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闇属性
しばらくして、私が落ち着きを取り戻した頃、ランズベルト様は先ほど見てきた王宮の状況について話し始めた。
「それで、話は変わるのですが……王宮は思っていた以上に深刻な状態でした」
「……深刻とは?」
俯きがちに話すランズベルト様の様子にこちらも思わず息を呑む。
「使用人たちの姿もほとんどなく、例の男爵令嬢が魅了香や魅了の魔法を使い、既に王宮内を掌握しているようでした」
「掌握……!? 国王陛下や宰相様たちはご無事なのですか!?」
驚きで思わず大きな声を上げてしまう。
「魅了にかかっていた王太子は、『くま吉』の聖魔法で魅了を解きましたが、陛下や宰相がどうなっているかはまだ……」
「そうですか。やはり殿下も魅了にかかっていたのですね……」
「ええ。『くま吉』が一気に浄化してしまったので、詳細は確かめませんでしたが、殿下にはかなり継続的な魅了がかけられていたのではないかと」
思い返せば、マリアが現れてから殿下は物凄い短期間で私から一気に離れていった。
てっきりゲームの強制力なのだと思い込んでいたけれど、実際はきっとマリアに魅了をかけられていたのだろう。
つまり、マリアは魅了が使える闇属性持ちということだ。
私が光属性になったように、その逆の現象がマリアには起こったのだろうか。
「それと、なぜか面識のない男爵令嬢が私のことを知っているようで……よくわからないことを言っていました」
「よくわからないこと?」
言い出してから、ランズベルト様はなぜか話すかどうかをとても悩んでいるように、困った顔で微笑み、カップを手に取る。
お茶を一口含んで意を結したのか、カップを置くと真剣な顔で私を見つめ、重い口を開いた。
「例の男爵令嬢はこう言っていたのです。『ロベリア様が死なないと、シークレットルートが開かない』と。彼女はあなたの命を狙っています」
「……え?」
一瞬、頭の中が真っ白になった。
『シークレットルート』ということは、マリアはこれがゲームの世界だと知っている。
(……つまりマリアは私と同じ転生者ということ!?)
そしてマリアは『シークレットルート』に辿り着くために、私を殺そうとしていることになる。
そもそも私はそこまでやり込み勢ではないので、『シークレットルート』の存在を知らない。
対するマリアはやり込み勢なうえに、『シークレットルート』はもちろん、この世界を知り尽くしている可能性が高い。
(私めちゃめちゃ不利じゃない……)
状況を把握して思わず頭を抱える。
黙り込んで頭を抱える私を、ランズベルト様が心配そうに覗き込む。
「申し訳ありません。私の配慮がかけていました。やはりあなたの命が狙われているなど、あなた自身に話すべきではなかった」
「い、いえ、大丈夫です! 話してくださりありがとうございます」
マリアが転生者だとわかったことはとても有り難い。きっと闇属性を持った理由も私と同じ可能性が高い。本来のヒロインは光属性を持っていたのだから。
そして、闇属性を得た彼女は“悪役令嬢ロベリア”が使った魅了や従属魔法を参考に、攻略対象たちを落としていったのだろう。
これでようやく辻褄が合った。
(でもまさか王宮を掌握までするとは思わなかったけど……一体マリアは何を考えているの? このままだと国が滅んじゃうじゃない! なんとかしなくちゃ!)
そう思い立って顔を上げたところで、申し訳なさそうな表情のランズベルト様と目が合う。
目があった途端、彼の瞳が真っ直ぐ私を見据えた。
「ロベリア嬢、大丈夫です! あなたのことは絶対に、命に代えても、この私が守ります!」
真剣な顔でそう言われた。
乙女ゲームの定番の台詞を……目の前のイケメンに言われた……。
じわじわと言われた言葉を噛み締めて、段々と頬が熱くなるのを感じる。
それと同時に心臓が早鐘を打ち続けて、どんどん速度を増していく。
(ど、どうしましょう……なんて返したらいいの!? ああでも、やっぱりイケメン……! じゃなくて……え!? どうしたら……というか、何でこんなにドキドキしてるのに嬉しくてたまらないの!? やっぱりイケメンだから!? イケメンに言われてるからなの!?)
