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六章
61話 雷
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雷神リアムは封印を断ち切った。
複製体の斎藤を倒し、怒りあらわで岡本たちの前に立つ。
転送魔法陣の中にいるアルファの住人。
そして斎藤たち。
(この人はダメだ… 僕たちでは勝てないっ!!)
岡本の体が震える。
「は……」
タイガは口が塞がらず、瞬きすらもできなかった。
マリナは本を抱え、目を瞑る。
ポロポロと涙が溢れ、死を覚悟した。
(タイトお兄ちゃん……助けてっ……)
ロアもまた目を瞑り、死にたくないと願っていた。
リアムは殺気を放ちながらも、動かなかった。
雷光を纏う腕がわずかに震えている。
「特級魔法を使いやがったな」
低く響く声。
額に浮かぶ青筋。
奥歯を噛み締め感情を抑えつける。
斎藤は、笑っていた。
声が歪む。音が割れる。
まるで“存在そのものが壊れかけた映像”のように。
「そうだよ。この魔法陣の中に入ったとしても、僕に触れたとしても発動するよ」
斎藤、特級魔法。
範囲内で自身より魔力量が少ないものを即死させる。
その範囲はアルファを包み込んでいた。
発動すればリアムと斎藤以外は残らない。
「何が目的だ?」
リアムの熱気が強まる。
「君を殺したいんだ」
その言葉にリアムの怒気が限界を越える。
雷がバチバチとリアムの体を覆い、空間が揺れる。
斎藤の唇は微かに震えていた。後には引き返せない。
彼がいる限り、人類に明日はない。
「殺す」
リアムが踏み込んだ。
アルファ内を焼き尽くすような電流。
しかし――リアムは踏みとどまった。
斎藤を見据えたその瞳に、一瞬の迷い。
リアムの視界の端に、“少女”の姿が映った。
アルファ内で育った一人の少女。
花を渡してきた。
笑って「おじさん」なんて呼んで、からかってきた。
少女は今、意識のない抜け殻となっている。
その手には、かつてリアムに渡した“青い花”。
リアムは奥歯を噛み締め、血が滲むほどに拳を握りしめた。
呼吸が乱れる。
殺せと叫ぶ自分と、皆んなを救いたいと言う気持ちがぐちゃぐちゃに混ざり合う。
「……わかった」
リアムはあぐらをかき、腕を組み、目を閉じた。
体が揺れる。
リアムの膨大な魔力が目の前の敵を殺そうと踠いているのだ。
斎藤は微笑み、ゆっくりと魔法陣の外へ足を踏み出した。
靴音が響く。
カツ……カツ……。
そして、
手を伸ばせば届く距離まできた。
斎藤はゆっくりと、リアムに触れようとする。
(この俺が死ぬのか...なあ、前田。あの世で見てんだろ?これでよかったんだよな……)
リアムは前田との記憶を思い出す。
雷神として生まれたリアムは問題児であった。
戦闘狂で気に食わない奴を片っ端からぶちのめす。
世界の秩序を守る地の神、水の神、火の神はそんな雷神リアムを見兼ね、人の大陸から追放した。
リアムは転の大陸に飛ばされ、そこに住まう強力な魔物と戦う日々を過ごす。
ある日、前田が現れた。
大量の転生者を引き連れ、ここに拠点を作りたいとぬかす。
リアムは自分より強ければ従うと言い、二人は戦った。
舐めていたリアムに、前田は最初から全力を出し、勝負がついた。
不満を持ちながらも前田の言う事を聞くリアム。
一人だった世界に、今では沢山の人、仲間がいる。
アルファを作り、そこを守る日々。
魔族や人類の脅威が攻めてくることもあったが、リアムと前田の前では無力に等しかった。
リアムは嫌々ながらも行事に参加させられた。
他の転生者たちとの交流。だんだんと絆が深まっていく。
楽しい。強いやつと戦う時とは違う、楽しさ。
幸せに気づく。
しかし、そんな日々は前田の死と共に崩れ去った。
アルファ内が不安に包まれ、どうまとめていいかもわからない。
神頼み状態の住民のプレッシャーに押しつぶされそうな時、斎藤たちが現れた。
封印されてしまった自分が情けない。
けじめ。そして、アルファの住人を救いたいと願い、死を選んだ。
「頼む……無碍に扱わないでくれ」
リアムは最後に想いを伝えた。
斎藤の手がリアムの額に触れる。
ドサッ……。
リアムは死んだ。
胸ポケットから、何かがひらりと落ちる。
綺麗な青色の押し花――かつて、少女が渡したものだった。
ゴウゴウと溢れる魔力の流れが止まり、アルファ内の照明がゆっくり消えていく。
複製体の斎藤を倒し、怒りあらわで岡本たちの前に立つ。
転送魔法陣の中にいるアルファの住人。
そして斎藤たち。
(この人はダメだ… 僕たちでは勝てないっ!!)
