うるさい彼女と静かな僕

Kaito

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#23

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#23

翌朝、学校に行く前。

「雪奈....」

「結花!」

「えっと..その...あの..」

「この傷のこと?」

雪奈は頬の絆創膏に触れる

「ごめんなさい」

結花は深く頭を下げた

「顔..上げて」

「私は雪奈を傷つけた、だからもう雪奈とは一緒にいれないよ....」

「私はいたいな、結花と一緒に」

「でも.....」

「この傷は...転んじゃってね..てへ」

雪奈は少し下を出して笑った

「そういうことにしよ」

雪奈の言葉で二人は見つめ合った

「そうすれば、また笑えるでしょ」

じっと雪奈を見つめる結花の瞳は今にも溢れそうな程に潤んでいた

(ここで泣いたら、今までと同じだ)

結花は息を呑んで口を開いた

「自信ないんだ、私」

その言葉は自分でも驚くくらい詰まることなく発せられた

「私も同じだよ」
「昔から自分のことが大嫌いだった。でもね音楽はずっと好きだったの、こんな自分でも肯定してくれる音楽が」

「私も...」

小さく呟いた

「もっと聞かせて、結花が音楽を好きになった理由」

「前は独りぼっちで自分のことが大っ嫌いで死にたかった、でも周りにそう思われるのが嫌でいつも音楽を聴いてた」

「うんうん」

雪奈は結花の話を嫌な顔一つせずに聞いてくれた

「高校に入って数日経った頃に自分とよく似た人を見つけたの」

「和希のこと?」

「うん、ずっと意識しちゃって...そしたら、初めて死のうとした時に偶然会ってそれで...好きって思った」

「良いな」

「え..?」

「私にはそういう人いないからさ」

「なんか..ごめん」

「ううん、それよりもっと聞かせて」

「付き合ってからも突然底知れぬ不安に襲われるの、でもその度に頭の中に和希が出てきて助けてくれるから、乗り越えてこれた。すっごく大切に思ってる和希も雪奈も他のバンドメンバーも家族も..」

「自分のことは?」

その言葉でくびを絞められたかのように何も言えなくなった。

上手く声が出せなくても何とか気持ちを伝えようと口を開く

「ゆっくりでいいよ」

雪奈はずっと待ってくれた

「......好きじゃないかな」

「どうしたら好きになれそう?」

「自分でも分からないの、自分のどこが嫌いでどうなりたいのか」

「じゃあ分かるまでは死ねないね」

「どういうこと?」

「自分がなんなのか分からないまま死ぬなんて嫌じゃない?」

結花は何も言えなかった。

「結花が言葉に詰まる時は"本当はそう思ってるのに言えない時"って私知ってるから」

「どうして..?!」

「これ、偶然見つけちゃって..てへへ」

雪奈はスマホを開いてTwitterの画面を見せる、そこには結花が日記アプリに書いていた事が全て投稿されていた

「これ最近流行ってる日記アプリでしょ、最初の登録の時にTwitter連携で登録すると日記に書いた事が自動で投稿されるようになってるんだよ」

確かに結花はTwitter連携で登録していた。アカウントは好きなアーティストを観るためのもので鍵をかけていなかった

「止めて!恥ずかしい!」

結花が手を伸ばすと同時に雪奈は手を高く上げる

「顔赤くして可愛いっ!」

うんーっと手を伸ばす結花を見て言った

「もっと見せて、その可愛い顔」

雪奈はそっとスマホを差し出すと、手早く受け取って自分の投稿を確認している

一通り見終えると雪奈にスマホを返して、じーっと雪奈の顔を見つめた

「私の顔に何かついてる?」

「ううん、見せてあげるだけ」
「私の可愛い顔」

「そっか!ありがと!」

「これからもずっと....一緒にいてくれる?」

「やっぱり!一緒にいたいんじゃん!」

「てへへ」

雪奈の真似をするように笑って誤魔化した。

「もー!好き!」

雪奈は結花を抱きしめた

「良いのかな....どうせまた...」

「そんなこと考えなくて良いんだよ、だって辛くなるだけだから」

「うん!」

雪奈に顔を押しつけて言った

「ありがとね...本当に感謝してる」

「当たり前でしょ、大好きなんだから」


二人は遅刻ギリギリで教室に入った。


今日は文化祭二日目、各々準備をしていると

「おはよう!和希!」

結花は元気いっぱいに和希に話しかける

「おはよう、結花」

「昨日はありがとね」

「気にしなくて良いよ、それより今日は僕の初舞台だ!」

「そうだね!楽しも!」

文化祭二日目、両日軽音部の発表はあるが一年生の出番は二日目だけだ。しかしこの学校の軽音部は本格的で一年生といえどクオリティの高いバンドも多い。そのため二日目は一年生中心のステージになる。

和希以外のバンドメンバーは前にもいくつかライブをしてきているが、最近入ったばかりの和希にとっては初めてのライブだ。

「緊張してる?」

「してる」

「私もなんだよね」

「ボーカルだし一番緊張する役目だよな」

「もともと私人前に出るような人じゃないしね」

「まあ僕もどちらかと言うとそういうのは苦手な方だし」

「やっぱり似てるね、私たち」

「そうだな」


「結花ー!和希ー!」

勢いよくドアを開けて雪奈が入って来た

「今日も仲良いねー」

雪奈は二人を見つけるとそう言いながら近づいてくる

「今日はライブだよ!」

テンション高めな雪奈は二人を見て嬉しそうに笑う

「元気そうで良かった!」

誰に向かって言ったのかよく分からなかった、でもその言葉にはいろんな感情が含まれている気がした。


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