六華 snow crystal 6

なごみ

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美穂先生だけを見つめて

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美穂先生らしく、スタイリッシュではあるけれど、女の部屋の割には殺風景な感じがした。



あまり物を増やしたくないタイプなのだろう。




「二時間も待ってたなんてね、寒かったでしょう」



二人掛けのソファに座って落ち着きなく、チラチラと部屋を見まわしている俺に、美穂先生はココアを入れて持って来た。



「そうだわ、あなた、夕ご飯もまだよね?」



「あ、いや、別に腹は減ってないんで気にしないで」



「そんなわけないでしょ。柄にもなく遠慮してるの?  ふふふっ、昨日のおでんが残ってるのよ。おでんは好き? 冷凍のでよかったら肉まんもあるわよ」



「は、はぁ、、おでんは好きです。なんでも食います」



先生は鍋のおでんを火にかけてから、レンジに冷凍の肉まんを入れた。



「あなた、お家の人に連絡はしてあるのよね?」



思い出したように振り向いて、美穂先生は聞いた。



「ウチの親は帰りが遅いくらいじゃ心配なんかしないです。警察沙汰にさえならなきゃ、なんでもOKです」



「それは信頼されてるからなの?  それとも放任主義? 」



「どちらかと言えば、放任かな?  無関心なんですよ。自分のことで手いっぱいで、俺のことなんかどうでもいい」



なにかと口うるさく干渉してくるお袋に、こんな嘘がバレたらタダでは済まされないな。



バレたときを想像して少し背筋が寒くなった。



「あなたのお母様はそんな人ではないと思うわよ。とにかく帰りが遅いと心配するわ。ちゃんと連絡しておいて」



「はい、じゃあ、メールしておきます」



わざわざメールなんかしたら、お袋は逆に驚くかもしれない。



夜の十時もすぎるとさっさと寝ていることさえある。



 怒るとかなり恐ろしい母親ではあるけれど、俺の悪ガキぶりには散々苦労しているので、帰宅が遅いくらいのことでは、それほど叱られることもない。



「さぁ、食べて。熱々だから舌をやけどしないようにね」



お皿に盛り付けた熱々のおでんに、たっぷりからしを添えてくれた。



昨日作ったというおでんは、だしがしっかりと染みていて美味かった。



「それで?  一体なにがあったの?」



食事を終えたところで美穂先生が本題に入った。



「………なんて言えばいいのかな。俺にはどこにも居場所がないんです」



「居場所がないって、、クラスの子たちとは仲がいいわよね?  いつもふざけあって遊んでいるでしょ?」



「仲良く見えるのはうわべだけです。心を割って話せる奴なんかいません。部活にも」



シリアスな俺を演じるのは中々難しい。



「そう……。おうちにも何か問題があるの?  お母様とは面談のときや保護者会でも何度かお話ししたけど、明るくてとっても元気なお母様よね?」



「外づらメチャクチャいいんですよ。家とは全く違います。ひどくヒステリーで。だから親父もずっと家には帰ってないです。多分、愛人のところにでもいるんでしょう。なので、お袋の機嫌が悪いのも仕方がないですけどね」



「そ、そうなの?  でも、お母様はちゃんとご飯を作ってくれたり、おうちのことをしてくれてるわけでしょう? とても教育熱心だし、あなたの進学のことだって、真剣に考えていたわよね?」



「そうでもないです。パートの仕事を辞めてからは、昼間っから酒を飲んで、家の中はメチャクチャです。帰ると怒鳴り散らして暴れるし、俺もう高校やめて一人暮らしがしたいんです」



「えーっ!  じゃあ、高校を中退して働くっていうの?」



「……はい」



「それはあまりにも無謀よ。辛いのはわかるけど、もったいないわ。あなたの成績なら、国立大だって、難関私立だって夢じゃないのよ。私からお父様に相談してみましょうか?」



「やめてくれよ!  そんなことがバレたら俺は本当に家に居られなくなる。親父にもお袋にも絶対に言わないでくれ」



「わ、わかったわ。でも、退学はもう少し考えてからにしましょう。それと、前のようなイジメは受けてない?」



困り果てた美穂先生を見て、ちょっと気が咎めた。



だけど、今後の展開を想像して、その数倍も夢が膨らんだ。



にやけてしまいそうな気持ちを堪えて、作り話を続けた。



「あからさまなイジメはあれ以来まだ受けてません。小突かれたり、パシリにされたりはしょっちゅうですけどね」



「そんなことを……。あなたがイジメを受けてるなんて、想像も出来ないんだけど」



そりゃそうだ。 



俺がいつまでもいじめられてるわけないだろ。



「一対一だったら負けません。だけど、相手は大勢だから。どうしたって無理なんだ」



「生活指導の先生に相談してみてはダメかしら?  なにかいい方法があると思うの」



生活指導の加藤なんかに相談されたら、たまったものではない。



そういうところが美穂先生はまだ新米教師だなぁと思う。



「前にも言ったけど、そんなことがバレたら、サッカーの試合に出られなくなるかも知れない。俺だけの問題じゃ無くなるんだ。頼むから黙っていてくれないか。そうじゃなければもう、美穂先生にはなんの相談も出来ないな」