岡本の体が震える。
「は……」
タイガは口が塞がらず、瞬きすらもできなかった。
マリナは本を抱え、目を瞑る。
ポロポロと涙が溢れ、死を覚悟した。
(タイトお兄ちゃん……助けてっ……)
ロアもまた目を瞑り、死にたくないと願っていた。
リアムは殺気を放ちながらも、動かなかった。
雷光を纏う腕がわずかに震えている。
「特級魔法を使いやがったな」
低く響く声。
額に浮かぶ青筋。
奥歯を噛み締め感情を抑えつける。
斎藤は、笑っていた。
声が歪む。音が割れる。
まるで“存在そのものが壊れかけた映像”のように。
「そうだよ。この魔法陣の中に入ったとしても、僕に触れたとしても発動するよ」
斎藤、特級魔法。
範囲内で自身より魔力量が少ないものを即死させる。
その範囲はアルファを包み込んでいた。
発動すればリアムと斎藤以外は残らない。
「何が目的だ?」
リアムの熱気が強まる。
「君を殺したいんだ」
その言葉にリアムの怒気が限界を越える。
雷がバチバチとリアムの体を覆い、空間が揺れる。
斎藤の唇は微かに震えていた。後には引き返せない。
彼がいる限り、人類に明日はない。
「殺す」
リアムが踏み込んだ。
アルファ内を焼き尽くすような電流。
しかし――リアムは踏みとどまった。
斎藤を見据えたその瞳に、一瞬の迷い。
リアムの視界の端に、“少女”の姿が映った。
アルファ内で育った一人の少女。
花を渡してきた。
笑って「おじさん」なんて呼んで、からかってきた。
少女は今、意識のない抜け殻となっている。
その手には、かつてリアムに渡した“青い花”。
リアムは奥歯を噛み締め、血が滲むほどに拳を握りしめた。
呼吸が乱れる。
殺せと叫ぶ自分と、皆んなを救いたいと言う気持ちがぐちゃぐちゃに混ざり合う。
「……わかった」
リアムはあぐらをかき、腕を組み、目を閉じた。
体が揺れる。
リアムの膨大な魔力が目の前の敵を殺そうと踠いているのだ。
斎藤は微笑み、ゆっくりと魔法陣の外へ足を踏み出した。
靴音が響く。
カツ……カツ……。
そして、
手を伸ばせば届く距離まできた。
斎藤はゆっくりと、リアムに触れようとする。
(この俺が死ぬのか...なあ、前田。あの世で見てんだろ?これでよかったんだよな……)
リアムは前田との記憶を思い出す。
雷神として生まれたリアムは問題児であった。
戦闘狂で気に食わない奴を片っ端からぶちのめす。
世界の秩序を守る地の神、水の神、火の神はそんな雷神リアムを見兼ね、人の大陸から追放した。
リアムは転の大陸に飛ばされ、そこに住まう強力な魔物と戦う日々を過ごす。
ある日、前田が現れた。
大量の転生者を引き連れ、ここに拠点を作りたいとぬかす。
リアムは自分より強ければ従うと言い、二人は戦った。
舐めていたリアムに、前田は最初から全力を出し、勝負がついた。
不満を持ちながらも前田の言う事を聞くリアム。
一人だった世界に、今では沢山の人、仲間がいる。
アルファを作り、そこを守る日々。
魔族や人類の脅威が攻めてくることもあったが、リアムと前田の前では無力に等しかった。
リアムは嫌々ながらも行事に参加させられた。
他の転生者たちとの交流。だんだんと絆が深まっていく。
楽しい。強いやつと戦う時とは違う、楽しさ。
幸せに気づく。
しかし、そんな日々は前田の死と共に崩れ去った。
アルファ内が不安に包まれ、どうまとめていいかもわからない。
神頼み状態の住民のプレッシャーに押しつぶされそうな時、斎藤たちが現れた。
封印されてしまった自分が情けない。
けじめ。そして、アルファの住人を救いたいと願い、死を選んだ。
「頼む……無碍に扱わないでくれ」
リアムは最後に想いを伝えた。
斎藤の手がリアムの額に触れる。
ドサッ……。
リアムは死んだ。
胸ポケットから、何かがひらりと落ちる。
綺麗な青色の押し花――かつて、少女が渡したものだった。
ゴウゴウと溢れる魔力の流れが止まり、アルファ内の照明がゆっくり消えていく。
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