転生した子供部屋悪役令嬢は、悠々快適溺愛ライフを満喫したい!

木風

文字の大きさ
12 / 55
転生した子供部屋悪役令嬢は、悠々快適溺愛ライフを満喫したい!

第12話「受験よりも過酷な日々と、ほんの小さな達成感」

しおりを挟む
乗馬から解放され、はい、また着替え。
何度着替えさせんだよ。今どきの結婚式だってせいぜいお色直しなんて2回だぞ。

普段着に戻り、椅子に腰を下ろすと、机の上には分厚い本が積まれていた。
……うわ、出たよ。勉強系。

「まずは語学から」

王子から手渡したテキストを開き、発音を繰り返す。

「……はい。帝国の公用語は問題ない。訛りも少ない」

マジかよ!?外国語は英語とドイツ語で医療論文くらいしか読めないんだが!!

次は歴史。王家の系譜や戦争の流れを確認される。
これはちょっと興味がある。
元々歴史はそこまで得意ではないけれど、今生きているこの世界のことを何も知らない私にとっては、なかなか興味深い。

特に魔法。まだ誰かが魔法自体使っている所を見たことは無いけれど、私が想像する通りの魔法だったら、魔法の発展と戦争はどう考えても切り離せないもんな。

軍用にまで転換できるほどの魔法になると、魔力の総量の問題から、勉強はもちろん技術も才能も必要。
結局は才能とある程度の身分で、魔法を使えるようになるかが決まるのか。

まれに天才が現れることもあるらしいけど、実際にはほぼ『魔導の名門公爵家』が独占している状態。
え~~~ずるくない??どれくらいのことができるのか全く想像できないけれど。
軍用って言うなら相当な威力もあるんだろうか?

でも、確かに誰でも彼でも使えたら、無法地帯になるから、制限したり管理するシステムは必要だよな。

『剣の名門公爵家』もあるらしいけれど、剣で魔法に太刀打ちなんてできるんだろうか?
あ、全員が魔法を使えるわけじゃないし、魔力の総量があるって言ってたから、無限に使えるわけじゃないのか。
そう思うと確かに剣も必須だな。

いや。でも、よくそこにクローバー家食い込んだな。
『神に愛されたクローバー家』って改めて考えてもフワッとし過ぎだろ。
何の神だよ。出て来いよ。剣と魔法に太刀打ちできる気しないんだけど。

最後は宗教。祈祷文を読まされ、教義についての理解を確認。
大概人と人の争いなんて、宗教が発端だろ。
ちっとは日本を見習えよ。あんな狭い島国で神様が八百万もいるんだぞ。
八百万もいたら、何をしたって一人くらい許してくれる神様いんだろ。

……うん。頭ではスッと理解できる。
でも体はもう限界。午前から動きっぱなしで、頭もフル回転で。

センター試験の直前ですら、こんな丸一日勉強しなかったぞ…
気力と体力の限界に、思わず机に突っ伏してしまった。

長い晩餐用テーブルに、父と母、そして王子と私が並んで座った。
蝋燭の光に揺れる銀食器、豪華な料理の数々……けれど、午前から叩き込まれた舞踏・礼儀・芸術・乗馬・学問のフルコースでもう限界。

「本日は長時間、娘のためにありがとうございます」

父が丁寧に礼を述べる。

「非常に教え甲斐があり、何より私の予想以上の成果で安心した」

王子は落ち着いた声で答え、ちらりとこちらを見た。

え……褒めた?今?
ちょっと嬉しいけど、眠すぎて反応できない。
パンをちぎりながら意識が飛びそうになる。

晩餐後、玄関で王子を見送る。
意識朦朧とする私を見て「無理はするな」と言う王子の笑みが妙に満足げで、なんだか腹が立つ。
帰れ帰れ。早く帰れ。なんなら二度と来るな。

自室に戻ると、ストールに包まれてソファに座り込む。
燃えたよ……真っ白に……


今日も今日とて、朝から家庭教師……という名の王子が訪れる。
渋々ドレスに着替えさせられるけれど、レースのついた袖はひらひら邪魔だし、きゅっと締まるコルセットは呼吸を奪うしで、座っているだけで肩が凝る。

もう……なんで来るんだよ。お前が来なければ私の生活は平和なんだよ……

「もうヤダ。これ週三回とか拷問じゃん……」

あからさまに口を尖らせると、侍女が困ったように微笑んだ。

「お嬢様、殿下もお待ちですよ。今日だけは頑張って」
「今日だけって言葉、絶対明日も言うパターンでしょ……」

待たんでええて。むしろ来ないでくれ。
嫌だって言っても、どうせまた来るんだろ……?

