異世界転生 内気な青年に与えられた能力は死に戻り

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六章

53話 親睦

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 ラルトが元気よく挨拶をした。

 タイトが一歩前に出て「本当にありがとうございました!」と深く頭を下げる。
 ロアもタイトの横にちょこんと立ち、同じように頭を下げた。
 リュロもためらわずに頭を下げる。
 ラルトはそうだったと言わんばかりに頭を下げた。

 
 あの日――。
 タイトは田中との契約で魔王軍の兵士になるということが決まり、意を消して反撃した。
 代償魔法で死の瀬戸際を彷徨ったタイト。ハイオーガの攻撃で死にかけたラルト、リュロ、ロア、ギルを救った地の都の兵士たち……。
 その感謝を伝えるため、彼らはこの場で頭を下げたのだった。

「気を失ってた青年は君だったんだね」
 岡本がタイトに視線を向ける。

「まぁ、僕たちも救われたというか、ほとんどサッカイ君のおかげなんだけどね」
 岡本が頭に手を置き笑う、その目線は堺に向けられていた。

「あれ!サッカイ!」
 ラルトが犬のように無邪気に走ってくる。

「え、あっ、ひっ、ひさし、ご、ご無沙汰です」
 堺はどう接していいのかわからなかった。

「転生者と知り合いなのか!」
 タイトが感心したように声をあげる。

「うん!アルテの町で出会ったんだよ!」
 ラルトの目はまっすぐで、曇りがない。

 堺のラルトに対する記憶が混乱して、言葉が詰まっていると、

「二人とも困ってるでしょ」
 リュロがラルトの首元を掴み、堺からラルトを遠ざけた。

 堺は笑顔を作ったが、その手はわずかに震えていた。
 (そっか、死に戻りしたから、みんな覚えていないんだ……)
 
「皆んな座ってもらえるかな?ミッションの説明をするよ。」
 斎藤の声が響く。

 ラルトたちは席についた。

「今回のミッションは、『転』という大陸にいる転生者たちの確保、もしくは殺害だよ。できれば確保してほしいけど、無理なら殺してね。」

「殺しはよくないよ!まずは話し合って――」
 ラルトが席を立って斎藤に意見しようとした。
 その瞬間、斎藤がラルトの首を掴む。
 ラルトは声を出すことができず、口元からは泡が溢れていた。

 (ラルト!やばいやばい!!助けないと!でも!!でも……)
 堺は体を震わせ、拳を握ることしかできなかった。

 そんな中、リュロが戦おうと、席を立とうとしたが、動けない。
 空間に広がる斎藤の魔力。死が間近に迫るような恐怖が、全身を硬直させた。

「君はロアの元にいたいんだよね、口答えされると、面倒だから、大人しくしててほしいな。」

 ラルトの目から光が薄れ、手がだらりと下がった。

 斎藤はふっと手を離し、元の位置に戻って説明を続けた。

「『転』にはアルファという拠点があって、地下にあるよ。そこに転生者たちがいるわけだね。」

 (アルファ!?やっぱり、嫌な予感がしたんだ!ってことはあの人たちが標的!? 前田さん…僕はどうすれば……)
 堺の頭が重くなる。

「それと 気を付けてほしい人物が一人いるよ。」
 斎藤が写真をボードに貼る。

 黄色に逆立つ髪、勇ましい顔つき、鋭い瞳には稲妻の模様。

「彼はリアム・スミス、雷神だよ。彼に見つかった時点で全滅は免れないから、素早くミッションをこなしてね。」

 (あの人はっ、前田さんを詰めてた人だ……ら、雷神??)
 堺の心臓が跳ねる。

 雷神という言葉に、岡本たち、タイトたちは息をのみ、緊張した。

「説明は以上だよ。後日また招集するから、ロアと仲良くしててね。」
 斎藤が部屋から出ていく。圧力が消え、体に入った力が抜けていった。

「ラルト!ラルト!!」
 リュロがラルトの元に駆け寄る。
 タイトやロアもすぐに集まった。

「こ、殺しはよく、ないよ…」
 ラルトは掠れた声で思いを伝える。

 ラルトの意識が遠のく中、マリナが近づき、本を開く。金色の光が溢れ、ラルトに降り注いだ。

 するとラルトがバッと立ち上がり、「ダメだよ!殺しは!!」と叫んだ。
 
 タイトたちは安堵し、マリナに礼を言う。
 マリナは恥ずかしそうに岡本のそばに寄った。

「だからコウト人は嫌なんだよ」
 タイガがぼそっと呟く。

「何よ、クソガキ、文句あるの?」
 リュロの耳はよく、怒った表情でタイガに向かう。

「弱いのに正義感強いところが嫌いって言ってんだよ」
 タイガの目が緑色に光った。

 次の瞬間、リュロが犬のようにゴロンと転がり、舌を出してハアハアと呼吸する。
「お、おい!どうした!?や、やめてあげろよ」
 タイトがタイガに詰め寄るが、タイトも同じように犬のように転がった。

「何やってるの皆んな!」
 ラルトがシンプルに二人の真似をする。
 
 堺はどっちの味方をしていいのかわからず、ただアワアワとしていた。

「ちょっとタイガくん!そんなことしたらダメだよ!」
 岡本がすぐに止めに入る。

――――
 
「ごめんなさい」
 タイガはダランと体を倒して謝った。

 タイトが「大丈夫、大丈夫」と言う中、リュロは隅で顔を真っ赤にしていた。

 その後は岡本が場を収め、皆が自己紹介を済ませた。
 ラルトが無邪気に質問を浴びせ続けるので、タイトたちは粗相を避けるように先に招集部屋を出た。

 岡本たちは一息つき、解散したのだった。
 
 

 

 
 
 
 
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