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第二章 動き出す
魔力の歴史
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「え、ライハ一緒に行けんば?」
「そうなんだよ、すまんね」
アウソとキリコにザラキとの修行があり、皆が王都往復の間ここで留守番との旨を伝えたらアウソが非常に残念そうな顔をした。本当にごめん、せっかく言葉少し覚えたのにな。でもオレも死にたくないんだよ。
一応さらっとカリアがなんでオレだけ留守番修行なのかを話してくれた。二人はじゃあ仕方無いと納得してくれたけど、申し訳なく思う。
楽しみだっただけ、余計に。
見たかった。美女とか、街並みとか。あ、あと美味いもの。
「お土産買ってくるから、修行 頑張れよ」
「うん、頑張る」
「帰ってきたとき死んでないでよ。吃驚するから」
「キリコさん縁起でもないこと言わんでください。洒落にならん」
「といっても出発するのは明日の朝よね。午前虎梟飛ばしたから、帰ってくるのは夜だと思うし」
ルキオは年中風が強い。しかも高度や時間によって風の向きがバラバラで、地元の人間じゃないと天候が読みにくい。縄張りにしている龍(風に乗る事があるらしい)がわざと風を変えているのではないかとの説があるが、確かに空を往く鳥は上手く風に乗って猛スピードで飛んでいく。
その為、大型でスピード特化の虎梟は1日で王都を往復することができるのだ。まぁ、王都がここから近いってのも理由だけど。
「ライハは夜から修行だからね。ザラキは早めに始めて完成させたいんよ」
「そういえばザラキさんは?」
「準備中。久しぶりに張り切ってるよ」
「魔法使いの癖に肉弾戦も強いわよね、どっち方向から鍛えるのかしら」
「オレとしては死なないようにしてくれたらもう何でもいいです」
リアルな死亡or生き残るだから文句言える立場じゃない。
「ライハならできるさ。なんだっけ、あれよ。アイキャンドゥーイットゥ!」
「You can do it.な。ありがとう」
夜に備えて少し昼寝。そして完全に日が暮れ目を覚ますと皆で夕飯をとる。
そしてザラキに手渡された荷物を背負い出発した。
『ねーむーいー』
「ちゃんと寝ただろう。我慢しろ」
『んーー』
「ネコよ、上手くいけばおいしーい鶏肉が食べれるぞ」
『よし、ネコがんばる』
急にしゃんと歩き始めたネコに思わず笑いそうになった。今ザラキにはネコの声が聞こえないはずだが、うまく転がされてるな。
山を登る。ひたすら登る。暗い中険しい山を登るのは正直怖いし、息が上がる。それでも足はまだ震えないのはカリアとの地獄の鬼ごっこでひたすら逃げ回って鍛えられたおかげか。
(あと、ちゃんと夜目が利くのは便利だよな。これ無かったら怖すぎて一歩も動けなかった。それにしても…)
前を行くザラキはすいすいと軽く登っていく。
夜目が利くのか、それとも土地勘の違いか。
足取りは軽く、息が切れる様子もない。
「ライハ」
「はい?」
「魔力はどうやって作られていると思う?」
「………」
ちょっと考えたこともなかった。
「分からないです」
そういえば魔力について知っていることは少ない。オレの知っている事は、この世界の生き物は魔力が命の源で、形すらも魔力が形作っている。魔法を使う人は生きる為以上の魔力を保有し操っている。属性があって、それは国や地域によって違う。魔力を溜め込む石や魔宝石が存在する。それくらいだ。
どうやって作られているなんて考えたこともなかった。そもそも、なんで人によって属性が違うのも分からない。
そういえばルツァの体内から魔宝石の原石を取り出していたけど、もしかしてそれが関係しているとか。
「………、体内に魔力を作る石…みたいなものがあるとか…?」
オレの答えにザラキが振り返りニッと笑う。
「魔宝石の事か?残念、あれは体内の魔力が結晶化したモノだ。確かに体内に結晶を作る生き物は魔力が枯渇するとそれを魔力に戻して使う。いい線いってたぞ」
「うーん…」