大きな溜息が止められないまま、背中を押される。渋々歩みを進め、机の前に腰を下ろす。
視界に入るのは分厚い教本と辞典の塔。ぎっしり詰まった活字を想像するだけで、すでに眠気が襲ってくる。

まずは語学の授業。
「リピート・アフター・ミー」と先生が言うわけではないが、発音の矯正はほぼそれに近い。

「ラ行の舌の位置が甘い。もっと巻き舌で」
「ら、ら……ら゛ぁ……無理ぃ!」

舌を噛みそうになりながら何度も繰り返す。けれど、ある瞬間ふと気づいた。
……あれ?意外とコツさえ掴めば早いかも?
医者だった頃、必死に覚えたラテン語の名残か、記憶の引き出しが思いのほか役に立っている。

続いて歴史。

「この年に即位した王の名を答えよ」
「えっと……アストリア三世……?」

一応正解らしい。でも、次々に飛んでくる年号と系譜の嵐に、脳みそがオーバーヒートする。
私は根っからの理系脳なんだよ!!!

「……眠い……」

背筋を伸ばしたまま舟を漕ぎそうになり、慌てて頬をつねる。
これ、センター試験の日本史Bかよ……しかも範囲は無限大……!

王子は淡々と系譜図を説明していくが、聞けば聞くほど魂が抜けていく。
午後は宗教。祈祷文を朗読させられる。

「……アメン、ドミニ、サンクトゥス……」

声に抑揚をつけろ、腹の底から声を出せと指導される。
……え、これ完全にボイトレじゃん。カラオケ前にやるやつ……!

笑い出しそうになるのを必死で堪え、真剣な顔で朗読を続ける。
王子は満足げに頷いた。

「なかなか筋が良いな」

いやいや、絶対発声練習を褒められてるだけの気しかしないんだが!?

二度目の授業を終え、ぐったりと椅子に沈み込む。

「もう、脳味噌も体力も残ってない……」

それでも侍女がそっと菓子皿を差し出すと、条件反射で手が伸びてしまう。
ふんわり漂う甘い香りに、心がほんの少しだけ復活する。

「まぁ、甘いもののためなら……ちょっとくらい頑張ってやっても……いいかもしれない」

でも、いい加減飽きてきた。
ラーメン、ポテチ、ジャンクフードが恋しい。

……三度目の家庭教師の日。

今日も朝からドレスに着替えさせられたが、ついに体が拒否反応を起こした。
ベッドにしがみついて動けない。

「ムリ!これ以上はムリ!!センター試験よりキツいんだが!!」

駄々をこねる子どものように床を転げ回ると、侍女が冷や汗を流した。

「お、お嬢様!殿下がお待ちです!」
「殿下……?……うぐ……」

名前を出されると、さすがに逆らえず、渋々立ち上がる。

この日の授業は小テスト形式だった。

「先週学んだ年号と系譜を答えよ」
「え、いきなりテスト!?聞いてないです!!」

とはいえ、転生前に培った受験記憶術は健在。
ノートに書き散らしたゴロ合わせを思い出しながら、必死で答えを書き込んでいく。

王子は感心したように頷いた。

「素晴らしい記憶力だな」

だから、伊達や酔狂で日本の最難関の大学出てるわけじゃないんだって……
こんな勉強が何の役に立つんだよ。マジで。何のための勉強なのかもよくわからん!

続いて語学。
王子が会話し、それを逐次訳させられる。

……え、これ同時通訳!?TOEICの試験かよ!?
970点取って満足したっきり、その後は勉強サボってた私にそんな高度なこと要求すんな!!

必死に口を回しながら、頭はフル回転。
……あれ?でも意外といける?いやいや、これ続いたら確実に死ぬ!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました

オオノギ
ファンタジー
【虐殺者《スレイヤー》】の汚名を着せられた王国戦士エリクと、 【才姫《プリンセス》】と帝国内で謳われる公爵令嬢アリア。 互いに理由は違いながらも国から追われた先で出会い、 戦士エリクはアリアの護衛として雇われる事となった。 そして安寧の地を求めて二人で旅を繰り広げる。 暴走気味の前向き美少女アリアに振り回される戦士エリクと、 不器用で愚直なエリクに呆れながらも付き合う元公爵令嬢アリア。 凸凹コンビが織り成し紡ぐ異世界を巡るファンタジー作品です。

【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!

