせながら、たった今会った、彩矢ちゃんとゆうりに思いをはせる。
ゆうり、あんなに大きくなって、おしゃべりまで出来るようになっていた。
今のところ、いじけたようには見えないし、スクスクと育っているように思えた。
松田先生は可愛がってくれているのだろうか。俺の子だから優しくなどしてもらえるとは思えないけれど、さっぱりとした性格だから、案外上手くやってくれているのかも知れない。
あんな立派なマンションに住んで、俺なんかが父親でいるよりも、ずっと良かったような気がする。
ゆうりの幸せな様子に安堵しながらも、この寂しさはどこから来るのか。
彩矢ちゃんは宅配業などやっている俺を見て、なんと思っただろう。
松田先生と結婚して色々大変なこともあっただろうけど、結局は俺を選ばなくてよかったと思っているだろうな。
俺の仕送りや助けなど本当に必要なくて、彩矢ちゃんが言ってた通り、はじめから何もあてになどされていなかったんだ。
有紀からも彩矢ちゃんからも、なんの頼りにもされていない自分が哀しく情けない。
有紀もつまらないだろうな。こんな男と結婚して、がっかりしていることだろう。
朝早く夜も遅いので、夫婦の会話も少なく、たまの休日も休んでいたくて一緒に外出などする気にもならない。
3月の住宅街はまだ雪が残っていて、ガタガタとそろばんのようになっている道路の運転は腰にくる。
今日は一日中陰鬱な気分が抜けず、仕事を終え、夜10時過ぎにアパートへ帰宅した。
主任になった有紀は、夜勤の仕事がなくなったので土日祝日が休みになった。
昇給したのに夜勤の手当てがなくなって、給料が下がったとぼやいていた。
俺の仕事に不安を感じるのか、お金の心配ばかりしている。
そんな心配をさせている俺が悪いということはわかるけれど、あまりにも生活感丸出しでうんざりする。
新婚当初のような、可愛らしさまでなくなってしまったような気がして悲しくなる。
それも俺のせいなのだろう。まだ子供もいないのに、何にそんなにお金がかかるというのか。
確かに子供ができたら産休に入ったりして、俺だけの稼ぎでやっていかなければならないのだから、貯金が必要というのはわかるけれど。
俺などあてには出来ないということなのだろう。
こんなにくたくたになるまで働いても、全く信用されてないという寂しさ……。
今日もまた、荷物の中に彩矢ちゃんの名前を見つける。
ゆうりに会いたい気持ちがないではないけれど、一体どんな態度を取っていいのかがわからない。
インターホンで宅配業者と名乗る。
エレベーターに乗り、28階で降りる。マンションのブザーを押し、彩矢ちゃんがドアを開けて笑顔を向けた。
「あ、こんにちは。荷物の確認お願いします。間違いがなかったら、ここにサインして、、」
「佐野さん、ちょっと待ってて、」
彩矢ちゃんはそう言うと、慌ててリビングの方へ行ってしまった。
今日はゆうりはいないのだろうか?