「わかったわ。言わない。だから勝手に学校を辞めたりはしないで。辛いのはわかるけど、もう少しだけ我慢してくれないかしら。私もなにかいい方法がないか考えてみるわ。だから、、」



「聞いてもらえただけで元気になれたよ。こんなことは誰にも言えなくて、、俺、結構追いつめられていたから」



ナイーブな俺を演じるのも中々楽しい。



「相談ならいくらでも聞いてあげる。だから、自暴自棄にならないで。大学に行ったら、もっと自由になれるわ。バイトだって出来るようになるし」



「そうだな、卒業まであと一年と数ヶ月だからな。美穂先生に相談してよかったよ。少し希望がわいてきた」



ーーマジで希望が湧いてきた!



「そうよ、あなたはまだ若いんだから。もっと自分の人生を大切にしなきゃ。辛いときはいつでも聞いてあげるから」



掛け時計を見ると、十時を過ぎていた。



「ありがとう。じゃあ、今日はもう帰るよ。



長居は印象が良くないと思い、立ちあがった。




「そうね、なんだかんだ言っても、お母様は帰りが遅いと心配しているはずよ」



「それは違うな。多分もう寝てると思う。寝ていてくれないと困るんだ、暴れるから。夏場は公園なんかで時間を潰してから帰ってたんだ。冬は寒くてそれが出来ない。友達の家を渡り歩いてばかりいるのも肩身がせまいからな」



「……… 」



玄関に向かい靴を履く。



「じゃあ、また明日」



にやけてしまいそうな口元をひんまげて、寂しげにうつむいた。



「気をつけて帰ってね。何かあったら、遠慮しないで相談に来てちょうだい」



「うん、ありがとう」



同情と憐れみの目で俺を見送った美穂先生に軽く頭を下げ、階段を駆け下りた。



外は皮膚がピリピリするほど寒かったが、澄み切った星空を見上げ、高揚した気分を味わう。



ヨッシャー!!



思わずカッツポーズをとり、地下鉄駅にダッシュした。






**

話し込んでいるうちにフルコースの食事は終わり、デザートを食べていた。



「すごい嘘つき。高校生の頃から、そんなに口がうまかったんですね」



美穂ちゃんはスプーンを持つ手を止めて、呆れたように俺を睨んだ。



「必死だったんだよ。そのくらい夢中だったんだ、美穂先生に」



「初恋のひとはやっぱり忘れられないものですか?」


「どうかな?  ずっと忘れていたよ。初恋と言ってもそれまで恋をしなかったわけじゃない。小学生のときも中学のときにも好きな子はいた。だけどあんなに恋い焦がれて夢中になったのは初めてだったからな。だから、そういう意味での初恋だよ。美穂ちゃんの初恋はいつだい?」



「……わ、、わたしは奥手ですから、先生のような激しい恋愛などしたことありません。いつも遠くからそっと眺めてるような片思いで、、先生が羨ましいです」



「羨ましいことなんかないよ。最悪だったんだ。片思いでいたほうがずっと良かった」



パッションムースのドーム仕立てなんとかの、特製ジュレ添えとやらを食べながらさらに話を続けた。








『その後、おうちの方はどうなのでしょう?  誰かから暴力やイジメなどは受けてませんか?  相談したい事があったら、遠慮しないで言ってね』


美穂先生は俺のことを心配して、度々こんなメールをくれた。


早く美穂先生といい仲になりたかった俺は、更にお袋をおとしめる、とんでもない嘘をついた。


「最近、お袋にも愛人ができました。十歳も若い男で、いかにも稼ぎのなさそうなヒモみたいな奴です。俺がいると邪魔なのはわかるけど、あからさまに嫌がらせされて、殺してやりたい気分にかられます。やっぱり、高校は中退して一人暮らしをしたほうがよさそうです」


こんな嘘がお袋にバレたら、半殺しの目に合う。般若の形相をしたお袋を思い浮かべたら背筋が凍りついた。



少しも疑っていないのか、美穂先生からはこんな優しいメールが届いた。


『なんて言ってあげたらいいのかな。簡単な言葉で励ましたりするのは、返ってあなたを傷つけてしまうような気がします。とても辛いだろうけれど、それでも私は高校を中退することには反対です。明日の放課後、生徒指導室で話し合ってみませんか?』


