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第一章 ホールデンにて
村の事情
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とりあえず状況が不明すぎるのでどういう事かとユイに訊ねてみた。
「何がどうなってるんですか?」
「アマツくんは外の惨状はもう見たか?村の兵達が満身創痍になっていたやつだ」
「ああ、はい。結構騒ぎになっていたので」
「実は、俺達に振られていたラオラの依頼が改竄されていたみたいでな、普通のラオラとして討伐して、ルツァだけを猫ババするつもりだったらしい。それを俺達に取られたって言うんで、急いでかき集めた人達でルツァだけでもって思ったらしいんだがな…」
チラリと村長を見る目に同情が浮かんでいる。
「ルツァを舐めてたな。見事に返り討ちだ。しかもそれによって状況は最悪になっている」
最悪に?
「どういうことですか?」
「私が説明します」
「スイさん…」
村長絞りが終わったスイが大きくため息をついた。
「ラオラは群れる種族。しかし通常ならば連携らしい連携もとれずに狩るのは簡単です。例えボスがいてもそこまで動きが良くなるわけではありません。しかし、例外があります。ボスがルツァ種だった場合、ラオラの動きは驚くほどに洗練され、一気に難易度が上がります。それはルツァは魔力量が通常の何倍も多く、それを使って群れ全体を指揮するのです」
頭のなかに牧場をバラバラに悠々と歩いている牛達が一斉に集まりバッファローの大群へと姿を変え、素晴らしい連携プレイで突進してくるイメージが浮かんだ。
(うん、無理だ。勝てない)
多分違うと思うけど、恐らくそんな感じだと思う。
「しかも、ルツァは仲間意識が非常に強い。仲間に少しでも危害を加えていたら……、この村、襲撃されますよ」
「!」
ビクリと村長の肩が大袈裟なくらいに跳ねる。危害を加えたのか。
「この村も色々対策をしておりますが、ルツァには敵わないでしょうね」
フフフフフ、そんな幻聴が聴こえる。
スイ全く笑ってないのに、後ろに笑っている黒いモノが見える気がした。
そして村長、目が泳ぎまくりで冷や汗が止まらない。
何かを言おうとしているのか口がパクパクと開け閉じを繰り返し、震えるからだで床に手を着き深く頭を下げた。
「……ぉ…、…お願い致します、何でもしますのでお助けください…。……お願い致します…お願い致します…」
「………」
「…………、…スイさん…」
さすがにこれ以上追い込むのは可哀想だと声を掛けると、腕を組み仁王立ちしていたスイが村長の前へと座る。
「本来なら隠蔽の罪ですが、言い訳は聞きます。何でこんなことしたんですか?」
「……」
村長がゆっくりと顔を上げた。
「ここ最近、この辺りではヨネの出来が悪く、雨の量も減ってきているのをご存じでしょうか」
スイが頷く。
ヨネは茶色の皮に包まれた細長い白い実だ。米のようにも使われるし、モラフと呼ばれる平たいパンに似たものを作る原料にもなっている。
「ヨネはこの辺りで一番の資金源です。もちろんオーリンもですが、オーリンは一つの身が熟成するのに数年掛かります。
それに対してヨネは一年に一度収穫できる。
ヨネは水が命です。
しかしここらの地水は魔力が強くて育ちません。なので全て雨に頼るしかない。
ホールデン内では一番雨の多いこの地で育てるのが一番で、この辺りはヨネの生産地のひとつにまでなりました。
しかし…ここ数年、雨の量が減っていき、今年降った雨は例年の半分もありません……。そのためいくつものヨネが水分不足で枯れ果て、収穫もままならず…それでも毎月納める量は増えるばかり……。
…このままではいずれ隣の村のように廃れ飢えてしまうと思ってしまったら…っ!」
それで魔がさした。
ということだ。
村長の説明で何故そこまでしてルツァにこだわったのか理解したオレはスイを見た。今回ばかりは見逃してやりたい。この人たちもそうとう悩んだろうから。
そう、言おうとした。
「事情は理解しました。
しかし、それはそれです」
スイは立ち上がると氷のような冷たい目で村長を見下ろした。
「事情はどうあれ、貴方もこのホールデンの民。我らが神スティータ様への隠蔽は反逆も等しい。貴方はそれを理解しているはずです」
「……、…はい…」
「スティータ様はたえず我々に祝福を天より与えてくださる。
その見返りとしてホールデンの民は地の供物を捧げなくてはならない。例え耐え難い苦痛のなかでも古に交わした契約は守らなくてはならない。
何故ならば我らがホールデンの民はスティータ様に選ばれた者であるから。
そしてそれを今回貴方達はスティータ様との契約を私欲で破り、そして聖なる供物を苦痛と受け取った。
これは反逆以外の何者でもありません」
「………っ」
ボロボロと村長の目から涙がこぼれ落ちた。その手は強く握り締められ、血が滲み出していた。
さすがにこれはおかしい。
いくら神様と言えども、命の危険があっても供物を捧げろとか言うか。
沸々と怒りが沸き上がっていると、ふいにスイの冷たい目が和らぎ、優しげに微笑んだ。
その微笑みを見て、体がぞわりと震えた。
「しかし、村全てが隠蔽の罪に問われる事は避けるべきです。さて、この隠蔽の罪ですが、始めに言い出した方は誰ですか?」
歯を食い縛っていた村長がしばし目をつぶると、掠れた声で言った。
「私です…、隠蔽の罪で裁かれる罪人は私です!ですから!お願い致します!村の者は私がそそのかして無理矢理協力させたのです!罪無き者達をお救いください!!」
「わかりました。貴方の手で操られた哀れな者達はスティータ様の施しを与えます。安心していきなさい」
それからスイに急かされるようにして装備を整えた。
どうやら思ってた以上にルツァというのは恐ろしい存在のようだ。
「恐らく今ラオラの群は森の浅いところまでやって来ているはずです。森から出る前に先手を打ちます」
「魔法は?どのくらいの威力までなら大丈夫ですか?」
「森を燃やしたりするのはいけません。そうですね、纏わせたり…凪ぎ払う系は許可します。ですが、基本武器でルツァを攻撃してください。魔力を喰われて返されたりしたら元も子もありませんから」
「分かりました」
「前衛は?僕が斬り込みたい!」
「ええ、もちろん斬り込み隊長はシンゴ様です。どでかいのを撃ってください」
「いやったあああ!!!任せてよ!一発KOにしてやるから!!」
そして現在作戦タイム中。
村長にこの辺を詳しく記載した地図を持ってこさせて、スイが長年の知識からラオラの動きを予測し、それに合わせて勇者を配置していく。
正面をスピードと火力が一番のシンゴ、左右を技術力、経験ともに豊富なユイとノノハラが固め、後方をオレとコノンで支援と補助をするという感じでまとまった。補助をするといっても周りの雑魚ラオラをルツァ戦の妨げにならないように排除する感じなのだが…、魔物退治始めてのオレにどのくらい出来るのか……。
物凄く不安である。
「念のため今回は私も手伝います。あくまでも補佐なのでそれを忘れないように」
はい、それぞれ返事をして席をたつ。
手には各々の愛用武器、シンゴは両刃の大剣に腰にまた別の剣をぶら下げている。
スイは片刃の剣。刀に似ているけど切っ先が刀に比べて広く、刃が光の反射によって濃紺に見える。
ノノハラの剣は二振りあり、それぞれ刃に厚みがあり柄に赤い宝石が嵌め込まれている。
コノンの武器は杖だ。肩ほどもある杖の先に粗削りされたような金色の宝石が嵌め込まれ、色鮮やかな布が杖に巻かれている。
オレ?
もちろん兵士の剣です。
「では出発します。くれぐれも死なないように」
村から必要そうな薬や道具を譲り受け、いざ出陣。
「………、いざ近くで見たらこの森でけぇ…」
一本一本が縄文杉並の太さじゃないだろうか。それが見渡す限り全部の木がそれで、たまにその二回りほど更にどでかい木が生えている。
「南部のバオルの森とはまた違った雰囲気だな」
「バオルは危険度が低いですしね。クローズは相当の手練れでも奥にはめったに行かない、まさしく魔物の巣ですから」
「ふーん。ま!どんな奴がいても僕がやっつけるけどな!」
「そんなこと言って前みたいに崖から落ちたら世話ないがな」
「いっ…いつの事いってんだよ!!」
慌てたようにノノハラに言うシンゴ。
そうか、落ちたのか。
恐らく勢い余って転げ落ちたんだろうな。
頭の中に簡単にイメージができてしまっていた。
「!」
先頭にいたスイが素早くしゃがんだ。
辺りを警戒するように見渡し、こちらにも背を低くするように指示をする。
「ラオラです」
そう言ってスイが足元を指差すと、今まで気付かなかったのだがあちらこちらに蹄の跡が残っていた。大きさは手のひらほど。通常のラオラの足跡だ。
「近くにいますね。コノン様、頼めますか?」
「わ…わかりました」
コノンは両膝を地面に着けて息を吸い込んだ。
「彼のモノの行方を知りたい。波よ、波よ、繋いで導け…《波追(ナミオ)い》」
トントン、地面をノックする。
「!?」
その瞬間、ノックした所から光の波紋が広がっていき、しばらくするとあちらこちらからコノンとは違う波紋が次々と戻ってきた。
波が収縮し、戻って来るものが無くなると閉じていた目を開いてコノンが立ち上がる。
「…こちらの方向、50m以内に3体。75m以内に5体。100m以内に10体以上、その中に恐ろしく強いのが1体混じっています」
指差した方向は足跡が向かう先。
コノンの指差す方向を見て、スイが地図を見比べ険しい顔をした。
「……」
「どうしたんですか?」
「……この先にオーリンの畑があります。ラオラとそこで戦闘になるのは不味いですね…」
確かに、名産物を破壊するかもしれない。
そうしたらウズルマ村は壊滅だろうな。
「どうしますか?」
ノノハラが訊く。
「近くにいるラオラに攻撃して、引き付けます。ある程度のダメージで仲間を呼ぶでしょうから、そのまま先導して…」
スイが地図上の盆状になっている広場を指差した。
「ここで、一気に攻めます」
「何がどうなってるんですか?」
「アマツくんは外の惨状はもう見たか?村の兵達が満身創痍になっていたやつだ」
「ああ、はい。結構騒ぎになっていたので」
「実は、俺達に振られていたラオラの依頼が改竄されていたみたいでな、普通のラオラとして討伐して、ルツァだけを猫ババするつもりだったらしい。それを俺達に取られたって言うんで、急いでかき集めた人達でルツァだけでもって思ったらしいんだがな…」
チラリと村長を見る目に同情が浮かんでいる。
「ルツァを舐めてたな。見事に返り討ちだ。しかもそれによって状況は最悪になっている」
最悪に?
「どういうことですか?」
「私が説明します」
「スイさん…」
村長絞りが終わったスイが大きくため息をついた。
「ラオラは群れる種族。しかし通常ならば連携らしい連携もとれずに狩るのは簡単です。例えボスがいてもそこまで動きが良くなるわけではありません。しかし、例外があります。ボスがルツァ種だった場合、ラオラの動きは驚くほどに洗練され、一気に難易度が上がります。それはルツァは魔力量が通常の何倍も多く、それを使って群れ全体を指揮するのです」
頭のなかに牧場をバラバラに悠々と歩いている牛達が一斉に集まりバッファローの大群へと姿を変え、素晴らしい連携プレイで突進してくるイメージが浮かんだ。
(うん、無理だ。勝てない)
多分違うと思うけど、恐らくそんな感じだと思う。
「しかも、ルツァは仲間意識が非常に強い。仲間に少しでも危害を加えていたら……、この村、襲撃されますよ」
「!」
ビクリと村長の肩が大袈裟なくらいに跳ねる。危害を加えたのか。
「この村も色々対策をしておりますが、ルツァには敵わないでしょうね」
フフフフフ、そんな幻聴が聴こえる。
スイ全く笑ってないのに、後ろに笑っている黒いモノが見える気がした。
そして村長、目が泳ぎまくりで冷や汗が止まらない。
何かを言おうとしているのか口がパクパクと開け閉じを繰り返し、震えるからだで床に手を着き深く頭を下げた。
「……ぉ…、…お願い致します、何でもしますのでお助けください…。……お願い致します…お願い致します…」
「………」
「…………、…スイさん…」
さすがにこれ以上追い込むのは可哀想だと声を掛けると、腕を組み仁王立ちしていたスイが村長の前へと座る。
「本来なら隠蔽の罪ですが、言い訳は聞きます。何でこんなことしたんですか?」
「……」
村長がゆっくりと顔を上げた。
「ここ最近、この辺りではヨネの出来が悪く、雨の量も減ってきているのをご存じでしょうか」
スイが頷く。
ヨネは茶色の皮に包まれた細長い白い実だ。米のようにも使われるし、モラフと呼ばれる平たいパンに似たものを作る原料にもなっている。
「ヨネはこの辺りで一番の資金源です。もちろんオーリンもですが、オーリンは一つの身が熟成するのに数年掛かります。
それに対してヨネは一年に一度収穫できる。
ヨネは水が命です。
しかしここらの地水は魔力が強くて育ちません。なので全て雨に頼るしかない。
ホールデン内では一番雨の多いこの地で育てるのが一番で、この辺りはヨネの生産地のひとつにまでなりました。
しかし…ここ数年、雨の量が減っていき、今年降った雨は例年の半分もありません……。そのためいくつものヨネが水分不足で枯れ果て、収穫もままならず…それでも毎月納める量は増えるばかり……。
…このままではいずれ隣の村のように廃れ飢えてしまうと思ってしまったら…っ!」
それで魔がさした。
ということだ。
村長の説明で何故そこまでしてルツァにこだわったのか理解したオレはスイを見た。今回ばかりは見逃してやりたい。この人たちもそうとう悩んだろうから。
そう、言おうとした。
「事情は理解しました。
しかし、それはそれです」
スイは立ち上がると氷のような冷たい目で村長を見下ろした。
「事情はどうあれ、貴方もこのホールデンの民。我らが神スティータ様への隠蔽は反逆も等しい。貴方はそれを理解しているはずです」
「……、…はい…」
「スティータ様はたえず我々に祝福を天より与えてくださる。
その見返りとしてホールデンの民は地の供物を捧げなくてはならない。例え耐え難い苦痛のなかでも古に交わした契約は守らなくてはならない。
何故ならば我らがホールデンの民はスティータ様に選ばれた者であるから。
そしてそれを今回貴方達はスティータ様との契約を私欲で破り、そして聖なる供物を苦痛と受け取った。
これは反逆以外の何者でもありません」
「………っ」
ボロボロと村長の目から涙がこぼれ落ちた。その手は強く握り締められ、血が滲み出していた。
さすがにこれはおかしい。
いくら神様と言えども、命の危険があっても供物を捧げろとか言うか。
沸々と怒りが沸き上がっていると、ふいにスイの冷たい目が和らぎ、優しげに微笑んだ。
その微笑みを見て、体がぞわりと震えた。
「しかし、村全てが隠蔽の罪に問われる事は避けるべきです。さて、この隠蔽の罪ですが、始めに言い出した方は誰ですか?」
歯を食い縛っていた村長がしばし目をつぶると、掠れた声で言った。
「私です…、隠蔽の罪で裁かれる罪人は私です!ですから!お願い致します!村の者は私がそそのかして無理矢理協力させたのです!罪無き者達をお救いください!!」
「わかりました。貴方の手で操られた哀れな者達はスティータ様の施しを与えます。安心していきなさい」
それからスイに急かされるようにして装備を整えた。
どうやら思ってた以上にルツァというのは恐ろしい存在のようだ。
「恐らく今ラオラの群は森の浅いところまでやって来ているはずです。森から出る前に先手を打ちます」
「魔法は?どのくらいの威力までなら大丈夫ですか?」
「森を燃やしたりするのはいけません。そうですね、纏わせたり…凪ぎ払う系は許可します。ですが、基本武器でルツァを攻撃してください。魔力を喰われて返されたりしたら元も子もありませんから」
「分かりました」
「前衛は?僕が斬り込みたい!」
「ええ、もちろん斬り込み隊長はシンゴ様です。どでかいのを撃ってください」
「いやったあああ!!!任せてよ!一発KOにしてやるから!!」
そして現在作戦タイム中。
村長にこの辺を詳しく記載した地図を持ってこさせて、スイが長年の知識からラオラの動きを予測し、それに合わせて勇者を配置していく。
正面をスピードと火力が一番のシンゴ、左右を技術力、経験ともに豊富なユイとノノハラが固め、後方をオレとコノンで支援と補助をするという感じでまとまった。補助をするといっても周りの雑魚ラオラをルツァ戦の妨げにならないように排除する感じなのだが…、魔物退治始めてのオレにどのくらい出来るのか……。
物凄く不安である。
「念のため今回は私も手伝います。あくまでも補佐なのでそれを忘れないように」
はい、それぞれ返事をして席をたつ。
手には各々の愛用武器、シンゴは両刃の大剣に腰にまた別の剣をぶら下げている。
スイは片刃の剣。刀に似ているけど切っ先が刀に比べて広く、刃が光の反射によって濃紺に見える。
ノノハラの剣は二振りあり、それぞれ刃に厚みがあり柄に赤い宝石が嵌め込まれている。
コノンの武器は杖だ。肩ほどもある杖の先に粗削りされたような金色の宝石が嵌め込まれ、色鮮やかな布が杖に巻かれている。
オレ?
もちろん兵士の剣です。
「では出発します。くれぐれも死なないように」
村から必要そうな薬や道具を譲り受け、いざ出陣。
「………、いざ近くで見たらこの森でけぇ…」
一本一本が縄文杉並の太さじゃないだろうか。それが見渡す限り全部の木がそれで、たまにその二回りほど更にどでかい木が生えている。
「南部のバオルの森とはまた違った雰囲気だな」
「バオルは危険度が低いですしね。クローズは相当の手練れでも奥にはめったに行かない、まさしく魔物の巣ですから」
「ふーん。ま!どんな奴がいても僕がやっつけるけどな!」
「そんなこと言って前みたいに崖から落ちたら世話ないがな」
「いっ…いつの事いってんだよ!!」
慌てたようにノノハラに言うシンゴ。
そうか、落ちたのか。
恐らく勢い余って転げ落ちたんだろうな。
頭の中に簡単にイメージができてしまっていた。
「!」
先頭にいたスイが素早くしゃがんだ。
辺りを警戒するように見渡し、こちらにも背を低くするように指示をする。
「ラオラです」
そう言ってスイが足元を指差すと、今まで気付かなかったのだがあちらこちらに蹄の跡が残っていた。大きさは手のひらほど。通常のラオラの足跡だ。
「近くにいますね。コノン様、頼めますか?」
「わ…わかりました」
コノンは両膝を地面に着けて息を吸い込んだ。
「彼のモノの行方を知りたい。波よ、波よ、繋いで導け…《波追(ナミオ)い》」
トントン、地面をノックする。
「!?」
その瞬間、ノックした所から光の波紋が広がっていき、しばらくするとあちらこちらからコノンとは違う波紋が次々と戻ってきた。
波が収縮し、戻って来るものが無くなると閉じていた目を開いてコノンが立ち上がる。
「…こちらの方向、50m以内に3体。75m以内に5体。100m以内に10体以上、その中に恐ろしく強いのが1体混じっています」
指差した方向は足跡が向かう先。
コノンの指差す方向を見て、スイが地図を見比べ険しい顔をした。
「……」
「どうしたんですか?」
「……この先にオーリンの畑があります。ラオラとそこで戦闘になるのは不味いですね…」
確かに、名産物を破壊するかもしれない。
そうしたらウズルマ村は壊滅だろうな。
「どうしますか?」
ノノハラが訊く。
「近くにいるラオラに攻撃して、引き付けます。ある程度のダメージで仲間を呼ぶでしょうから、そのまま先導して…」
スイが地図上の盆状になっている広場を指差した。
「ここで、一気に攻めます」
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それを見たヴィルヘリアは格好がつかないと自身が師匠代わりとなり、旅をしながらレイクを鍛え上げること決める。
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これは"無能"と虐げられた主人公レイクと最強竜種ヴィルヘリアの師弟コンビによる竜種を統べ、レイクが『竜人王』になるまでを描いた物語である。
※30話程で完結します。
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