程なく彩矢ちゃんが戻って来た。
「これ……、貰ってくれる?」
そう言って差し出したのは、ゆうりの写真だった。
生まれた時から、最近までの写真が10枚ほどあった。
「あ、……いいのかな? 俺、貰っても」
「迷惑じゃなかったら」
彩矢ちゃんがうつむきながら言った。
「迷惑なんてことないよ。嬉しいよ、すごく」
「本当? 」
彩矢ちゃんが顔をあげて俺を見つめた。
どんな顔をしていいのかわからず、今度は俺の方が下を向く。
「ゆうり、おいで! ゆうりのおもちゃが届いたよ!」
彩矢ちゃんがリビングに向かって、そう叫んだ。
「え~ おもちゃ? ゆうりの?」
ゆうりが手に仮面ライダーの人形を掴んだままやって来た。
「そうだよ。ゆうりのおもちゃを宅配のおじさんが持って来てくれたのよ」
彩矢ちゃんがそう言って、ダンボールの荷物を子供に渡した。
「なんだろう? おじさん、ありがとう!」
ゆうりに礼を言われて、一層みじめな気分にさせられる。
「お礼は働いているお父さんに言うんだよ。あ、じゃあ、ここにサインお願いします」
そう言って、彩矢ちゃんに伝票を差し出した。
彩矢ちゃんがサインをして、まだ何か言いたげに俺を見つめていた。
「あ、じゃあ、これで。……写真ありがとう。大事にするよ」
「佐野さん、、」
「じゃあ、失礼します」
次の配達へと車を走らせながら、たった今会った、彩矢ちゃんとゆうりに思いをはせる。
ゆうり、あんなに大きくなって、おしゃべりまで出来るようになっていた。
今のところ、いじけたようには見えないし、スクスクと育っているように思えた。
松田先生は可愛がってくれているのだろうか。俺の子だから優しくなどしてもらえるとは思えないけれど、さっぱりとした性格だから、案外上手くやってくれているのかも知れない。
あんな立派なマンションに住んで、俺なんかが父親でいるよりも、ずっと良かったような気がする。
ゆうりの幸せな様子に安堵しながらも、この寂しさはどこから来るのか。
彩矢ちゃんは宅配業などやっている俺を見て、なんと思っただろう。
松田先生と結婚して色々大変なこともあっただろうけど、結局は俺を選ばなくてよかったと思っているだろうな。
俺の仕送りや助けなど本当に必要なくて、彩矢ちゃんが言ってた通り、はじめから何もあてになどされていなかったんだ。
有紀からも彩矢ちゃんからも、なんの頼りにもされていない自分が哀しく情けない。
有紀もつまらないだろうな。こんな男と結婚して、がっかりしていることだろう。
朝早く夜も遅いので、夫婦の会話も少なく、たまの休日も休んでいたくて一緒に外出などする気にもならない。
3月の住宅街はまだ雪が残っていて、ガタガタとそろばんのようになっている道路の運転は腰にくる。
今日は一日中陰鬱な気分が抜けず、仕事を終え、夜10時過ぎにアパートへ帰宅した。
主任になった有紀は、夜勤の仕事がなくなったので土日祝日が休みになった。
昇給したのに夜勤の手当てがなくなって、給料が下がったとぼやいていた。
俺の仕事に不安を感じるのか、お金の心配ばかりしている。
そんな心配をさせている俺が悪いということはわかるけれど、あまりにも生活感丸出しでうんざりする。
新婚当初のような、可愛らしさまでなくなってしまったような気がして悲しくなる。
それも俺のせいなのだろう。まだ子供もいないのに、何にそんなにお金がかかるというのか。
確かに子供ができたら産休に入ったりして、俺だけの稼ぎでやっていかなければならないのだから、貯金が必要というのはわかるけれど。
俺などあてには出来ないということなのだろう。
こんなにくたくたになるまで働いても、全く信用されてないという寂しさ……。
今日もまた、荷物の中に彩矢ちゃんの名前を見つける。
ゆうりに会いたい気持ちがないではないけれど、一体どんな態度を取っていいのかがわからない。
インターホンで宅配業者と名乗る。
エレベーターに乗り、28階で降りる。マンションのブザーを押し、彩矢ちゃんがドアを開けて笑顔を向けた。
「あ、こんにちは。荷物の確認お願いします。間違いがなかったら、ここにサインして、、」
「佐野さん、ちょっと待ってて、」
彩矢ちゃんはそう言うと、慌ててリビングの方へ行ってしまった。
今日はゆうりはいないのだろうか?