「校内で美穂先生と特別な時間を持つことは、俺にとって危険なことです。以前の暴力事件も、俺が女子バレー部で楽しんでいたのを妬んだ奴らの仕業です。美穂先生は俺たち男子の憧れだから」


『申し訳ないけれど、学校以外の場所で個人的に会うのはちょっと難しいの。外で会うなら、もう一人学年主任の石田先生を頼んではダメかしら? 経験がある分、わたし以上に良い解決策を見つけてくださる気がします』
 

はぁ? あの口やかましいオールドミスの石田を?  冗談だろ。




「誰に相談したところで、いい解決策なんかあるわけない。そんな事は初めから期待もしてないよ。残りのあと一年と数ヶ月をどうやってやり過ごすかが問題です。他の教師にこの話をバラすって言うなら、俺はすぐにも退学します」



『わたしの考えが甘かったわね、ごめんなさい。あなたには親身になってくれる祖父母はいないの?』


「いますよ。でも、母方の祖父母は釧路だし、父方の祖父は他界していて、祖母は施設に入ってます。もういいです。先生に迷惑はかけません。俺のことはもう、放っておいてください」


投げやりな返事をしたら、万策尽きたのか、美穂先生からの返信は途絶えた。



   
今まで休み時間はクラスの男どもと一緒に、美穂先生をとり囲んでいたものだった。


今はそんな子供じみた戯れに、喜びは見いだせなくなっていた。


俺はもう、取り巻きの一人という境遇に満足できない。


美穂先生にとって、特別な存在になりたいんだ。




自分の席にひとり座り、寂しげにぼんやりと窓の外を見ていた。


もちろん、美穂先生の視線を意識しながら。



「どうしたの?  潤一、元気ないじゃない」


せっかく塞ぎ込んでいる俺を演じているというのに、クラスメイトの中川由梨が話しかけてきた。



「来るな、ブス、あっちへ行ってろ!」



俺は本物のブスに、ブスとは言わない。


そのくらいの優しさは持っている。


由梨は中々の美人で、クラスの男子からも人気があった。


「あら、ご機嫌ななめなのね。あ、わかった。あなた美穂先生に嫌われたんでしょう? だって、しつこすぎだもん。先生がうんざりするの当たり前よ」


「うるせぇ、ほっとけと言ってるだろ」


ふん、こんな女。美穂先生とは比べものにもならない。



「ねぇ、クリスマスはどうするの?」


いつのまにか十二月の半ばもすぎ、クリスマスまであと一週間ほどだった。


「どうするって、どうもしないよ。なにがクリスマスだ、くっだらねぇ。キリスト教徒でもないのにバカ丸出しだな」


「よく言うわね。子供の頃は寝ないでサンタさんを待ってたんじゃないの?  ねぇ、今日は一緒に帰らない? 祐也と沙羅たちも誘ってなんか食べて帰ろうよ」


由梨は目にかかったサラサラのロングヘアーを指で払い、上目遣いに俺を見つめた。


「俺はそんなヒマ人じゃねぇよ」


由梨を無視して席を立ち、教室を出た。



美人なことを鼻にかけている由梨は、自意識過剰で可愛げがない。


好きでもない、どんな男にでも媚びを売ってはその気にさせる悪趣味な女だ。


大学生の彼氏がいるというのに、親友の彼氏にまで色目を使っているらしい。


顔だけで、どんな男でも手玉に取れると思ったら大間違いだ。





あてもなく廊下を歩いていたら、


「松田くん! 」


追いかけてきた美穂先生が俺を呼んだ。


「あなたと話したいと思ってたの。なんの力にもなってあげられなくて、ごめんなさいね。食事なんかはちゃんと摂れてるの?」


「まぁ、適当に……」


「あなたが元気ないと、本当に心配だわ。なにか力になれることはないかしら?」


「別に、何もないです」


なんと言っていいのか分からず、目をそらした。


心配してもらうだけで何も進展しないのでは、嘘をついた意味がない。
 

ここから先が難しい。



「一度あなたのお母様に会って、話がしたいんだけど無理かしら?」


「無理に決まってるだろう!!  絶対に、絶対に来るなよっ、そんなことしたら俺は破滅だからな!」


この時ばかりは演技ではなく、本気で言った。


「なぜ?  今のままで本当に大丈夫なの?  あなたが壊れてしまいそうで怖いのよ。お父様でもいいのよ。今度の日曜日にでも時間を作ってもらえないかしら?」


「どっちも無理だよ。いいから放っておいてくれ!」


望むようなことは少しも言わず、ぞっとするような提案ばかり出す美穂先生が恨めしかった。


俺の気持ちを知っているくせに、わざと焦らしているのか?






