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24時間監視システムの中で
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ここへ入院して、早くも半年が過ぎた。
一週間で保護室からこの閉鎖病棟の個室へ移されたけれど……。
その後も、発作的に自傷行為を繰り返してしまったために、当分開放病棟へ行くことはできないだろう。
他の科であれば、病状が落ち着けばすぐに退院させられるのに、精神科はそうではない。退院することがとても難しい科なのだ。日本に限ってのことのようだが、政府の方針によるところが大きいらしい。
時間がくればオムツを替えられ、食事が与えられても、ここで幸せな気持ちを感じることはありえない。
気狂いは動物以下の扱いなのだ。
保護室に入ったばかりの患者は大抵、抑制帯でベッドにくくりつけられる。そして、身動きのできない状態のままで、落ち着いついたと判断されるまでその拘束は続く。
三人も殺めた人間は、十分気狂いと言えるかも知れない。
午後、夫の貴之が面会に来た。
再婚するから離婚届けに記名してもらいたいとのことだ。
ここにはずっと置いてもらえるようにしてあるから、何の心配もいらないと言った。
ここにいれば日菜にも健太にも面倒をかけることもなく、家族にとっては一番安心なのだった。
日菜はこの春から美容学校へ入学し、健太も北大を目指して、頑張っているとのことだ。
精神病院に入院している母など、離婚した方があの子達の将来にもいいに決まっている。
左手にぺンを持ち記名した。
離婚届を手にした貴之が部屋を出て行く。
もう二度と面会に来ることはないであろう夫の、後ろ姿を見つめ、涙がとまらない。
今日、一週間ぶりにお風呂に入れられた。
熱いもぬるいもない、流れ作業的にザバザバと洗い流される。
髪にドライヤーを当てられた。
半年前、綺麗な栗色に染められた髪は再び真っ白になっていた。
閉鎖病棟の個室にもどされ、ベッドに寝かされる。
一日の大半を幸福だった過去の記憶と空想で楽しむ。考え方によっては贅沢な時間なのだ。
毎日あくせくと働いている人から見れば、羨ましくさえ思われるかも知れない。
もう左手を縛り付けられることはなくなった。
ここに来て、徐々に感情というものを持たずに生きることの術《すべ》を学んだ。
まだ、その境地に達していない患者の叫び声が聞こえる。
ガーン、ガーン、ガガーン!!
施錠された扉を激しく叩く音。
「誰か~、お願い、ここから出してぇ!!」
理不尽な仕打ちを訴える切実な絶叫は、誰の心にも響かない。
ここでは悲しみも苦しみも喜びも、いっさいの感情を捨て去る努力が必要とされる。
ただ、こうして生かされ、生きて行く。
毎日24時間、監視カメラで監視されたこの部屋で、ただ生きていくだけ。
ーENDー
稚拙を最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
なごみ
一週間で保護室からこの閉鎖病棟の個室へ移されたけれど……。
その後も、発作的に自傷行為を繰り返してしまったために、当分開放病棟へ行くことはできないだろう。
他の科であれば、病状が落ち着けばすぐに退院させられるのに、精神科はそうではない。退院することがとても難しい科なのだ。日本に限ってのことのようだが、政府の方針によるところが大きいらしい。
時間がくればオムツを替えられ、食事が与えられても、ここで幸せな気持ちを感じることはありえない。
気狂いは動物以下の扱いなのだ。
保護室に入ったばかりの患者は大抵、抑制帯でベッドにくくりつけられる。そして、身動きのできない状態のままで、落ち着いついたと判断されるまでその拘束は続く。
三人も殺めた人間は、十分気狂いと言えるかも知れない。
午後、夫の貴之が面会に来た。
再婚するから離婚届けに記名してもらいたいとのことだ。
ここにはずっと置いてもらえるようにしてあるから、何の心配もいらないと言った。
ここにいれば日菜にも健太にも面倒をかけることもなく、家族にとっては一番安心なのだった。
日菜はこの春から美容学校へ入学し、健太も北大を目指して、頑張っているとのことだ。
精神病院に入院している母など、離婚した方があの子達の将来にもいいに決まっている。
左手にぺンを持ち記名した。
離婚届を手にした貴之が部屋を出て行く。
もう二度と面会に来ることはないであろう夫の、後ろ姿を見つめ、涙がとまらない。
今日、一週間ぶりにお風呂に入れられた。
熱いもぬるいもない、流れ作業的にザバザバと洗い流される。
髪にドライヤーを当てられた。
半年前、綺麗な栗色に染められた髪は再び真っ白になっていた。
閉鎖病棟の個室にもどされ、ベッドに寝かされる。
一日の大半を幸福だった過去の記憶と空想で楽しむ。考え方によっては贅沢な時間なのだ。
毎日あくせくと働いている人から見れば、羨ましくさえ思われるかも知れない。
もう左手を縛り付けられることはなくなった。
ここに来て、徐々に感情というものを持たずに生きることの術《すべ》を学んだ。
まだ、その境地に達していない患者の叫び声が聞こえる。
ガーン、ガーン、ガガーン!!
施錠された扉を激しく叩く音。
「誰か~、お願い、ここから出してぇ!!」
理不尽な仕打ちを訴える切実な絶叫は、誰の心にも響かない。
ここでは悲しみも苦しみも喜びも、いっさいの感情を捨て去る努力が必要とされる。
ただ、こうして生かされ、生きて行く。
毎日24時間、監視カメラで監視されたこの部屋で、ただ生きていくだけ。
ーENDー
稚拙を最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
なごみ
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