異世界転生 内気な青年に与えられた能力は死に戻り

KOKE

文字の大きさ
61 / 77
六章

60話 大地

しおりを挟む
――空。

 紅の装甲を纏う女が、風を切って浮かんでいた。
早乙女。空に漂うその姿は、まるで燃え尽きる星のようだった。
「さ~て、戻ろうかな」
 あくびをしながら背筋を伸ばす。
 目の端に涙を含み、顔に力が入っていない。

 ドォン——。
 遠く、地の果てで空気が裂けた。
 爆発の残響が空を震わせ、早乙女の目がわずかに光を宿す。

 「使ったんだぁ……」
 唇が吊り上がる。狂気にも似た笑みが浮かんだ。

 ウィィィン……
 背中の装甲が紅く光を放ち、空が一瞬、茜に染まる。
 ジュン!
 レーザー銃のような音と共に超加速する。
 音すら残さない、まるで光そのもののようだ。

 ――和田、??。

 爆炎の跡。焼け焦げた大地には兵士たちの影が刻まれ、空は血のように赤い。
風が泣き、砂を巻き上げる。だがその中に、ふと――静寂が生まれた。

大地が、呼吸を止めたのだ。

重く、深く、地の底から何かが“起き上がる”。
その存在に、和田の頬がひきつる。

 彼が現れた。
 地属性を司る転生者――。
 
 金と黒の衣が風に揺れ、眼差しが空を射抜く。
 その瞳に映るのは憤怒でも悲嘆でもない。
 ただ――この世界を正しき形へと戻すという、揺るぎなき意志のみ。

「現れよったで! まぁ、流石にこれ以上は許さんわな」
 和田は無邪気に笑う。

「これ以上、その兵器を使用することは 許されない」
 地の神は目線を下に向ける。
 焼けこげた兵士たちに目を向け、和田を見た。

「俺なぁ、自分より強い奴にしか従わない主義なんよ。
 アンタがそれを証明してくれるんやったら、考えたってもええわ」
 和田は何かあればテレポートで逃げれると考え、舐めた態度をとった。

 だが、地の神は何も答えない。
 そのまま、掌を地に向けた。

 ゴゴゴゴゴ……!!

 遥か遠くの山脈が崩れる。
 大地がうねり、渦を巻く。
 山が砕け、谷が反転し、空を突き抜けるように黄金の樹が伸び上がった。

 その葉は金に輝き、枝は雲を突き抜け、光が降り注ぐ。
 それは、まるで神が涙を流して創った世界樹。
 
 焼け焦げた兵士たちの肌が、金の光に包まれる。
 剥がれ落ちる焦げ、再生する肉体。
 彼らは息を吹き返し、涙を流しながら地を掴んだ。

「……まじか。これは敵わんわ」
 和田は笑いながら、手にしていた魔道具をぽとりと落とした。

 黄金樹の光がゆっくりと消え、葉が緑へと変わる。
 その瞬間、地の神の声が和田の脳に響いた。

「二度目はない。」

「……はっ!?」
 我に返ると、地の神の姿はもう消えていた。
 残されたのは、鳥のさえずりと、柔らかな風だけ。

 戦場を包む光は、もはや“戦”の色ではなかった。
 草が芽吹き、空気が澄み渡る。まるで世界が浄化されていくようだ。

 ――

「さすがに敵わないねぇ~」
 早乙女が戦場の上空から兵士を見渡す。
 
「早乙女はん、これからどうします?」
 和田が声をかける。
 彼の顔には、まだ呆然とした笑みが残っていた。
 
「そうだねぇ~、アルファにはもどらなくていいかな~、前田が死んで皆んなうるさいし、ブラブラ旅でもしようかねぇ」
 早乙女は両手を後ろに組み、黄金樹を見上げる。
 紅の装甲に夕日が反射し、まるで赤と金が混ざり合うように光る。

「旅……また魔族狩りでも始めるんか?」

「さぁ、どうだろうねぇ」
 早乙女は笑った。
 風が髪を揺らし、装甲の羽がかすかに鳴る。
 その目の奥には、紅い光が宿っていた。
 
 

 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

構造理解で始めるゼロからの文明開拓

TEKTO
ファンタジー
ブラック企業勤めのサラリーマン・シュウが転生したのは、人間も街も存在しない「完全未開の大陸」だった。 ​適当な神から与えられたのは、戦闘力ゼロ、魔法適性ゼロのゴミスキル《構造理解》。 だが、物の仕組みを「作れるレベル」で把握できるその力は、現代知識を持つ俺にとっては、最強の「文明構築ツール」だった――! ​――これは、ゴミと呼ばれたスキルとガラクタと呼ばれた石で、世界を切り拓く男の物語。

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。

しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。 しかし―― 彼が切り捨てた仲間こそが、 実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。 事実に気づいた時にはもう遅い。 道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。 “荷物持ちがいなくなった瞬間”から、 アレクスの日常は静かに崩壊していく。 短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。 そんな彼と再び肩を並べることになったのは―― 美しいのに中二が暴走する魔法使い ノー天気で鈍感な僧侶 そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。 自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。 これは、 “間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる” 再生の物語である。 《小説家になろうにも投稿しています》

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

【第一部完結】転生99回目のエルフと転生1回目の少女は、のんびり暮らしたい!

DAI
ファンタジー
【第一部完結!】 99回のさよならを越えた、究極の『ただいま』 99回転生した最強エルフは、のんびり暮らしたいだけなのに――なぜか家族が増えていく。 99回も転生したエルフの魔法使いフィーネは、 もう世界を救うことにも、英雄になることにも飽きていた。 今世の望みはただひとつ。 ――森の奥の丸太小屋で、静かにのんびり暮らすこと。 しかしその願いは、 **前世が日本人の少女・リリィ(12歳)**を拾ったことで、あっさり崩れ去る。 女神の力を秘めた転生少女、 水竜の神・ハク、 精霊神アイリス、 訳ありの戦士たち、 さらには―― 猫だと思って連れ帰ったら王女だった少女まで加わり、 丸太小屋はいつの間にか“大所帯”に!? 一方その裏で、 魔神教は「女神の魂」と「特別な血」を狙い、 世界を揺るがす陰謀を進めていた。 のんびり暮らしたいだけなのに、 なぜか神々と魔王と魔神教に囲まれていくエルフ。 「……面倒くさい」 そう呟きながらも、 大切な家族を守るためなら―― 99回分の経験と最強の魔法で、容赦はしない。 これは、 最強だけど戦いたくないエルフと、 転生1回目の少女、 そして増え続ける“家族”が紡ぐ、 癒しと激闘の異世界スローライフファンタジー。 ◽️第二部はこちらから https://www.alphapolis.co.jp/novel/664600893/865028992

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

処理中です...