六華 snow crystal 2

なごみ

文字の大きさ
上 下
12 / 59

不安な日々

しおりを挟む

1月3日  晴れ


彩矢ちゃんを紹介するために室蘭の実家へ行った。


好天に恵まれたけれど、なんとなく浮き足立っている彩矢ちゃんが少し心配になった。


うまくフォローしてあげていたつもりだったけれど、俺の余計な一言で、彩矢ちゃんはかなり居心地の悪い思いをしていたようだ。


門限10時がそんなに落ち込ませる事になるなんて、普通は誰だって思わないだろう。


清純じゃないとか、そんなことを自分で言わないでくれ。そんなに気にされると、俺まで気になって尚さら不快な気分にさせられる。


俺は彩矢ちゃんの一途で純粋なところが好きなんだから。


だから今はもう、俺だけを見ていて欲しい。






1月10日  曇りのち雪


彩矢ちゃんのご両親にも挨拶に行きたいと、この間から言っているのに、「あ、うん、そうだね」とか言っておきながら、いつ来てという話しはしてくれない。


しつこいと思われたくはないけれど、6月に挙式することを考えると、挨拶は早めに済ませておきたかった。


今日、また彩矢ちゃんに聞いてみた。


「ご両親への挨拶はいつがいいかな? 」


「そうだった、忘れてた。いつがいいかなぁ。聞いておくね」


 視線を泳がせて、うろたえている彩矢ちゃんに、嘘の気配を感じた。


でも、それを問いただす勇気がない。


「あと、婚約指輪を買いに行こうよ。彩矢ちゃん自分で選びたいだろ? それとも俺が選んで渡した方がいいのかな?」


困ったようにうつむく彩矢ちゃんを見て悲しくなる。


「本当に結婚する気があるのかい?」


思わずイライラしてそう言ってしまった。


でも、それ以上言うと墓穴を掘る危険性を感じて、もうなにも言えない。






1月17日 晴れ


もう一週間も彩矢ちゃんに会っていない。


LINEの内容では、体調も戻って来たし、そろそろ仕事がしたくなったとのことだ。


面接なども受けているらしい。


別に仕事することに反対はしないけれど、なにか口実めいた行動に感じられてスッキリとしないものがある。


俺の考えすぎなのか?


でも、明日は会える。合鍵を渡してあるから、『アパートで待っているね!』の返事があった。


 一週間も会ってないと、禁断症状が出そうなくらい落ち着かない気持ちになる。


早く会いたい。


彩矢ちゃんを壊れそうなくらい強く抱きしめたい。







しおりを挟む

処理中です...