禍の島と時の羅針盤

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1章

第5話 アトラの機転

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「おいおい、なんだ? この状況は?コステルが何でここに?」 
と、戸惑うダルクをしり目に、アトラはルリィに叫んだ。
「逃げるぞ、ルリィ」
「うん」
「逃がす訳には行きませんよ」 
コステルの親衛隊が剣を構え、ルリィ達に襲い掛かろうとしている。
「おいおい、聞いてないぞ。ていうか、俺巻き込まれてね?」 
 ダルクはあわてて後ろに下がると、アトラを見た。
「おい、ダルクいいから話しを聞け。今からコステルから逃げる算段を話すぞ」
「おやおや、鬼ごっこは終わりですか?」 
コステロがにやにやしながら言った。コステルとその親衛隊達がジリジリとルリィ達を追い詰めていく。
 アトラは敵を目で追いながら、すばやく二人に声をかけた。
「合図したらルリィは右へ、ダルクは左に逃げるんだ。ルリィ、わかってるな、いつものイチジクの木だぞ」
「いけませんね、実にいけない、大人をからかうのは」 
 コステロが足を踏み出すやいなや、アトラが叫んだ。
「いまだ!」
合図と共にルリィ達は3方向に別れた。
「おや?3つに分かれましたか。私達も手分けして追いましょう」
「コステル、お前が欲しがっている物はこっちだ!」
そう言うと、アトラは森の中に逃げ込んだ。

「くそ! 鎧を着けていては不利ですね。だからと言ってそう簡単に逃げられると思わないことですね。
ひとつ教えておきましょう。あなたが羅針盤を持っていない事は最初からわかっています。あのお嬢さんを追った者はただの部下では無いのですよ」
「なに! どういう意味だ!」
「一つだけ教えてあげましょう、あなたはもうルリィさんと会うことは無いと」
そう言うとコステルは不敵な笑みを浮かべた。
「嵌められたのはこっちってことか。信じてるぞ、ルリィ」
ルリィの無事を祈りながら、アトラは約束の場所に向かった。
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