転生した子供部屋悪役令嬢は、悠々快適溺愛ライフを満喫したい!

木風

文字の大きさ
10 / 55
転生した子供部屋悪役令嬢は、悠々快適溺愛ライフを満喫したい!

第10話「本を閉じれば、始まるのは私の物語」

しおりを挟む
私がストールを置いたのを確認すると、すぐに侍女総出でドレスを脱がせ始められる。
一枚一枚外されるごとに体が軽くなり、呼吸も楽になる。

……そして、コルセットが外れた瞬間の解放感ときたら!!

「あぁぁぁぁ!!やっと脱げたぁぁぁ!!!」
「お、お嬢様……!入浴のご準備が整いました」

思わず裸でバンザイしていると、慌てた侍女にタオルで身体を隠される。

そのまま浴室に連れて行かれ、温かな湯に身を沈める。
緊張で強張っていた体が、じわじわとほぐれていく。
背後では、侍女が丁寧に髪を解き、香油を馴染ませてくれる。

あ”あ”あ”あ”あ”あ”……極楽ぅぅぅ……
お風呂のお世話なんて慣れない!と思っていたけど、ドレス解放からのこの風呂天国。
これ知っちゃったら、もう自分でやる気なくすわ……

やっと楽なネグリジェに着替え、部屋に戻る。
ふわりと漂う食事の匂いに、思わずお腹が鳴りそうになる。

そういえば、今日食べたのって朝のサンドイッチ一切れだけ。
コルセットのせいで全然気付かなかったけど、いざ食事を前にすると一気に空腹が押し寄せてきた。

机の上には、信じられないほどの料理が並んでいる。
野菜スープ、コンソメスープ、濃厚なポタージュ。
白いパンに甘いパン、香ばしいバゲットまで。
肉料理も魚料理もずらりと並び、果物もスイーツも色とりどり。

まるでビュッフェかよ!!って量が、毎食当然のように用意されるのが貴族流。

最初は『全部食べなきゃ失礼!?』と必死で詰め込んで、お腹がはち切れそうになったけど……
実は『全部平らげる方が下品』らしく、むしろ残すのがマナーだと聞いてカルチャーショック。

でも……確かに、こんだけ栄養あるもん食べてなきゃ、この胸には育たんよなぁ……

思わず視線を落とし、自分の胸をちらりと確認してしまった。

食後、ベッドのサイドテーブルには紅茶の湯気と小さなお菓子の甘い香り。
私はその横でだらしなく転がり、分厚い一冊を両手で抱えるように広げていた。
ページをめくる指先が止まらない。物語に夢中になっているうちに、気づけば最後のページ。

「……はぁぁぁ♡やっぱいいわ♡」

思わず声が漏れる。
婚約破棄、陰謀、ヒロインを陥れる悪役令嬢。
けれど彼女は次々とフラグをへし折り、なぜか周囲から愛されてしまう。
……ああいう理不尽な救済って、本当に最高。
前世で腐るほど見てきた悪女断罪ルートを、まるっと笑い飛ばすような爽快感。
まさかこの世界でも、こんなジャンルに巡り会えるとは思ってもいなかった。

本を胸に伏せ、頬が勝手ににやけるのをどうにも止められない。

「悪役なのにみんなから愛されちゃうとか。いい!!!!」

声に出した瞬間、昼間の疲労と心地よい読後感が重なり、一気に睡魔が襲ってきた。
瞼がゆっくりと落ち、甘い余韻に包まれたまま、ふわりと夢の底へ沈んでいった。

数日後。

テーブルいっぱいに豪華な料理が並ぶ中、父が重々しい声で口を開いた。

「アリエル。お前の学園退学の手続きが済んだ」

あ、やっぱり退学になるんだ……
ルシアンもリリアナもいる学園で、アリエルがまともに過ごせるはずもない。
針の筵みたいな生活、そりゃ続けられないよね。

「手続き、ありがとうございます……」
「代わりに屋敷に家庭教師を呼ぶことにした」
「えっ!?」

えーーーー、家庭教師ーーーー!?
でもまぁ……あの地獄みたいな学校に戻るくらいなら、屋敷で勉強する方が何倍もマシか。

「明日からいらっしゃる。くれぐれも粗相のないように」

いやいや、私29歳なんですけど!?
こう見えて、日本最難関の大学を突破して、国家試験だって合格した女だぞ!?
この世界の勉強がどんなもんかは知らないけど、今さら小手先の勉強ごときで負ける気はしない。

もう学生的な勉強からはだいぶ離れてたとはいえ……
『あれ?私、なんかやっちゃいました?』的に、速攻で終わらせてダラダラ生活に戻らせてもらいますけど!?