真っ赤になりながらアワアワしていると、その様子をまっすぐ見つめていたランズベルト様の表情が変わる。
今まで見たどの表情とも違うその満面の笑みに、心を鷲掴みにされる。
「あ、ありがとう、ございますっ!」
裏返りそうになりながら、なんとか返す。
「それに『くま吉』がいれば、きっと大丈夫です。ね?」
そう言ってウィンクしながらさらに破顔するランズベルト様に、私は顔を真っ赤にしながら必死にコクコクと頷くしかできなかった。
「それで、話は変わるのですが……王宮は思っていた以上に深刻な状態でした」
「……深刻とは?」
俯きがちに話すランズベルト様の様子にこちらも思わず息を呑む。
「使用人たちの姿もほとんどなく、例の男爵令嬢が魅了香や魅了の魔法を使い、既に王宮内を掌握しているようでした」
「掌握……!? 国王陛下や宰相様たちはご無事なのですか!?」
驚きで思わず大きな声を上げてしまう。
「魅了にかかっていた王太子は、『くま吉』の聖魔法で魅了を解きましたが、陛下や宰相がどうなっているかはまだ……」
「そうですか。やはり殿下も魅了にかかっていたのですね……」
「ええ。『くま吉』が一気に浄化してしまったので、詳細は確かめませんでしたが、殿下にはかなり継続的な魅了がかけられていたのではないかと」
思い返せば、マリアが現れてから殿下は物凄い短期間で私から一気に離れていった。
てっきりゲームの強制力なのだと思い込んでいたけれど、実際はきっとマリアに魅了をかけられていたのだろう。
つまり、マリアは魅了が使える闇属性持ちということだ。
私が光属性になったように、その逆の現象がマリアには起こったのだろうか。
「それと、なぜか面識のない男爵令嬢が私のことを知っているようで……よくわからないことを言っていました」
「よくわからないこと?」
言い出してから、ランズベルト様はなぜか話すかどうかをとても悩んでいるように、困った顔で微笑み、カップを手に取る。
お茶を一口含んで意を結したのか、カップを置くと真剣な顔で私を見つめ、重い口を開いた。
「例の男爵令嬢はこう言っていたのです。『ロベリア様が死なないと、シークレットルートが開かない』と。彼女はあなたの命を狙っています」
「……え?」
一瞬、頭の中が真っ白になった。
『シークレットルート』ということは、マリアはこれがゲームの世界だと知っている。
(……つまりマリアは私と同じ転生者ということ!?)
そしてマリアは『シークレットルート』に辿り着くために、私を殺そうとしていることになる。
そもそも私はそこまでやり込み勢ではないので、『シークレットルート』の存在を知らない。
対するマリアはやり込み勢なうえに、『シークレットルート』はもちろん、この世界を知り尽くしている可能性が高い。
(私めちゃめちゃ不利じゃない……)
状況を把握して思わず頭を抱える。
黙り込んで頭を抱える私を、ランズベルト様が心配そうに覗き込む。
「申し訳ありません。私の配慮がかけていました。やはりあなたの命が狙われているなど、あなた自身に話すべきではなかった」
「い、いえ、大丈夫です! 話してくださりありがとうございます」
マリアが転生者だとわかったことはとても有り難い。きっと闇属性を持った理由も私と同じ可能性が高い。本来のヒロインは光属性を持っていたのだから。
そして、闇属性を得た彼女は“悪役令嬢ロベリア”が使った魅了や従属魔法を参考に、攻略対象たちを落としていったのだろう。
これでようやく辻褄が合った。
(でもまさか王宮を掌握までするとは思わなかったけど……一体マリアは何を考えているの? このままだと国が滅んじゃうじゃない! なんとかしなくちゃ!)
そう思い立って顔を上げたところで、申し訳なさそうな表情のランズベルト様と目が合う。
目があった途端、彼の瞳が真っ直ぐ私を見据えた。
「ロベリア嬢、大丈夫です! あなたのことは絶対に、命に代えても、この私が守ります!」
真剣な顔でそう言われた。
乙女ゲームの定番の台詞を……目の前のイケメンに言われた……。
じわじわと言われた言葉を噛み締めて、段々と頬が熱くなるのを感じる。
それと同時に心臓が早鐘を打ち続けて、どんどん速度を増していく。
(ど、どうしましょう……なんて返したらいいの!? ああでも、やっぱりイケメン……! じゃなくて……え!? どうしたら……というか、何でこんなにドキドキしてるのに嬉しくてたまらないの!? やっぱりイケメンだから!? イケメンに言われてるからなの!?)
真っ赤になりながらアワアワしていると、その様子をまっすぐ見つめていたランズベルト様の表情が変わる。
今まで見たどの表情とも違うその満面の笑みに、心を鷲掴みにされる。
「あ、ありがとう、ございますっ!」
裏返りそうになりながら、なんとか返す。
「それに『くま吉』がいれば、きっと大丈夫です。ね?」
そう言ってウィンクしながらさらに破顔するランズベルト様に、私は顔を真っ赤にしながら必死にコクコクと頷くしかできなかった。
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