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夫婦の危機
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*遼介*
離婚……。
有紀の口からこんな言葉が飛び出すとは思ってもみなかった。
たしかに結婚して数ヶ月で、子供の発覚や、失業、宅配業への転職など、有紀にとってあまりにも不本意な出来事が重なったけれど。
だけど、乗り越えられると単純に思っていた。もっと深いつながりで信頼し合っていると勝手に思い込んでいた。
谷さんへの想いは別れた後もずっと続いていたのだろうか。
俺だけを、ずっと俺だけを想ってくれていたと信じていたのに……。
昨夜はあまりのショックでほとんど眠れなかった。
今朝は顔を合わせたくなくて、朝食もとらずに7時前に家を出た。
コンビニの駐車場で、買ったおにぎりとペッドボトルのお茶を飲んで、仕事場に向かった。
悠李と彩矢ちゃんに、もう会わないと言えば有紀は許してくれるのだろうか。よそに子供がいること自体が許せないのだとすれば、別れるしかないけれど。
有紀と別れる…………絶対に嫌だ。
今日も悠李が俺のことを待っているかも知れないと思うと、公園へ行かずにはいられなかった。
だけど、今日で最後にしよう。有紀との生活を犠牲にすることは出来ない。
公園の道路沿いに車を停めると、ジャングルジムを登っている悠李が見えた。
ジャングルジムへ向かって歩いていくと、悠李が俺を目ざとく見つけた。
「おじちゃーん、たくはいのおじちゃーん!」
ジムに登る悠李を見上げていた彩矢ちゃんも、振り向いて明るい笑顔をみせた。
「悠李、おじちゃんより大きいよ!」
得意げにいう悠李が本当に可愛いかった。
「そうだな、落ちるなよ!」
悠李がジャングルジムで遊んでいるので、隣に立っている彩矢ちゃんと何を話していいのか分からなくなる。
「佐野さん、ありがとう。忙しいのにごめんなさい」
彩矢ちゃんの顔を正視できずに、抱っこされている雪花ちゃんに目を止めた。
「可愛い子だね。…………こ、この子って彩矢ちゃんの子なのかい?」
「えっ? そ、そうだけど、どうして?」
何故そんなことを聞くのかと言うような、驚きの眼差しで俺をみた。
「あ、ごめん。莉子の妊娠で離婚したって前に聞いたから。もしかして莉子の子なのかなと思って」
「莉子ちゃんの妊娠はウソだったの。潤一さん、私との離婚届も提出してなかったから」
「そうだったんだ。よかったね、安心したよ、松田先生がついていてくれるなら。………彩矢ちゃん、悪いんだけど俺、もうここへは来られない」
また泣き出されたら、どうすればよいのか。
「……そうね、そうしましょう。有紀に悪いことしてるって私も思ってたから。ごめんなさい。有紀にも、有紀にも赤ちゃん出来たんでしょう? 男の子? 女の子?」
彩矢ちゃんが意外なほどすんなりと納得してくれたので、少し拍子抜けした。
「あ、いや、俺たちにはまだ子供はいないんだ」
「そうなの。有紀は子供が大好きなのに。有紀、すごくいいママになりそう。優しいパパとママだから、生まれてくる赤ちゃんは幸せね」
「…………」
彩矢ちゃんは俺たちが上手くいってないなんて、思いもしないんだろうな。
「あ、私たち秋にアメリカに行くことになったの。だからもう会えないけど、佐野さん元気でね」
「えっ、アメリカへ!」
「潤一が研修に行きたいって。昨日、急に言われて」
「…………」
悠李がジャングルジムから降りてきた。
「ねぇ、おじちゃん、かたぐるまして」
俺を見つめてそう頼む悠李に切なさが込みあげる。
アメリカへ。
悠李にもう会えなくなる…………。
自分の方からもう会いに来られないなどと言っておきながらショックを受ける。
やっぱりダメだ。
アメリカへ行ってしまうまでは会っていたい。大きくなってしまった悠李には、もう会うことなど出来なくなる。
目に涙がにじんで悠李を肩車しながら走った。
「わ~ はや~い! ママ、みて、みて! 悠李ひこうきだよ!」
飛行機の翼のように両手を広げている悠李を、彩矢ちゃんが涙ぐんで見つめていた。
なぜ、なぜ、俺たちはこんなに悲しい運命なのだろう。
しばらく遊んだ後、悠李と別れ、車の中で昼に買ったコンビニ弁当を食べる。
” 有紀は子供が大好きなのに ”
俺たちに子供がまだいないことが、彩矢ちゃんには意外だったのだろうか。
子供を積極的に作れなかったのは、悠李に対する負い目があったからだと思う。
何もしてあげられない悠李が不憫で、有紀との子供を可愛がることに罪悪感があった。
有紀には関係のないことなのに、そんな自分勝手な感情に有紀を巻き込んでいた。
俺と有紀との子供を作ろう。
有紀だって子供ができたら気持ちも変わるだろう。
子供をつなぎとめるための道具にしたくないけれど。
十時過ぎに帰宅すると、昨日と同じようにラップのかけられたご飯とおかずがテーブルに置かれていた。
寝室のドアを開けると有紀は寝ているのか電気は消されていた。
ベッドへ腰をおろし、有紀の顔を覗き込む。
「有紀? 起きてるんだろう? 有紀、俺たちちゃんと話し合おう。 もう一度はじめからやり直そう。……頼むよ有紀。俺も色々考えて反省したんだ。まだ直して欲しいことがあったら、言ってくれよ」
「…………」
