禍の島と時の羅針盤

よぶ

文字の大きさ
10 / 24
2章

1話 レクスとサーシャの旅立ち

しおりを挟む
砂漠の国アヴァロン。
その歴史は5大英雄の一人ローグウェイがその礎を築いたと伝えられている。だが、現国王オルガは家宝の秩序の指輪を狙う何者かによって、その命の危機にあった。
オルガは王というよりは前線で戦う戦士を思わせる風貌をしている。指輪を狙う者のことを、いち早く察知した王オルガは、その息子である王子レクスを自室に呼び出し、こう伝えた。
「この王家に伝わる宝、秩序の指輪を託す。今は強い力は無いが、騎士ラルフが必ずお前を助けに戻るはずだ。今はお前だけでも逃げて欲しい」
レクスもオルガに似てたくましい若者だった。
「どうして父上は戦わないのですか? それに父上には騎士達もついているではないですか?」
「せめてラルフが帰ってきていれば、あるいは勝てるかもしれない。だが、既に私が送った騎士の多くは敵に返り討ちにあって殺されている。その中には王の盾とも呼ばれていたシルドも含まれている。
奴らの狙いはこの指輪だ」
そう言うオルガの顔には苦悩があらわれていた。
「シルドほどの方まで! ですが、私は父上を見捨てて逃げる事などできません。
それに妹のサーシャも黙っていないです!」
「レクス、今はこの指輪と王家の血筋を残す事が重要なのだ。これは私からの最後の頼みだ。必ず生きて指輪とサーシャを守り抜いてくれ」
オルガの意志の硬さにレクスも決意を新たにし、自室に戻り素早く旅の支度をすると、サーシャの部屋のドアを叩いた。

「お兄様、こんな時間に、それに顔色が悪いわ」
ドアからあらわれたのはまだ幼さの残る、しかし意志の強そうな女の子だった。 
「サーシャ聞いてくれ! 今すぐ支度をして城を出るぞ」
「急にそんなこと言われても」
 とまどうサーシャに兄レクスは、諭すように言った。
「詳しい話は後でするが、これは父上からの頼みなんだ。悔しいが今の私たちには父上を助ける力は無い。
それに、この指輪を私たちは命を懸けて守らなければいけないんだ!」
 レクサは父から託された指輪を妹に示した。指輪には複雑な装飾が施され、不思議な輝きを放っていた。
「それは秩序の指輪!? よくわからないけれど、緊急事態だってことは飲み込めたわ」
そう言うとサーシャも素早く城を出る準備をすませた。

2人が城を出る抜け道に向かおうとすると、背後から一人の侍女が声をかけてきた。ソフィアという名の年老いた侍女だった。
ソフィアは白髪で凛とした立ち振る舞いの気丈な老女で、幼い頃からレクス兄弟の世話係をしていた。

「レクスお坊ちゃま、サーシャお嬢様。こんな日が来ることもあると思っておりました。
私はついて行くことは出来ませんが、せめて別れの言葉を申し上げたく存じます」
ソフィアは今にも泣きそうな顔で二人を見つめた。
「婆や!」
抱きつくサーシャの目には涙が浮かんでいた。
「私、必ず生きて戻るから!」

そして、2人は城を後にした。レクサの手には秩序の指輪が握りしめられていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...