「じゃあ助言代わりの面白い話をしよう。今は全ての生き物に宿る魔力なんだがな、実は大昔は魔力は存在していなかったんだ」
え。
ザラキを見る。魔力が無かったなんて信じられない。じゃあなんで今は魔力が一般的になって魔法が多様化したんだ。
「それが突然大地が割れて黒い煙が世界を覆った。そして恐ろしい病が流行った」
その病の名を、魔力病という。
「今で言う魔力中毒だな。魔力の大量接種、または魔法を多重に掛けられて起こる発作だ。魔力耐性が低い人間にとっては魔力というのは劇薬、いや、毒だからな。体の中で魔力が暴走して、死ぬらしい。これは大昔の話だけど、凄い数の人が魔力病で死んだとか」
オレここに来たとき頻繁に魔力中毒起こしてたけど、洒落にならないやつだったんですね。
思わず遠い目。
「第一次人魔大戦の時だ。初代勇者が現れるまで、絶望の中にいた。なんせ魔力病で生き物がバタバタ死ぬわ、わけの分からん生物が地面の裂け目から這い出てきて襲ってくるわ。大変だったらしい。暇があったら魔法起源書読んでみろ、勇者書記並みに面白いから」
目をキラキラさせてザラキが薦めてくる。読んでみたいけど暇あるのかなぁ。
「話が逸れた。それでも、生き物はタフでな。魔力に耐性を持つものが現れた。それも大量に。その中で不思議な力を使うものがいて、魔法を作り出したと言われている。そして、今、魔力はなくてはならない存在になった。生きるためにも、な。
さて、この話を聞いてもう一度考えてみろ」
考えた。
魔力が無かったこの世界で、初めて魔力が現れたのは第一次人魔大戦時。地面の裂け目。黒い煙。魔力病。魔力耐性。毒、今は生きる為に無くてはならないもの。
オレはそこで、何故か学校での風景を思い出した。あれは何の授業だったか、確か理科か、生物学のどちらかだった気がする。
思い出した風景はとある授業だった。
黒板に書かれたのは、原始の地球と酸素。
あれは確か、地球には元々酸素が存在しなかったとか。
「!」
「何か思い付いたような顔だな。なんだ?言ってみろ」
「魔力は空気を漂う物質みたいなもので、生物はそれを呼吸で得ている…」
ザラキが一瞬驚き、みるみるうちに笑顔になった。
「正解だ!」
「そうなんだよ、すまんね」
アウソとキリコにザラキとの修行があり、皆が王都往復の間ここで留守番との旨を伝えたらアウソが非常に残念そうな顔をした。本当にごめん、せっかく言葉少し覚えたのにな。でもオレも死にたくないんだよ。
一応さらっとカリアがなんでオレだけ留守番修行なのかを話してくれた。二人はじゃあ仕方無いと納得してくれたけど、申し訳なく思う。
楽しみだっただけ、余計に。
見たかった。美女とか、街並みとか。あ、あと美味いもの。
「お土産買ってくるから、修行 頑張れよ」
「うん、頑張る」
「帰ってきたとき死んでないでよ。吃驚するから」
「キリコさん縁起でもないこと言わんでください。洒落にならん」
「といっても出発するのは明日の朝よね。午前虎梟飛ばしたから、帰ってくるのは夜だと思うし」
ルキオは年中風が強い。しかも高度や時間によって風の向きがバラバラで、地元の人間じゃないと天候が読みにくい。縄張りにしている龍(風に乗る事があるらしい)がわざと風を変えているのではないかとの説があるが、確かに空を往く鳥は上手く風に乗って猛スピードで飛んでいく。
その為、大型でスピード特化の虎梟は1日で王都を往復することができるのだ。まぁ、王都がここから近いってのも理由だけど。
「ライハは夜から修行だからね。ザラキは早めに始めて完成させたいんよ」
「そういえばザラキさんは?」
「準備中。久しぶりに張り切ってるよ」
「魔法使いの癖に肉弾戦も強いわよね、どっち方向から鍛えるのかしら」
「オレとしては死なないようにしてくれたらもう何でもいいです」
リアルな死亡or生き残るだから文句言える立場じゃない。
「ライハならできるさ。なんだっけ、あれよ。アイキャンドゥーイットゥ!」
「You can do it.な。ありがとう」
夜に備えて少し昼寝。そして完全に日が暮れ目を覚ますと皆で夕飯をとる。
そしてザラキに手渡された荷物を背負い出発した。
『ねーむーいー』