朝から屋敷が妙にざわついていた。
侍女たちは慌ただしく廊下を行き来し、私の部屋にも次々と出入りする。

「お嬢様、本日は特別なお方がお見えになりますから」
「髪はきっちり結い上げて、ドレスも正装で」
「……え、家庭教師が来るだけでしょ?」

なんで宮殿に行くときみたいなフルセットアップなんですか??
家庭教師ってもっとこう、地味なおじさまが本抱えて来るもんじゃないの?

コルセットでみしっと締め上げられ、息をするたびに肩が凝る。
必死に笑顔を貼り付けながら、心の中では絶叫していた。

「いやいや、勉強の日にこれ、修行すぎない?」

疑問を胸に抱えたまま、やがて執事が恭しく告げた。

「お嬢様、殿下がお越しでございます」
「……は?」

……殿下?
どの殿下?まさか……いや、いやいやいや。

心臓がバクバクと嫌な予感を打ち鳴らす中、扉がゆっくり開く。
そこに立っていたのは、先日ストールを差し出してきた、黒色の髪と氷青色の瞳の王子様。

「今日から君の家庭教師を務める」

……え。
えぇぇぇぇぇぇぇ!?!?!?

ちょ、ちょっと待って!?
王子様が家庭教師なんてやる!?
どういうこと!?そういう慣習でもあるの!?
も、全然わからないんですけど!?

そもそもあなたの本職、王子様でしょ!?こんなとこでいいの!?
もっと大事な仕事があるんじゃないの!?

でも、周囲の家族も侍女も、みんな当たり前のようににこやかに微笑んでいる。
誰一人として驚いてない。……え、私だけ?
本気で私だけが聞かされてなかったパターン!?

「……よろしく……お願い致します」

とりあえず口から出た言葉に、王子は楽しそうに目を細めた。

大広間の扉が開いた瞬間、思わず固まった。
視界いっぱいに広がるのは、磨き上げられた大理石の床。
頭上には巨大なシャンデリアが宝石のようにきらめき、窓から差し込む昼の光が装飾の一つ一つを反射している。

そして、その中央には弦と管を備えた小さな楽団。
楽器をゆったりと構える姿は、完全に夜会で演奏するあの雰囲気そのもの。

嘘でしょ!?これ練習じゃなくて本番の空気じゃん!!
私、ただステップ確認するだけの予定だったんですけど!?

侍女たちは微笑を浮かべながら、「お嬢様、こちらへ」とドレスの裾を整える。
彼女たちにとっては、これが当然らしい。

……いやいや、絶対おかしいって。

「アリエル」

背後から、低く落ち着いた声が響く。振り返れば、正装姿の王子が堂々と正面に立っていた。
軍服を思わせる白を基調とした衣装に、王家の紋章が金糸で織り込まれている。胸元や袖口にまで細やかな装飾が施され、光を受けるたびにきらめく。

くっ、眩しい。
黒の髪までもが陽光を反射して、キラキラと輝いている。まるで舞台の上の主役みたいな存在感……これが王子のオーラってやつか。

「殿下……え、これ本当にやるんですか?」
「当然だ。舞踏は夜会で披露するものだ。ならば本番同様に練習するべきだろう」

さらりと言われたけど、いつの間にここまで準備してたの!?
私の抗議は風に流れる砂のようにあっさりと無視され、気づけば王子の手が静かに差し伸べられていた。

……仕方ない、受けるしかないか。

「力を抜いて、私に身を預ければいい」

簡単に言わないでくれる!?
こちとらドレスを着るのも二度目で、ダンスなんて中学の創作ダンスが最後なんですけど!?
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました

オオノギ
ファンタジー
【虐殺者《スレイヤー》】の汚名を着せられた王国戦士エリクと、 【才姫《プリンセス》】と帝国内で謳われる公爵令嬢アリア。 互いに理由は違いながらも国から追われた先で出会い、 戦士エリクはアリアの護衛として雇われる事となった。 そして安寧の地を求めて二人で旅を繰り広げる。 暴走気味の前向き美少女アリアに振り回される戦士エリクと、 不器用で愚直なエリクに呆れながらも付き合う元公爵令嬢アリア。 凸凹コンビが織り成し紡ぐ異世界を巡るファンタジー作品です。

【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!