下校途中、地下鉄通路を歩いていたら、若い男とすれ違い、肩がぶつかった。


「痛てぇな、コラ、謝れ」


全身を黒ずくめでキメているカラスみたいな男が、凄みを効かせて詰め寄った。


混み合ってもいない通路なのに、絶対にわざとだろ。


「ぶつかって来たのはお前だろう。ちゃんと前見て歩け、カラス」


いい年をしてくだらない男だ。


「テメェ、今、なんて言った ⁉︎」


「ガァガァうるせぇんだよ、カラス野郎。俺は暇じゃねんだ、どけっ!!」


立ち塞がっている黒ずくめをすり抜けようとしたら、いきなりガツンと左頬にパンチをくらった。



身構える余裕もないままに、右頬とわき腹を殴られ、その場にうずくまった。



キャァー!!



駅構内に女性の叫び声と、ざわめきが聞こえた。



迂闊だった。


パンチの強さと速さからして、ボクシングジムにでも通っている奴だな。


わき腹へのボディブローがかなり効いて、すぐに立ち上がることが出来なかった。



「もういいよ、やり過ぎだって」


どこかで聞いたことのある女の声がした。


かすんだ目を開けてみると、男の隣に由梨が立っていた。



ドブに落ちた犬でも見るかのように、由梨は蔑んだ目を俺に向けていた。



「フン、生意気な奴だ」


吐き捨てるような男の声が聞こえた。


「ヤバいからもう行こうよ」


ガヤガヤと集まってきた野次馬に怯えるように、由梨は男の腕を引っ張って足早に去って行った。


あいつ、昼休みのこと恨んでたのか?


やっぱりそうだな。


思っていた通り、所詮、あんな女だ。


「大丈夫ですか?  救急車呼びましょうか?」


OL風の女性が心配して声をかけてくれた。


「大丈夫なので、気にしないで」 





駅のトイレに行って鏡を見ると、左頬が内出血して腫れあがっていた。


わき腹のダメージはまだ残っていて、吐き気がした。


ヨロヨロした足取りで改札を抜け、家とは反対方向の宮の沢方面の電車に乗った。


こんな時こそ、美穂先生を頼るべきだろう。


転んでもタダでは起きないのが俺の主義だ。


これはいい口実に使える。


アパートに着いたけれど、先生はまだ帰宅していなかった。


また、前のように寒い廊下でうずくまって待っていたら、今日は一時間ほどで帰ってきた。




「松田くん ‼︎  どうしたの ⁉︎  また、やられたのね?」


美穂先生は目を丸くして俺に駆け寄ってきた。


「お袋の愛人とちょっと揉めただけだよ。 悪いけど今晩だけ、アパートに泊めてくれないかな?」


ダメ元で聞いてみた。


「そんなこと出来るわけないでしょう。これは児童虐待よ。警察と児童相談所に通報しなければいけないわ」


「マ、マジか、、やっぱり俺、帰るわ。今言ったこと全部ウソだから」


とんでもない嘘が全部バレてしまうと思い、慌てて立ちあがった。


「ダメよ、虐待されていると知って、家に帰すわけにはいかないわ」


美穂先生は、俺の腕をつかんで引き止めた。



「だから、嘘だと言っただろう。駅で変な男に絡まれたんだよ。警察に通報なんかしたら、絶対に許さないからな!」


俺の腕をつかんでいた美穂先生の手を振り払って、階段を降りた。


「松田くん、待ちなさい! 」


追いかけてきた美穂先生が、一階まで降りた俺の腕をつかんだ。


「いいって!  先生なんかを頼った俺が間違ってたんだよ。もう、放っておいてくれ ‼︎ 」


掴まれた手を振り払って逃げようとしたけれど、美穂先生の力は女とは思えないほど強かった。


「待ちなさいと言ってるでしょう!」


「痛てぇよ、手を離せ!」


「お願い。ちゃんと話しを聞かせて。……泊まってもいいから」



え?  



嘘だろ!!



先生の言葉はすぐには信じがたかった。



当時、恋に夢中になっていた俺には、美穂先生の立場を慮るような余裕がなかった。


もし、あんなことがバレでもしたら、先生は即クビで、教職の資格さえも失ってしまったかも知れない。


そんな危険まで犯して、美穂先生は俺を守ろうとしてくれたのだ。


ーーそれなのに、



最後の最後にあの仕打ちはないだろう。


































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