美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』  そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。  目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。  なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。  元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。  ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。  いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。  なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。  このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。  悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。  ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――

気付けば名も知らぬ悪役令嬢に憑依して、見知らぬヒロインに手をあげていました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
私が憑依した身体の持ちは不幸のどん底に置かれた悪役令嬢でした ある日、妹の部屋で見つけた不思議な指輪。その指輪をはめた途端、私は見知らぬ少女の前に立っていた。目の前には赤く腫れた頬で涙ぐみ、こちらをじっと見つめる可憐な美少女。そして何故か右手の平が痛む私。もしかして・・今私、この少女を引っ叩いたの?!そして何故か頭の中で響き渡る謎の声の人物と心と体を共存することになってしまう。憑依した身体の持ち主はいじめられっ娘の上に悪役令嬢のポジションに置かれている。見るに見かねた私は彼女を幸せにする為、そして自分の快適な生活を手に入れる為に自ら身体を張って奮闘する事にした―。 ※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

『お前の顔は見飽きた!』内心ガッツポーズで辺境へ

夏乃みのり
恋愛
「リーナ・フォン・アトラス! 貴様との婚約を破棄する!」 華やかな王宮の夜会で、第一王子ジュリアンに突きつけられた非情な宣告。冤罪を被せられ、冷酷な悪役令嬢として追放を言い渡されたリーナだったが、彼女の内心は……「やったーーー! これでやっとトレーニングに専念できるわ!」と歓喜に震えていた!

断罪の準備は完璧です!国外追放が楽しみすぎてボロが出る

黒猫かの
恋愛
「ミモリ・フォン・ラングレイ! 貴様との婚約を破棄し、国外追放に処す!」 パルマ王国の卒業パーティー。第一王子アリオスから突きつけられた非情な断罪に、公爵令嬢ミモリは……内心でガッツポーズを決めていた。 (ついにきたわ! これで堅苦しい王妃教育も、無能な婚約者の世話も、全部おさらばですわ!)

婚約破棄だ!と言われ実家に帰ったら、最推しに餌付けされます

黒猫かの
恋愛
王国の第一王子クレイスから、衆人環視の中 で婚約破棄を言い渡されたローゼン侯爵令嬢ノエル。

幼馴染みが描いた悪役令嬢ものの世界に「メイド」として転生したので、6年後の断罪イベントをどうにか回避したい

ゆずまめ鯉
恋愛
通勤途中、猫好きではないのに轢かれそうな黒猫をうっかり助けてしまい、死んでしまった主人公──水縞あいり(26) 鳥の囀りで目を覚ますとそこは天国……ではなく知らない天井だった。 狭い個室にはメイド服がかかっている。 とりあえず着替えて備えつけの鏡を見ると、そこには十代前半くらいの子どもの姿があった。 「この顔……どこか見覚えが……」 幼馴染みで漫画家、ミツルギサイチ(御剣才知)が描く、人気漫画「悪役令嬢が断罪されるまで」の登場人物だということに気がつく。 名前はミレア・ホルダー(本名はミレア・ウィン・ティルベリー) 没落貴族の令嬢で、現在、仕えているフランドル侯爵によって領地と洋館を奪われ、復讐のために、フランドル侯爵の長女イザベラが悪役令嬢になるのを止めず、むしろ後押しして見事断罪されてしまうキャラだった。 原作は未完だが、相談を受けていたのでどういう結末を迎えるのか知っている。 「二期アニメもまだ見てないし、どうせ転生するなら村人Aとかヒロインの母親がよかった……!!」 幼馴染みの描く世界に転生してしまった水縞あいり=ミレアが、フランドル侯爵家で断罪回避するべく、イザベラをどうにかお淑やかな女性になるように導いている途中。 病弱で原作だと生死不明になる、イザベラの腹違いの兄エミールに、協力してもらっているうちに求愛されていることに気づいてしまい──。 エミール・ディ・フランドル(20)×ミレア・ウィン・ティルベリー(18) 全30話の予定で現在、執筆中です。2月下旬に完結予定です。 タイトルや内容が変更になる場合もあります。ご了承ください。

処理中です...