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2章
1話 レクスとサーシャの旅立ち
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砂漠の国アヴァロン。
その歴史は5大英雄の一人ローグウェイがその礎を築いたと伝えられている。だが、現国王オルガは家宝の秩序の指輪を狙う何者かによって、その命の危機にあった。
オルガは王というよりは前線で戦う戦士を思わせる風貌をしている。指輪を狙う者のことを、いち早く察知した王オルガは、その息子である王子レクスを自室に呼び出し、こう伝えた。
「この王家に伝わる宝、秩序の指輪を託す。今は強い力は無いが、騎士ラルフが必ずお前を助けに戻るはずだ。今はお前だけでも逃げて欲しい」
レクスもオルガに似てたくましい若者だった。
「どうして父上は戦わないのですか? それに父上には騎士達もついているではないですか?」
「せめてラルフが帰ってきていれば、あるいは勝てるかもしれない。だが、既に私が送った騎士の多くは敵に返り討ちにあって殺されている。その中には王の盾とも呼ばれていたシルドも含まれている。
奴らの狙いはこの指輪だ」
そう言うオルガの顔には苦悩があらわれていた。
「シルドほどの方まで! ですが、私は父上を見捨てて逃げる事などできません。
それに妹のサーシャも黙っていないです!」
「レクス、今はこの指輪と王家の血筋を残す事が重要なのだ。これは私からの最後の頼みだ。必ず生きて指輪とサーシャを守り抜いてくれ」
オルガの意志の硬さにレクスも決意を新たにし、自室に戻り素早く旅の支度をすると、サーシャの部屋のドアを叩いた。
「お兄様、こんな時間に、それに顔色が悪いわ」
ドアからあらわれたのはまだ幼さの残る、しかし意志の強そうな女の子だった。
「サーシャ聞いてくれ! 今すぐ支度をして城を出るぞ」
「急にそんなこと言われても」
とまどうサーシャに兄レクスは、諭すように言った。
「詳しい話は後でするが、これは父上からの頼みなんだ。悔しいが今の私たちには父上を助ける力は無い。
それに、この指輪を私たちは命を懸けて守らなければいけないんだ!」
レクサは父から託された指輪を妹に示した。指輪には複雑な装飾が施され、不思議な輝きを放っていた。
「それは秩序の指輪!? よくわからないけれど、緊急事態だってことは飲み込めたわ」
そう言うとサーシャも素早く城を出る準備をすませた。
2人が城を出る抜け道に向かおうとすると、背後から一人の侍女が声をかけてきた。ソフィアという名の年老いた侍女だった。
ソフィアは白髪で凛とした立ち振る舞いの気丈な老女で、幼い頃からレクス兄弟の世話係をしていた。
「レクスお坊ちゃま、サーシャお嬢様。こんな日が来ることもあると思っておりました。
私はついて行くことは出来ませんが、せめて別れの言葉を申し上げたく存じます」
ソフィアは今にも泣きそうな顔で二人を見つめた。
「婆や!」
抱きつくサーシャの目には涙が浮かんでいた。
「私、必ず生きて戻るから!」
そして、2人は城を後にした。レクサの手には秩序の指輪が握りしめられていた。
その歴史は5大英雄の一人ローグウェイがその礎を築いたと伝えられている。だが、現国王オルガは家宝の秩序の指輪を狙う何者かによって、その命の危機にあった。
オルガは王というよりは前線で戦う戦士を思わせる風貌をしている。指輪を狙う者のことを、いち早く察知した王オルガは、その息子である王子レクスを自室に呼び出し、こう伝えた。
「この王家に伝わる宝、秩序の指輪を託す。今は強い力は無いが、騎士ラルフが必ずお前を助けに戻るはずだ。今はお前だけでも逃げて欲しい」
レクスもオルガに似てたくましい若者だった。
「どうして父上は戦わないのですか? それに父上には騎士達もついているではないですか?」
「せめてラルフが帰ってきていれば、あるいは勝てるかもしれない。だが、既に私が送った騎士の多くは敵に返り討ちにあって殺されている。その中には王の盾とも呼ばれていたシルドも含まれている。
奴らの狙いはこの指輪だ」
そう言うオルガの顔には苦悩があらわれていた。
「シルドほどの方まで! ですが、私は父上を見捨てて逃げる事などできません。
それに妹のサーシャも黙っていないです!」
「レクス、今はこの指輪と王家の血筋を残す事が重要なのだ。これは私からの最後の頼みだ。必ず生きて指輪とサーシャを守り抜いてくれ」
オルガの意志の硬さにレクスも決意を新たにし、自室に戻り素早く旅の支度をすると、サーシャの部屋のドアを叩いた。
「お兄様、こんな時間に、それに顔色が悪いわ」
ドアからあらわれたのはまだ幼さの残る、しかし意志の強そうな女の子だった。
「サーシャ聞いてくれ! 今すぐ支度をして城を出るぞ」
「急にそんなこと言われても」
とまどうサーシャに兄レクスは、諭すように言った。
「詳しい話は後でするが、これは父上からの頼みなんだ。悔しいが今の私たちには父上を助ける力は無い。
それに、この指輪を私たちは命を懸けて守らなければいけないんだ!」
レクサは父から託された指輪を妹に示した。指輪には複雑な装飾が施され、不思議な輝きを放っていた。
「それは秩序の指輪!? よくわからないけれど、緊急事態だってことは飲み込めたわ」
そう言うとサーシャも素早く城を出る準備をすませた。
2人が城を出る抜け道に向かおうとすると、背後から一人の侍女が声をかけてきた。ソフィアという名の年老いた侍女だった。
ソフィアは白髪で凛とした立ち振る舞いの気丈な老女で、幼い頃からレクス兄弟の世話係をしていた。
「レクスお坊ちゃま、サーシャお嬢様。こんな日が来ることもあると思っておりました。
私はついて行くことは出来ませんが、せめて別れの言葉を申し上げたく存じます」
ソフィアは今にも泣きそうな顔で二人を見つめた。
「婆や!」
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「私、必ず生きて戻るから!」
そして、2人は城を後にした。レクサの手には秩序の指輪が握りしめられていた。
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