「ちゃんと寝ただろう。我慢しろ」
『んーー』
「ネコよ、上手くいけばおいしーい鶏肉が食べれるぞ」
『よし、ネコがんばる』
急にしゃんと歩き始めたネコに思わず笑いそうになった。今ザラキにはネコの声が聞こえないはずだが、うまく転がされてるな。
山を登る。ひたすら登る。暗い中険しい山を登るのは正直怖いし、息が上がる。それでも足はまだ震えないのはカリアとの地獄の鬼ごっこでひたすら逃げ回って鍛えられたおかげか。
(あと、ちゃんと夜目が利くのは便利だよな。これ無かったら怖すぎて一歩も動けなかった。それにしても…)
前を行くザラキはすいすいと軽く登っていく。
夜目が利くのか、それとも土地勘の違いか。
足取りは軽く、息が切れる様子もない。
「ライハ」
「はい?」
「魔力はどうやって作られていると思う?」
「………」
ちょっと考えたこともなかった。
「分からないです」
そういえば魔力について知っていることは少ない。オレの知っている事は、この世界の生き物は魔力が命の源で、形すらも魔力が形作っている。魔法を使う人は生きる為以上の魔力を保有し操っている。属性があって、それは国や地域によって違う。魔力を溜め込む石や魔宝石が存在する。それくらいだ。
どうやって作られているなんて考えたこともなかった。そもそも、なんで人によって属性が違うのも分からない。
そういえばルツァの体内から魔宝石の原石を取り出していたけど、もしかしてそれが関係しているとか。
「………、体内に魔力を作る石…みたいなものがあるとか…?」
オレの答えにザラキが振り返りニッと笑う。
「魔宝石の事か?残念、あれは体内の魔力が結晶化したモノだ。確かに体内に結晶を作る生き物は魔力が枯渇するとそれを魔力に戻して使う。いい線いってたぞ」
「うーん…」
「じゃあ助言代わりの面白い話をしよう。今は全ての生き物に宿る魔力なんだがな、実は大昔は魔力は存在していなかったんだ」
え。
ザラキを見る。魔力が無かったなんて信じられない。じゃあなんで今は魔力が一般的になって魔法が多様化したんだ。
「それが突然大地が割れて黒い煙が世界を覆った。そして恐ろしい病が流行った」
その病の名を、魔力病という。
「今で言う魔力中毒だな。魔力の大量接種、または魔法を多重に掛けられて起こる発作だ。魔力耐性が低い人間にとっては魔力というのは劇薬、いや、毒だからな。体の中で魔力が暴走して、死ぬらしい。これは大昔の話だけど、凄い数の人が魔力病で死んだとか」
オレここに来たとき頻繁に魔力中毒起こしてたけど、洒落にならないやつだったんですね。
思わず遠い目。
「第一次人魔大戦の時だ。初代勇者が現れるまで、絶望の中にいた。なんせ魔力病で生き物がバタバタ死ぬわ、わけの分からん生物が地面の裂け目から這い出てきて襲ってくるわ。大変だったらしい。暇があったら魔法起源書読んでみろ、勇者書記並みに面白いから」
目をキラキラさせてザラキが薦めてくる。読んでみたいけど暇あるのかなぁ。
「話が逸れた。それでも、生き物はタフでな。魔力に耐性を持つものが現れた。それも大量に。その中で不思議な力を使うものがいて、魔法を作り出したと言われている。そして、今、魔力はなくてはならない存在になった。生きるためにも、な。
さて、この話を聞いてもう一度考えてみろ」
考えた。
魔力が無かったこの世界で、初めて魔力が現れたのは第一次人魔大戦時。地面の裂け目。黒い煙。魔力病。魔力耐性。毒、今は生きる為に無くてはならないもの。
オレはそこで、何故か学校での風景を思い出した。あれは何の授業だったか、確か理科か、生物学のどちらかだった気がする。
思い出した風景はとある授業だった。
黒板に書かれたのは、原始の地球と酸素。
あれは確か、地球には元々酸素が存在しなかったとか。
「!」
「何か思い付いたような顔だな。なんだ?言ってみろ」
「魔力は空気を漂う物質みたいなもので、生物はそれを呼吸で得ている…」
ザラキが一瞬驚き、みるみるうちに笑顔になった。
「正解だ!」
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