「有紀、俺たち、子供作らないか? 有紀、」
「さわらないでったら!!」
肩にふれただけなのに飛び起きて拒絶した。
「有、有紀……」
離婚……。
有紀の口からこんな言葉が飛び出すとは思ってもみなかった。
たしかに結婚して数ヶ月で、子供の発覚や、失業、宅配業への転職など、有紀にとってあまりにも不本意な出来事が重なったけれど。
だけど、乗り越えられると単純に思っていた。もっと深いつながりで信頼し合っていると勝手に思い込んでいた。
谷さんへの想いは別れた後もずっと続いていたのだろうか。
俺だけを、ずっと俺だけを想ってくれていたと信じていたのに……。
昨夜はあまりのショックでほとんど眠れなかった。
今朝は顔を合わせたくなくて、朝食もとらずに7時前に家を出た。
コンビニの駐車場で、買ったおにぎりとペッドボトルのお茶を飲んで、仕事場に向かった。
悠李と彩矢ちゃんに、もう会わないと言えば有紀は許してくれるのだろうか。よそに子供がいること自体が許せないのだとすれば、別れるしかないけれど。
有紀と別れる…………絶対に嫌だ。
今日も悠李が俺のことを待っているかも知れないと思うと、公園へ行かずにはいられなかった。
だけど、今日で最後にしよう。有紀との生活を犠牲にすることは出来ない。
公園の道路沿いに車を停めると、ジャングルジムを登っている悠李が見えた。
ジャングルジムへ向かって歩いていくと、悠李が俺を目ざとく見つけた。
「おじちゃーん、たくはいのおじちゃーん!」
ジムに登る悠李を見上げていた彩矢ちゃんも、振り向いて明るい笑顔をみせた。
「悠李、おじちゃんより大きいよ!」
得意げにいう悠李が本当に可愛いかった。
「そうだな、落ちるなよ!」
悠李がジャングルジムで遊んでいるので、隣に立っている彩矢ちゃんと何を話していいのか分からなくなる。
「佐野さん、ありがとう。忙しいのにごめんなさい」
彩矢ちゃんの顔を正視できずに、抱っこされている雪花ちゃんに目を止めた。
「可愛い子だね。…………こ、この子って彩矢ちゃんの子なのかい?」
「えっ? そ、そうだけど、どうして?」
何故そんなことを聞くのかと言うような、驚きの眼差しで俺をみた。
「あ、ごめん。莉子の妊娠で離婚したって前に聞いたから。もしかして莉子の子なのかなと思って」
「莉子ちゃんの妊娠はウソだったの。潤一さん、私との離婚届も提出してなかったから」
「そうだったんだ。よかったね、安心したよ、松田先生がついていてくれるなら。………彩矢ちゃん、悪いんだけど俺、もうここへは来られない」
また泣き出されたら、どうすればよいのか。
「……そうね、そうしましょう。有紀に悪いことしてるって私も思ってたから。ごめんなさい。有紀にも、有紀にも赤ちゃん出来たんでしょう? 男の子? 女の子?」
彩矢ちゃんが意外なほどすんなりと納得してくれたので、少し拍子抜けした。
「あ、いや、俺たちにはまだ子供はいないんだ」
「そうなの。有紀は子供が大好きなのに。有紀、すごくいいママになりそう。優しいパパとママだから、生まれてくる赤ちゃんは幸せね」
「…………」
彩矢ちゃんは俺たちが上手くいってないなんて、思いもしないんだろうな。
「あ、私たち秋にアメリカに行くことになったの。だからもう会えないけど、佐野さん元気でね」
「えっ、アメリカへ!」
「潤一が研修に行きたいって。昨日、急に言われて」
「…………」
悠李がジャングルジムから降りてきた。
「ねぇ、おじちゃん、かたぐるまして」
俺を見つめてそう頼む悠李に切なさが込みあげる。
アメリカへ。
悠李にもう会えなくなる…………。
自分の方からもう会いに来られないなどと言っておきながらショックを受ける。
やっぱりダメだ。
アメリカへ行ってしまうまでは会っていたい。大きくなってしまった悠李には、もう会うことなど出来なくなる。
目に涙がにじんで悠李を肩車しながら走った。
「わ~ はや~い! ママ、みて、みて! 悠李ひこうきだよ!」
飛行機の翼のように両手を広げている悠李を、彩矢ちゃんが涙ぐんで見つめていた。
なぜ、なぜ、俺たちはこんなに悲しい運命なのだろう。
しばらく遊んだ後、悠李と別れ、車の中で昼に買ったコンビニ弁当を食べる。
” 有紀は子供が大好きなのに ”
俺たちに子供がまだいないことが、彩矢ちゃんには意外だったのだろうか。
子供を積極的に作れなかったのは、悠李に対する負い目があったからだと思う。
何もしてあげられない悠李が不憫で、有紀との子供を可愛がることに罪悪感があった。
有紀には関係のないことなのに、そんな自分勝手な感情に有紀を巻き込んでいた。
俺と有紀との子供を作ろう。
有紀だって子供ができたら気持ちも変わるだろう。
子供をつなぎとめるための道具にしたくないけれど。
十時過ぎに帰宅すると、昨日と同じようにラップのかけられたご飯とおかずがテーブルに置かれていた。
寝室のドアを開けると有紀は寝ているのか電気は消されていた。
ベッドへ腰をおろし、有紀の顔を覗き込む。
「有紀? 起きてるんだろう? 有紀、俺たちちゃんと話し合おう。 もう一度はじめからやり直そう。……頼むよ有紀。俺も色々考えて反省したんだ。まだ直して欲しいことがあったら、言ってくれよ」
「…………」
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