うるさい彼女と静かな僕

Kaito

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#25

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#25

「どっか行きたいとこある?」

パンフレットを広げながら雪奈が言う

「私ここ行きたい!」

結花が指差したのは同じ一年生のクラスがやっているお化け屋敷だった

「やっぱ文化祭といえばお化け屋敷だよな」

優斗が言った

「私もさんせーい!」

夜羽も喜んだ

「私も行きたいなー」

雪奈も賛成だった

「じゃあ満場一致だ、お化け屋敷行くか」

「おー!」

結花は嬉しそうにはしゃいでいる。


「きゃっ!」

入るやいなやすぐにお化けが出てきて結花は声を出して怖がっている。

お化け屋敷はかなり本格的で思わず後退りしてしまう程だ。

結花は和希の腕にしがみついた

「良いなー結花は彼氏さんが守ってくれるもんねー」

雪奈は茶化すように言った

夜羽と優斗はそんなことをする余裕はない程に怖がっていた

「きゃっ!」

今度は夜羽の声が聞こえてきた

みんなビクビクしながら進んでいる

結花は僕の腕にずっとしがみつきながら歩いた。
夜羽は優斗の腕を掴んでいた。

「なんかあの二人お似合いだね」

雪奈が僕と結花に言った

僕は少し先を歩く二人に視線を移した

暗くて良く見えないが、確かにお似合いだ。

「付き合っちゃえば良いのに」

不意に雪奈がつぶやいた言葉に何故か足を止めてしまった。

「どうしたの?」

結花が心配そうな顔で見つめる

「なんでもない」

それだけ言って再び歩き出した。

お化け屋敷を抜けると、たくさんの人が行き交う廊下に出る。人の波に飲み込まれないように僕は結花の手を握った。他の三人を見失わないように目で追うと、雪奈は夜羽の夜羽は優斗の手を握っていた。

「おーい!こっち!こっち!」

雪奈が手を繋いでいない方の腕を大きく上げた

「今行くー!」

こっちは結花が手を振り返した。


夜羽がお腹が空いたとのことで、なにか食べ物を食べることになった

「私あれ食べたい!」

夜羽が指を指したのはチーズハットグだった

「良いね、食べよ!」

夜羽と雪奈が早足で列に並ぶ、他のみんなも取り残されないようにと追いかけて列にならんだ。

教室内に設けられたイートインコーナーで机を囲むようにして座って食べてることにした。

「おいし~!」

「良かったね、夜羽」

雪奈が微笑んだ。

それに夜羽も微笑んで

「なんか楽しいな」

「急にどうしたの?」

雪奈はきょとんとした顔で夜羽を見つめる

「なんでもなーい!」

夜羽は悪戯に笑って話を変えた。

楽しい。そう思える時間だった。思い返せばこれも全部結花のおかげだ、あの時結花が軽音部に誘ってくれなかったらきっと今も独りだった。正直最初はあんまり乗り気じゃなかった、でも今は本当に良かったと思っている自分がいる。

「おーいおーい」

結花の言葉で我に返ると心配そうに自分の顔を見つめる結花と目が合い、思わず手を伸ばして結花の頭を撫でた

「ふぁっ!」

突然の行動に声を出して驚く

「きゅんきゅんだね~」

雪奈が少し茶化して笑うと結花は頬を赤らめて膨らませた。

「もー和希、付き合ってなかったらセクハラなんだからっ!」

必死な照れ隠しも通じず

「本当は嬉しいんでしょ」

夜羽の言葉に図星を指された結花は更に頬を赤くした。

「もー!早く食べて次の所行くよ!」

無理矢理話を変えて誤魔化す。それにみんなは

「はいはい」

と言って合わせた。

「ここ行きたい!」

みんなが食べ終わった頃、雪奈が言う。

それは二年生がやっているカジノだった。カジノといっても実際はトランプゲームをして結果に応じてお菓子が貰えるものだ。

「雪奈そういうの好きだよね」

結花が言った

「僕ババ抜きなら自信あるよ」

優斗は得意げな顔をする

「じゃあ行こっか」

夜羽がパチンと手を叩いた。


「どれだ~」

雪奈はじーっと相手の手札を見つめる。その相手は先程ババ抜きが得意だと豪語していた優斗だ、さらに今プレイしているのは得意分野のババ抜きだ。

二人の手札は雪奈があと一枚。優斗があと二枚。この一手で勝負がつくという見どころだった

「んー...もうこれっ!」

運任せに取ったカードを見ると

「えっ!?ハートの7」

「負けちゃった..へへ」

雪奈の手札にはダイヤの7と今引いたハートと7が揃って、優斗にはジョーカーが残った。

「えっへん!!!」

優斗に勝った雪奈はそう言って自慢げに一足早くゲームを終えた和希と結花と夜羽の所へやってきた。

その後は演劇部の劇を見たり吹奏楽部の演奏を聞いたりした。

「そろそろ戻らないとだね」

結花が言ってスマホを開くと

14:20

と表示されていた。出番は15時からだが集合は30分前の14時30分ということになっている

みんな少し駆け足で集合場所に向かう。

待機時間は緊張した雰囲気が流れる。というのも午前の演奏と比べて圧倒的に人が増えていた。

他の部員の子に訊くと結花達の演奏が話題になり、午後の演奏を見ようとたくさんの人が集まったそうだ。

「みんなの期待を超えていこう」

結花が手を差し出して言うと

「もちろん」
「最高のステージにしよう」
「最後まで笑って演奏すること」
「僕達も思いっきり楽しむこと」

一人一人がそれぞれの気持ちを言いながら手を重ねていく

「せーっの!」

「おー!」
「おー!」
「おー!」
「おー!」
「おー!」

みんなで気合いを入れた。

ステージ袖で待機していると出番がきて拍手喝采の中ステージに上がる。

きっとこの緊張も、微かに感じる指先の震えも音が響けば全てが楽しさに変わる。そう確信して客席の方を見つめる

「3・2・1!」

思っていた通りだ、さっきまでの自分が信じられない程に楽しくて仕方ない、歓声も午前の演奏より増えて、より感情が高まった。

一曲目が終わった時

「みんな生きていれば辛い事とか悲しい事とかたくさんあって、生きるのを辞めてしまいたくなることがあると思う。でも生きて、死のうとなんてしないで。そうすれば絶対楽しくて幸せな時がやってくるから!私は今その時を生きてる。でもこれは私だけの力じゃなくてここにいるバンドメンバー、大切な友達、大好きな恋人。みんなのおかげで私はここに立ってる。だからみんなもしんどい時は逃げても良い、投げ出して良い。きっとその先に手を差し出してくれる人がいるから。そしてその差し出された手をぎゅっと握って離さないで。そうすればまた笑えるから」

予定になかったMCにバンドメンバーも戸惑った、でも嬉しかった。

「結花...こっちこそありがとな」

和希は誰にも聞こえない小さな声で呟いた。

ステージ立つ結花は輝いている。楽しそうで、幸せそうに歌を歌う。そんな姿が愛おしい。

結花の生きる理由はここにあるんだと、そう感じた。




---完---



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