【完結】ゆるキャラ好きの悪役令嬢はオネエ公爵に拾われる

柊ハセル

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可愛いもの

 公爵邸に着くと、馬車を降りた私たちの様子に、ルイーゼ様を始め、使用人たちも一様に涙を浮かべて大喜びした。
 それもそのはず、ランズベルト様が私を放してくれず、そのままお姫様抱っこ状態で馬車を降りたからだ。

「きゃーーーーー! あらあらまあまあまあまあまあまあ! どうしましょう!? え!? 結婚式?? 結婚式ですわよね!? お式の準備なんてまだできていませんわ!? もう、わたくしとしたことが、こんな大事な準備を前もってできないだなんて……一体どうしたら良いの!? どうしましょう!? セバス! セバスはいて!」

「はい、奥様こちらに」

 大喜びでとんでもない方向に思考を巡らすルイーゼ様は、慌てて家令を呼んだ。

(え!? いえ、ちょっと待ってください! え!? そんなに一気に進むものなのですか!? やっと気持ちが通じ合ったばかりなのに、え? もういきなり帰ってすぐに結婚式!? そういうものなの!?)

 私の動揺とは裏腹に、すぐさま現れた家令と相談を始めようとするルイーゼ様。
 すると、なぜか若干興奮気味のランズベルト様がルイーゼ様を止めに入った。

(あ、よかったわ。私の感覚がおかしいわけではなかったのね)

「母上、少し落ち着いてください。気持ちはわかります! 私も挙げられるものなら今すぐにでも式を挙げたい気持ちはあります!」

「そうよね、やはりそうですわよね……わたくしとしたことがこのようなわかりきっていたことの対処もできないだなんて……一生の不覚ですわ!」

 ランズベルト様の言葉に「わたくしの気が利かないばっかりに……」となぜか落ち込んでしまうルイーゼ様。
 それよりも私はランズベルト様のいきなりの暴露に、思わず顔が熱くなる。

「あ、いえ、まだ大丈夫です。ロベリア嬢にはご承諾をいただいたのですが、アラベスク侯爵にはまだご承諾をいただいておりませんので、後日、ご挨拶に伺う予定です」

「まあ、そうなのですね!」

 私から承諾を得たと聞いた途端、ルイーゼ様の目がキラキラと乙女のようになり、こちらを見つめる。

(ああもう、嬉しいのだけれど、恥ずかしすぎて居た堪れない……)

「ですので、結婚式についてはそれからでお願いします。あ、ですが、ドレスなどの資料は私も見たいので、後日一緒にご相談しましょう!!」

「まあまあまあまあ! 素敵ですわ! ぜひそういたしましょう!」

 ルイーゼ様は満面の笑みを浮かべて頷くと、控えていた家令に意気揚々と扇子を掲げて指示を出す。

「さあ、今夜はお祝いですわ! 準備なさい!」

 ところがそんな大喜びのルイーゼ様に、ランズベルト様が待ったをかける。

「あ、母上、お待ちください!」

 まさか止められると思っていなかったのだろう。
 ルイーゼ様はきょとんとした様子でこちらを見つめる。
 すると、ランズベルト様はここまでの経緯を説明し、私が疲れていること、魔力枯渇を起こしたばかりなので、早く休ませたいことを告げた。
 ルイーゼ様は一瞬残念そうな表情になったものの、魔力枯渇の話を聞いた途端、今度は使用人たちに寝室の準備を急ぐように指示を出す。

「気づかず申し訳ありませんわ。ロベリア様」

「あ、い、いえ。その、ルイーゼ様。お気遣いいただき、ありがとうございます」

 ランズベルト様に抱きかかえられている状態で声をかけられ、恥ずかしさに言葉がまごつく。
 そんな私をランズベルト様がさも愛しげに至近距離で見つめてくださるので、本当に居た堪れない。
 思わず恥ずかしくなり、顔を手で覆うと、ルイーゼ様が楽しそうに笑う。

「ふふふふ。こちらまで気持ちが火照ってしまいますわね。ランス、早くロベリア様をお部屋へ。セバス、例の新しいお部屋へ」

「承知いたしました」

 そうして案内された部屋にたどり着くと……そこではデジャブが待っていた。





(この広さとこの構造は……公爵領の本邸の部屋と同じ……つまりは主寝室。公爵夫妻の部屋!?)

