INTEGRATE!~召喚されたら呪われてた件~

古嶺こいし

文字の大きさ
99 / 152
第二章 動き出す

魔力の歴史

しおりを挟む
「え、ライハ一緒に行けんば?」

「そうなんだよ、すまんね」

アウソとキリコにザラキとの修行があり、皆が王都往復の間ここで留守番との旨を伝えたらアウソが非常に残念そうな顔をした。本当にごめん、せっかく言葉少し覚えたのにな。でもオレも死にたくないんだよ。

一応さらっとカリアがなんでオレだけ留守番修行なのかを話してくれた。二人はじゃあ仕方無いと納得してくれたけど、申し訳なく思う。
楽しみだっただけ、余計に。

見たかった。美女とか、街並みとか。あ、あと美味いもの。

「お土産買ってくるから、修行 頑張れよ」

「うん、頑張る」

「帰ってきたとき死んでないでよ。吃驚するから」

「キリコさん縁起でもないこと言わんでください。洒落にならん」

「といっても出発するのは明日の朝よね。午前虎梟飛ばしたから、帰ってくるのは夜だと思うし」

ルキオは年中風が強い。しかも高度や時間によって風の向きがバラバラで、地元の人間じゃないと天候が読みにくい。縄張りにしている龍(風に乗る事があるらしい)がわざと風を変えているのではないかとの説があるが、確かに空を往く鳥は上手く風に乗って猛スピードで飛んでいく。

その為、大型でスピード特化の虎梟は1日で王都を往復することができるのだ。まぁ、王都がここから近いってのも理由だけど。

「ライハは夜から修行だからね。ザラキは早めに始めて完成させたいんよ」

「そういえばザラキさんは?」

「準備中。久しぶりに張り切ってるよ」

「魔法使いの癖に肉弾戦も強いわよね、どっち方向から鍛えるのかしら」

「オレとしては死なないようにしてくれたらもう何でもいいです」

リアルな死亡or生き残るだから文句言える立場じゃない。

「ライハならできるさ。なんだっけ、あれよ。アイキャンドゥーイットゥ!」

「You can do it.な。ありがとう」












夜に備えて少し昼寝。そして完全に日が暮れ目を覚ますと皆で夕飯をとる。

そしてザラキに手渡された荷物を背負い出発した。

『ねーむーいー』

「ちゃんと寝ただろう。我慢しろ」

『んーー』

「ネコよ、上手くいけばおいしーい鶏肉が食べれるぞ」

『よし、ネコがんばる』

急にしゃんと歩き始めたネコに思わず笑いそうになった。今ザラキにはネコの声が聞こえないはずだが、うまく転がされてるな。

山を登る。ひたすら登る。暗い中険しい山を登るのは正直怖いし、息が上がる。それでも足はまだ震えないのはカリアとの地獄の鬼ごっこでひたすら逃げ回って鍛えられたおかげか。

(あと、ちゃんと夜目が利くのは便利だよな。これ無かったら怖すぎて一歩も動けなかった。それにしても…)

前を行くザラキはすいすいと軽く登っていく。
夜目が利くのか、それとも土地勘の違いか。

足取りは軽く、息が切れる様子もない。

「ライハ」

「はい?」

「魔力はどうやって作られていると思う?」

「………」

ちょっと考えたこともなかった。

「分からないです」

そういえば魔力について知っていることは少ない。オレの知っている事は、この世界の生き物は魔力が命の源で、形すらも魔力が形作っている。魔法を使う人は生きる為以上の魔力を保有し操っている。属性があって、それは国や地域によって違う。魔力を溜め込む石や魔宝石が存在する。それくらいだ。