美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』  そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。  目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。  なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。  元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。  ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。  いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。  なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。  このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。  悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。  ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――

気付けば名も知らぬ悪役令嬢に憑依して、見知らぬヒロインに手をあげていました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
私が憑依した身体の持ちは不幸のどん底に置かれた悪役令嬢でした ある日、妹の部屋で見つけた不思議な指輪。その指輪をはめた途端、私は見知らぬ少女の前に立っていた。目の前には赤く腫れた頬で涙ぐみ、こちらをじっと見つめる可憐な美少女。そして何故か右手の平が痛む私。もしかして・・今私、この少女を引っ叩いたの?!そして何故か頭の中で響き渡る謎の声の人物と心と体を共存することになってしまう。憑依した身体の持ち主はいじめられっ娘の上に悪役令嬢のポジションに置かれている。見るに見かねた私は彼女を幸せにする為、そして自分の快適な生活を手に入れる為に自ら身体を張って奮闘する事にした―。 ※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

『お前の顔は見飽きた!』内心ガッツポーズで辺境へ

夏乃みのり
恋愛
「リーナ・フォン・アトラス! 貴様との婚約を破棄する!」 華やかな王宮の夜会で、第一王子ジュリアンに突きつけられた非情な宣告。冤罪を被せられ、冷酷な悪役令嬢として追放を言い渡されたリーナだったが、彼女の内心は……「やったーーー! これでやっとトレーニングに専念できるわ!」と歓喜に震えていた!

断罪の準備は完璧です!国外追放が楽しみすぎてボロが出る

黒猫かの
恋愛
「ミモリ・フォン・ラングレイ! 貴様との婚約を破棄し、国外追放に処す!」 パルマ王国の卒業パーティー。第一王子アリオスから突きつけられた非情な断罪に、公爵令嬢ミモリは……内心でガッツポーズを決めていた。 (ついにきたわ! これで堅苦しい王妃教育も、無能な婚約者の世話も、全部おさらばですわ!)

婚約破棄だ!と言われ実家に帰ったら、最推しに餌付けされます

黒猫かの
恋愛
王国の第一王子クレイスから、衆人環視の中 で婚約破棄を言い渡されたローゼン侯爵令嬢ノエル。

幼馴染みが描いた悪役令嬢ものの世界に「メイド」として転生したので、6年後の断罪イベントをどうにか回避したい

ゆずまめ鯉
恋愛
通勤途中、猫好きではないのに轢かれそうな黒猫をうっかり助けてしまい、死んでしまった主人公──水縞あいり(26) 鳥の囀りで目を覚ますとそこは天国……ではなく知らない天井だった。 狭い個室にはメイド服がかかっている。 とりあえず着替えて備えつけの鏡を見ると、そこには十代前半くらいの子どもの姿があった。 「この顔……どこか見覚えが……」 幼馴染みで漫画家、ミツルギサイチ(御剣才知)が描く、人気漫画「悪役令嬢が断罪されるまで」の登場人物だということに気がつく。 名前はミレア・ホルダー(本名はミレア・ウィン・ティルベリー) 没落貴族の令嬢で、現在、仕えているフランドル侯爵によって領地と洋館を奪われ、復讐のために、フランドル侯爵の長女イザベラが悪役令嬢になるのを止めず、むしろ後押しして見事断罪されてしまうキャラだった。 原作は未完だが、相談を受けていたのでどういう結末を迎えるのか知っている。 「二期アニメもまだ見てないし、どうせ転生するなら村人Aとかヒロインの母親がよかった……!!」 幼馴染みの描く世界に転生してしまった水縞あいり=ミレアが、フランドル侯爵家で断罪回避するべく、イザベラをどうにかお淑やかな女性になるように導いている途中。 病弱で原作だと生死不明になる、イザベラの腹違いの兄エミールに、協力してもらっているうちに求愛されていることに気づいてしまい──。 エミール・ディ・フランドル(20)×ミレア・ウィン・ティルベリー(18) 全30話の予定で現在、執筆中です。2月下旬に完結予定です。 タイトルや内容が変更になる場合もあります。ご了承ください。

処理中です...