 ランズベルト様は、扉の前でその事実を知るなり「やはりですか」と呟いたものの、特に気にすることなく部屋へと入ろうとする。
 たじろぐ私を見て、「もう婚約者ですし、問題ありませんよね?」と爽やかな笑顔で告げると、私を抱きかかえたまま部屋に入った。
 中に入ると、以前相談した通りの、可愛いが詰まった空間が広がっていた。

「……」

 急に黙り込んだランズベルト様はソファーにそっと私を下ろすと、なぜか深呼吸を始める。

「キャーーーーーーー!!!! 何なのここは!? え? 楽園!? もしかしてここは楽園なの!? しかもここにロベリアまで居るだなんて、私のキャパが限界よーー!! どうしてくれるの!? ほんとギルティよ! ギルティ!! 私を殺す気なの!? もうどうしたらいいの!? こんな空間、興奮しすぎて眠れる気がしないわよ!! え……あらどうしましょ。私大丈夫かしら? もう何でこんな部屋作っちゃったのよ!? ああ、でもでも最高すぎる~~~!! どうしましょう!? どうしたら良いのぉ~~!!」

 唐突にいつも以上に全力なオネエモードが始まった。
 よくよく聞いていると後半はなんだか後悔したり喜んだりと大変忙しい内容になっている。
 そんないつも通りの彼を見ていたら、思わず笑いが込み上げてきてしまう。

「ふふふふっ。あはっ、あはははは」

「もう、そんなに笑わないでください。私にとっても結構死活問題なんですから!」

「だって、ランズベルト様、興奮しすぎて眠れる気がしないって。寝室なのに……ふふふ、あははっ」

「まあ、私は別に眠れなくても良いですけれど、そうしたら大変なのはあなたですよ? ロベリア」

「……ええ!?」

 意味を理解して、思わず真っ赤になってしまった私を見て、ランズベルト様が、嬉しそうに笑う。
 気付けばオネエモードは切り替わり、すっかり雄の目つきになっている。
 その瞳に嬉しい反面、さらに赤くなってしまう。
 ベッド脇には私が今まで作ったゆるキャラのぬいぐるみたちが綺麗に並べられていて、部屋の中は可愛いで満たされていて、隣には嬉しそうに微笑む、美しくて時々オネエな恋人。

「……ランズベルト様、今私すごく幸せです」

「ええ、私もです。ロベリア。あなたに出会えてとても幸せです」

 二人でソファに腰掛けながら、部屋を見渡し、幸せを噛み締め合う。

「さっき馬車の中で、胸がいっぱいで言えなくて……その、私も、ランズベルト様とずっと一緒にいたいです」

 恥ずかしさを堪えて伝える。
 すると、嬉しそうに笑うランズベルト様に唇にそっと指を当てられる。

「これからは『ランス』と呼んでください。もちろん敬称など無しで」

「は、はい。……ランス」

(あ、甘い~~~~)

「ロベリア。これからも二人で可愛いものをたくさん愛でましょうね! もちろん、一番はあなたですが」

「!?」

「ふふふ。ほんと可愛らしい。愛していますよ、ロベリア」

 優しい眼差しでそう告げられ頷く。
 ランスに再び抱きしめられた私は、少しずつ近づくエメラルドの瞳を見つめながら、ゆっくりと瞳を閉じる。
 すると、柔らかなものが唇に触れて、すぐに離れていった。
 目を開けると至近距離でこちらを愛おしそうに見つめる彼がいて、くすぐったくなって微笑む。
 彼は嬉しそうに笑ってから頬にそっと優しい口付けを落とした。

「ロベリア。今日はもう無理しない方がいい。ゆっくりおやすみ」

 再び私を抱えてベッドへと運んでくれる。
 
「あの、ランスは……その……」

「今日はお疲れでしょうし、まだ正式な婚約者でもありませんから、今まで通り上の部屋で休みます」

「そうですか……」

 ほっとしつつも、少し残念に思っていると、顔に出ていたのか、ランス様がイタズラっぽい顔になった。

「それとも、一緒に休んだ方が良いですか? 私はロベリアさえ良ければ是非そうしたいのですが」

「っ!?」

「ふふ。やはりロベリアは本当に可愛いですね。今日はやめておきます。ゆっくり休んでくださいね。おやすみなさい」

 そう言って、私の額に口付けを落として、名残惜しそうに部屋を出ていった。
 ランス様の驚きの甘さに自分の心臓が騒がしすぎて、なかなか寝付くことができなかった。
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