どうやって作られているなんて考えたこともなかった。そもそも、なんで人によって属性が違うのも分からない。

そういえばルツァの体内から魔宝石の原石を取り出していたけど、もしかしてそれが関係しているとか。

「………、体内に魔力を作る石…みたいなものがあるとか…?」

オレの答えにザラキが振り返りニッと笑う。

「魔宝石の事か?残念、あれは体内の魔力が結晶化したモノだ。確かに体内に結晶を作る生き物は魔力が枯渇するとそれを魔力に戻して使う。いい線いってたぞ」

「うーん…」

「じゃあ助言代わりの面白い話をしよう。今は全ての生き物に宿る魔力なんだがな、実は大昔は魔力は存在していなかったんだ」

え。
ザラキを見る。魔力が無かったなんて信じられない。じゃあなんで今は魔力が一般的になって魔法が多様化したんだ。

「それが突然大地が割れて黒い煙が世界を覆った。そして恐ろしい病が流行った」






その病の名を、魔力病という。







「今で言う魔力中毒だな。魔力の大量接種、または魔法を多重に掛けられて起こる発作だ。魔力耐性が低い人間にとっては魔力というのは劇薬、いや、毒だからな。体の中で魔力が暴走して、死ぬらしい。これは大昔の話だけど、凄い数の人が魔力病で死んだとか」

オレここに来たとき頻繁に魔力中毒起こしてたけど、洒落にならないやつだったんですね。

思わず遠い目。

「第一次人魔大戦の時だ。初代勇者が現れるまで、絶望の中にいた。なんせ魔力病で生き物がバタバタ死ぬわ、わけの分からん生物が地面の裂け目から這い出てきて襲ってくるわ。大変だったらしい。暇があったら魔法起源書読んでみろ、勇者書記並みに面白いから」

目をキラキラさせてザラキが薦めてくる。読んでみたいけど暇あるのかなぁ。

「話が逸れた。それでも、生き物はタフでな。魔力に耐性を持つものが現れた。それも大量に。その中で不思議な力を使うものがいて、魔法を作り出したと言われている。そして、今、魔力はなくてはならない存在になった。生きるためにも、な。
さて、この話を聞いてもう一度考えてみろ」

考えた。

魔力が無かったこの世界で、初めて魔力が現れたのは第一次人魔大戦時。地面の裂け目。黒い煙。魔力病。魔力耐性。毒、今は生きる為に無くてはならないもの。



オレはそこで、何故か学校での風景を思い出した。あれは何の授業だったか、確か理科か、生物学のどちらかだった気がする。
思い出した風景はとある授業だった。

黒板に書かれたのは、原始の地球と酸素。

あれは確か、地球には元々酸素が存在しなかったとか。


「!」

「何か思い付いたような顔だな。なんだ?言ってみろ」

「魔力は空気を漂う物質みたいなもので、生物はそれを呼吸で得ている…」

ザラキが一瞬驚き、みるみるうちに笑顔になった。

「正解だ!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

無能認定され王宮から追放された俺、実は竜の言葉が話せたのでSSS級最凶竜種に懐かれ、気がついたら【竜人王】になってました。

霞杏檎
ファンタジー
田舎の村から上京して王宮兵士となって1年半…… まだまだ新人だったレイクは自身がスキルもろくに発動できない『無能力者』だと周りから虐げられる日々を送っていた。 そんなある日、『スキルが発動しない無能はこの王宮から出て行け』と自身が働いていたイブニクル王国の王宮から解雇・追放されてしまった。 そして挙げ句の果てには、道中の森でゴブリンに襲われる程の不遇様。 だが、レイクの不運はまだ続く……なんと世界を破壊する力を持つ最強の竜種"破滅古竜"と出会ってしまったのである!! しかし、絶体絶命の状況下で不意に出た言葉がレイクの運命を大きく変えた。 ーーそれは《竜族語》 レイクが竜族語を話せると知った破滅古竜はレイクと友達になりたいと諭され、友達の印としてレイクに自身の持つ魔力とスキルを与える代わりにレイクの心臓を奪ってしまう。 こうしてレイクは"ヴィルヘリア"と名乗り美少女の姿へと変えた破滅古竜の眷属となったが、与えられた膨大なスキルの量に力を使いこなせずにいた。 それを見たヴィルヘリアは格好がつかないと自身が師匠代わりとなり、旅をしながらレイクを鍛え上げること決める。 一方で、破滅古竜の悪知恵に引っかかったイブニクル王国では国存続の危機が迫り始めていた…… これは"無能"と虐げられた主人公レイクと最強竜種ヴィルヘリアの師弟コンビによる竜種を統べ、レイクが『竜人王』になるまでを描いた物語である。 ※30話程で完結します。

処理中です...