程なく彩矢ちゃんが戻って来た。
「これ……、貰ってくれる?」
そう言って差し出したのは、ゆうりの写真だった。
生まれた時から、最近までの写真が10枚ほどあった。
「あ、……いいのかな? 俺、貰っても」
「迷惑じゃなかったら」
彩矢ちゃんがうつむきながら言った。
「迷惑なんてことないよ。嬉しいよ、すごく」
「本当? 」
彩矢ちゃんが顔をあげて俺を見つめた。
どんな顔をしていいのかわからず、今度は俺の方が下を向く。
「ゆうり、おいで! ゆうりのおもちゃが届いたよ!」
彩矢ちゃんがリビングに向かって、そう叫んだ。
「え~ おもちゃ? ゆうりの?」
ゆうりが手に仮面ライダーの人形を掴んだままやって来た。
「そうだよ。ゆうりのおもちゃを宅配のおじさんが持って来てくれたのよ」
彩矢ちゃんがそう言って、ダンボールの荷物を子供に渡した。
「なんだろう? おじさん、ありがとう!」
ゆうりに礼を言われて、一層みじめな気分にさせられる。
「お礼は働いているお父さんに言うんだよ。あ、じゃあ、ここにサインお願いします」
そう言って、彩矢ちゃんに伝票を差し出した。
彩矢ちゃんがサインをして、まだ何か言いたげに俺を見つめていた。
「あ、じゃあ、これで。……写真ありがとう。大事にするよ」
「佐野さん、、」
「じゃあ、失礼します」
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
神様がくれた時間―余命半年のボクと記憶喪失のキミの話―
コハラ
ライト文芸
余命半年の夫と記憶喪失の妻のラブストーリー!
愛妻の推しと同じ病にかかった夫は余命半年を告げられる。妻を悲しませたくなく病気を打ち明けられなかったが、病気のことが妻にバレ、妻は家を飛び出す。そして妻は駅の階段から転落し、病院で目覚めると、夫のことを全て忘れていた。妻に悲しい思いをさせたくない夫は妻との離婚を決意し、妻が入院している間に、自分の痕跡を消し出て行くのだった。一ヶ月後、千葉県の海辺の町で生活を始めた夫は妻と遭遇する。なぜか妻はカフェ店員になっていた。はたして二人の運命は?
――――――――
※第8回ほっこりじんわり大賞奨励賞ありがとうございました!
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
あまりさんののっぴきならない事情
菱沼あゆ
キャラ文芸
強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。
充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。
「何故、こんなところに居る? 南条あまり」
「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」
「それ、俺だろ」
そーですね……。
カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。
椿の国の後宮のはなし
犬噛 クロ
キャラ文芸
架空の国の後宮物語。
若き皇帝と、彼に囚われた娘の話です。
有力政治家の娘・羽村 雪樹(はねむら せつじゅ)は「男子」だと性別を間違われたまま、自国の皇帝・蓮と固い絆で結ばれていた。
しかしとうとう少女であることを気づかれてしまった雪樹は、蓮に乱暴された挙句、後宮に幽閉されてしまう。
幼なじみとして慕っていた青年からの裏切りに、雪樹は混乱し、蓮に憎しみを抱き、そして……?
あまり暗くなり過ぎない後宮物語。
雪樹と蓮、ふたりの関係がどう変化していくのか見守っていただければ嬉しいです。
※2017年完結作品をタイトルとカテゴリを変更+全面改稿しております。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
【完結】東京・金沢 恋慕情 ~サレ妻は御曹司に愛されて~
安里海
恋愛
佐藤沙羅(35歳)は結婚して13年になる専業主婦。
愛する夫の政志(38歳)と、12歳になる可愛い娘の美幸、家族3人で、小さな幸せを積み上げていく暮らしを専業主婦である紗羅は大切にしていた。
その幸せが来訪者に寄って壊される。
夫の政志が不倫をしていたのだ。
不安を持ちながら、自分の道を沙羅は歩み出す。
里帰りの最中、高校時代に付き合って居た高良慶太(35歳)と偶然再会する。再燃する恋心を止められず、沙羅は慶太と結ばれる。
バツイチになった沙羅とTAKARAグループの後継ぎの慶太の恋の行方は?
表紙は、自作です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる