チートな親子と変な仲間たち

ais

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刀を作ってみた

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ワイバーンの討伐はギルドを通していなかったので依頼料は貰う事は出来ないが林業者の業務復旧に役立つと思ったので一応の報告をギルドにする。
ギルドの受け付けで西の森のワイバーンを[偶然]倒した事を伝えるとまたギルドマスターが出てくる


「ヒマなんですか?」
「馬鹿野郎… イッチャンあのな、この世界の国々で大賢者マリー様が制定された冒険者ギルドの法律を破られたら話にならんのよ。イッチャンが定めたランクにいるならそのランク内で仕事をしてもらわなきゃならんのだ」

ーーー大賢者マリー?母さんと同じ名前だけどまさかな…
とイチは合っている答えを自分の思い込みで外してしまう。

「分かるな?DランクならDの仕事だ。罰則により今から7日はクエスト受注はさせない。いいな?」と言われてしまった。

ギルドを通していない勝てた戦いだとしても一応のペナルティーと言う事か。

「あれはワイバーンを倒した[偶然]が嘘だとバレてるな」
「人を見る目がある… という事かしらね?」
イチとニーは肩をすくめギルドを見渡し何をしようかと考える。

ワイバーンは四散したが残った死肉や翼、牙等はしばらくクエストを受け働かなくても大丈夫だろう金額で買取りされていて金に困ってはいない。

「なら装備の作成かな?冒険者になったのにナイフしかないもんな…」

ギルド受け付けに鍛冶や研磨が出来る場所はないかとたずねる。
剣や鎧が現役の世界では鍛冶場は冒険者には必要な施設の為ギルド裏にその場所はあった。
部屋の一室を提供され工具や火炉は使い放題。
そんな夢のような場所をガッツリ7日間は借りる事にした。


「ニー砂鉄に近い鉱物貰えないか?」
イチはせっかく鍛冶場を借りたのだから刀を作ろうと考えた。
藁や粘土も用意されていたのであとは本体の鉄が必要で刀を作るなら砂鉄が一番ありがたい。

パチンとニーが手を鳴らすと空間から青い鉄粉がパサリと机に大量に落ちる。
「青いな… これは?」
指でつまみその鉄粉を擦る。
「この鉄の粉は[青き空の先の鉄]。ここより遠く離れた彼方にある星に溜まる鉄の湖の底に沈殿している聖なる鉄」
ーーー青き空の先の鉄… 使えるんか?これ?砂鉄くれよ砂鉄をさー!

とは言わない。見た事がない鉄で刀を作るとか面白すぎる。失敗しても悔いはない。

玉鋼の紛い物?遥かな星にあるのだから星鋼かな?を作る。これから低温の火でじっくりと青き空の先の鉄を溶かし炭素を加え還元しなければならない。
鉱物は宇宙中同じであると思うのだが大丈夫かな?と思いながら用意する。

3日間にわたり火を魔法で燃やし、製鉄炉は土魔法・ふいごは風魔法で対応する
魔法はスイッチのon/offでは無く感性で操れるので製鉄に向いているだろう。地球の鉄鋼屋が聞いたら羨ましくて泣いてしまうかもしれない。
ステータス強化と状態異常回復を魔法で体に纏う。
子供なので眠気に勝つ事と魔法枯渇を避ける事が必要な為に自分の呪いを解除してステータスを完全にする。
そして… じっくりと… [青き空の先の鉄]を溶かしていく。

ちなみに鑑定をしても青き空の先の鉄は《?》しか表示されなかった。この鉄粉がある惑星はニーによると大気は鉄と混じり常に静電気が起こり雷が地面をえぐり黒く焦げた大地と点在する鉄の湖とをかき混ぜる。
そこから数年に一度ガスが巻き上がり大気で大爆発する。その後のクレーターに鉄の水が溜まり比重が重い物は湖の下へ数万年かけて沈殿していく。
その沈殿した鉄は意識を持ち出し、それから一年で死滅する。
その脱け殻のモノが青き空の先の鉄だと言う。

何それ!?水の鉄って何?宇宙怖い!
と雑談しながらも星鋼を溶かし作っていく。

3日目の朝に星鋼の溶ける音が〈カキンカキン〉というものに変化する。
取り出して見たらサファイアのように真っ青な美しい鋼が現れた。
「これは… 美しいけど強度は大丈夫なのか?」
「大丈夫。私の本体の星の記憶ではこの惑星のどの金属より硬いはず。」

打てるのか?鍛冶に向かないんじゃないのか?
しかし鋼に錬成できたんだから手数と時間をかけたらいけるか?
と鍛冶場に据え付けられた長椅子に座り頬杖をしながらグルグル考えている間に寝てしまう。
子供の体に魔法をかけて強化してもここが限界だったようだ。



*****
翌朝、鍛冶場の長椅子で目が覚めた。
横には半裸のニーが添い寝している。胸元が見えてる?

「うわっ!何してんの!?」

焦って飛び起きるとニーは目を擦りながら目覚める。
肩のボレロは外れワンピースも大半がめくれて体が露わになっている。

そういえば呪いを解除していたのを思い出すが今日は刀を打つのでそのままにする。
「どうしたの?」
キョトンとした顔でニーは見てくる。
「いやいやいや半裸で添い寝とか… ダメだよ!」

何かを思考を巡らせるそぶりをしてニーはイチに答える。
「寝ているイチを見ていたら頭が何をすれば良いか分からなくなってしまったの。人間はこういう時どうするの?」
顔を赤らめ近づくのをイチが抑える。

いやいやいやいやと言いながらイチは逃げた。
宇宙人に好かれてもどうすりゃいいんだ?

やれやれと服を着直させ星鋼を手に取る。
ーーーしかし軽い… プラスチックのようだ

これはハズレかもしれないなとイチは焦る。武器はそれ自体の重さや遠心力で威力を増す。これだけ軽くては…
「とりあえず叩いてみるか… 」
ーーー無垢な状態なら使えないが造り込みの鉄の重さで何とかなれば良いが…


火魔法で炉に火を入れる。
星鋼を火に入れ色が紫になるまで熱する。
「火を入れた鉄の色まで違うのかよ」
フフッと笑いながら藁墨をつけながらハンマーで叩いてみる。

ーーー硬い… !!!
イチは地球で玉鋼で数打だけだがコンパクトナイフを打つのを体験した事がある。
それより硬いのだ。

ステータスで力は人では無いレベルまである筈なのだがなかなか星鋼を伸ばせない!
ハンマーが〈ガキン〉と折れる。

レンタル鍛冶場の一室に用意されていたハンマーは5本。これでは絶対に足りない。火を入れているのでイチはこの鍛冶場から離れられない。
ならばと土魔法で鍛造用小型ハンマープレス機をイメージして作る。
これは地球にいた時にアメリカのテレビ番組で刀剣を作成する時に使用していたのを覚えていた。
魔法である程度の硬度をプレス機に持たせる事も出来るので星鋼も打てるだろう。

残った5本のハンマーは刀鍛冶としては邪道な魔法を使うのだから、せめて仕上げに心を込める為に残しておきたい。

再び星鋼を叩き伸ばす。土魔法で裁断機を作り切って折り曲げるのも一苦労本当に硬い。
心金と分けるがもう他の鉄と混ぜるのも大変なので、出来上がるのを優先で進める。

15回打って切って折り曲げて造り、素延べする頃には夜になっていた。
打って打ってしていたので不純物は飛びサファイアのように美しい延べ棒が出来上がる。
月明かりに照らすと鉄とは信じられないほどの透明さと光の反射を見せる。

ふと後ろを見るとニーが関心している
「青き空の先の鉄を鍛錬すればこれ程な美しさになるなんて…」
イチは宇宙人に褒められるとは思っていなかったので嬉しくなり笑顔をニーに向けると、それに気づいたニーが顔を赤らめ目をそらす。

明日は仕上げだと夕食を食べに行く。
ちなみにニーはまだ食事をした事がない。イチの血と魔法を食べた為にまだ満腹状態だという。
スターバンパイアは燃費いいなぁ。

*****
翌朝
伸ばした星鋼に刀の形を作っていく。
刀をネットオークションでいくつか購入して眺めながら酒を飲んだりしていたので形は良く知る所である。
もちろんちゃんと文化庁に登録済みである。


刀剣の本も所蔵しており欲しかった馬上の戦いはあまりしないと思うので初期の反りが少ない虎徹の造りを目指す。

「彫刻と刃紋は無理だけど何とか形だけは、それっぽくしたいなっと」
残していたハンマーで叩いていく。
延べから火造りまで到達する頃にはハンマーがあと2本になっていた。

ーーー鑢(やすり)は普通の物では歯が立たないだろうな

「カーリースターでマチアの剣を研磨した経験が生きるな。」
青き空の先の鉄を風魔法で取り上げ空中に留めグラインダーのように回転させる。
美しく回る青い鉄粉を刀に当てると〈シューーン〉と澄んだ美しい研磨音が鳴り響く。

荒仕上げが終わり刀の形に整う。
「美しい」そういう言葉がイチとニーから溢れる。

炭と青き空の先の鉄を土魔法で乳鉢を作り練りこみ刀に塗る。
「イチ何でまた汚すの?」
「これはね強度の差をつけて折れにくくする為なんだ。多分刃紋はつかないだろうけど… つくといいな刃紋… 」

焼き入れするのだが、青き空の先の鉄は材質が異質で一番難しい焼き入れなのに鉄の温度と状態を測れない
ただ、色は分かりやすいので鑑定の魔法で火の温度を900℃にし焼く。

刀が高温で紫色が強くなった時に取り出し水に一気に入れ冷まし取り出す。

息を飲む程の美しいサファイアブルーの刀が水から現れる。
無骨な太い透明な刃は光を通し反射しキラキラと輝く。刃紋も透明なので分かりにくいがうっすらと入っている。
さらに研磨して刃を磨き、鍔(つば)は星鋼では加工が難しいので切り出した鉄材から柄(つか)は洋剣しかない世界なので剣の柄を茎(なかご)に挟み麻紐で巻き完成させる。

「これが… 刀なの?イチ?」
「いや… これはもう刀とは別物だわ」

日本に持って行けば子々孫々が遊んで暮らせる値段がつくだろうと汗をかく。

ーーー鑑定

[異星からの刀]
異なり星からきた刀。折れず曲がらず割れず形状を維持し、硬く柔らかく切れ味を保つ。
神聖があり魔法をまとわせる事が出来て、賢者の石の付与がある為に物質や質量がある物で切れない物はない。

「なんじゃこりゃーーー!」
ビビりすぎてイチは鍛冶場で雄叫びをあげ、ニーはクスクスと笑うのだった。
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