14 / 24
2章
5話 伝説の力
しおりを挟む
翌朝、目覚めたレクスはサーシャを優しく起こした。
「サーシャ、昨夜は眠れたかい?」
「もう、朝なんですの? お兄様。このベッド固くてあまり眠れませんでしたわ」
そうぼやくサーシャに
「サーシャ、朝食を食べながら、今後どうしていくか相談しないといけないね」
「朝食って、部屋に運ばれてこないんですの?」
サーシャは無邪気に尋ねた。
「こういった宿屋では朝食は1階の食堂で出るらしい。さあ、いこうか」
「ちょっと待ってください、お兄様。わたくし髪もセットしていないし、それに服だって替えがないんですのよ」
せかすレクスにサーシャが不満そうな顔をした。
「サーシャ忘れたのかい、今の私たちの立場を? 父上はこうしている間にも...」
自分の無力さにうなだれているレクスにサーシャは立ち上がると
「そんな風に落ち込んでいる方が時間の無駄ですわ。わかりました。食事をして悪いやつを倒しに行きましょう!」
妹の強気な言葉に励まされ、レクスは一緒に1階に降りて行った。
食堂は多くの人でにぎわっていた。
場違いな2人に好奇の目が集まったが、2人は気にすることなく空いているテーブルに向かうと、レクサはサーシャに座るようすすめた。
すると、いかにもガラの悪そうな男が話しかけてきた。
「おい、にーちゃん達。そんなに深くフードを被って、朝帰りとは悪い子だなー」
「すまない、私たちにもやむを得ない事情があるんだ」
レクサは素っ気なく答えた。
「大人をバカにするんじゃねー」
レクサの態度にむかついたのか、男はコブシを振り上げた。
が、その手を何者かが掴んでこう言った。
「大人気ないぞ。この国の大人はいつからそんなに乱暴になったのかねぇ」
その声に驚くレクス。
「ラルフ殿、戻られていたのですか!?」
「ラルフだって!?」
ガラの悪い男は、ラルフの名を聞くやいなや慌てて逃げ出していく。
「レクス様、とりあえずは無事でなによりです。サーシャ様もご自分を制して、成長されましたね」
「あんなゴロツキ、もう少しでわたくし蹴り飛ばしてやるところでしたわ」
勢いづくサーシャにラルフはため息をついた。
「ここはひと目が多いです。騒ぎになる前に出ましょう。それに、紹介しないといけない方たちがいます」
そう言うとラルフは、昨日、昼食を食べた家へと2人を案内するのだった。
「おかえり、ラルフ。後ろの2人が例の王子様とお姫様なの?」
待ちかまえていたルリィが声をかけると、レクスとサーシャはけげんな顔をしてルリィを眺めた。
「ごめんなさい、自己紹介もしないで。私ったら失礼だったわね。
私はルリィといいます。隣にいるのはアトラです。私たち、危ないところをラルフさんに助けられて。
それで、この羅針盤の力が必要って言われて...」
そう言ってルリィが羅針盤を見せるとレクスは驚いて言った。
「まさか! それは時の羅針盤!? あなたは何者なんですか?」
問いかけるレクスになぜかアトラが自慢げに言った。
「ルリィはあのエドワード・スパークの子孫なんだぜ!」
それを聞くとレクスは急に態度を改めて言った。
「スパークの血を引く方とお会いできるとは光栄です。5大英雄の中でももっとも偉大な方だったと王家に記録が残っています」
「いや、私はまだまだ未熟だし。でも、できる限りの事はしたいと思っています」
慌てて謙遜するルリィにアトラが重ねて言う。
「本当に俺たちはまだ駆け出し冒険者なんだ。ラルフは俺たちの力が必要って言ってくれたけど、正直何ができるのかまだわかってないんだ」
自信無げなアトラにラルフが言う。
「じゃあ、少しだけ伝説の力っていうのを試してみようか。レクス王子、秩序の指輪はお持ちですか?」
レクスがうなずくと、ラルフは指輪をルリィに手渡すように言った。
そして、いきなりテーブルを音もなくふたつに切った。
「ルリィ嬢ちゃん、元に戻れって強く念じながら、”リ・ループ”って言ってみてくれないか?」
戸惑いながらルリィが唱える。
「リ・ループ」
すると、割れたはずのテーブルが元の状態に戻った。
「なに、これ!?」
驚くルリィとアトラにラルフが言った。
「これが秩序の指輪と時の羅針盤が揃った時の力だ。俺も実際に見るまでは半信半疑だったけどな」
目を丸くしている2人に向かって、ラルフは声を強めた。
「この力があれば俺はかなりむちゃな戦い方もできる。そして、オルガ王を必ずお助けしてみせる!」
「ラルフ、私も戦うぞ!」
レクスも決意を秘めた目をして応じた。
男2人が盛り上がっていると、不意にサーシャがのんびりした様子で
「ところでお兄様、朝ごはんはまだかしら?」
空気の読めないサーシャの一言で一同は顔を見合わせて笑うのだった。
「サーシャ、昨夜は眠れたかい?」
「もう、朝なんですの? お兄様。このベッド固くてあまり眠れませんでしたわ」
そうぼやくサーシャに
「サーシャ、朝食を食べながら、今後どうしていくか相談しないといけないね」
「朝食って、部屋に運ばれてこないんですの?」
サーシャは無邪気に尋ねた。
「こういった宿屋では朝食は1階の食堂で出るらしい。さあ、いこうか」
「ちょっと待ってください、お兄様。わたくし髪もセットしていないし、それに服だって替えがないんですのよ」
せかすレクスにサーシャが不満そうな顔をした。
「サーシャ忘れたのかい、今の私たちの立場を? 父上はこうしている間にも...」
自分の無力さにうなだれているレクスにサーシャは立ち上がると
「そんな風に落ち込んでいる方が時間の無駄ですわ。わかりました。食事をして悪いやつを倒しに行きましょう!」
妹の強気な言葉に励まされ、レクスは一緒に1階に降りて行った。
食堂は多くの人でにぎわっていた。
場違いな2人に好奇の目が集まったが、2人は気にすることなく空いているテーブルに向かうと、レクサはサーシャに座るようすすめた。
すると、いかにもガラの悪そうな男が話しかけてきた。
「おい、にーちゃん達。そんなに深くフードを被って、朝帰りとは悪い子だなー」
「すまない、私たちにもやむを得ない事情があるんだ」
レクサは素っ気なく答えた。
「大人をバカにするんじゃねー」
レクサの態度にむかついたのか、男はコブシを振り上げた。
が、その手を何者かが掴んでこう言った。
「大人気ないぞ。この国の大人はいつからそんなに乱暴になったのかねぇ」
その声に驚くレクス。
「ラルフ殿、戻られていたのですか!?」
「ラルフだって!?」
ガラの悪い男は、ラルフの名を聞くやいなや慌てて逃げ出していく。
「レクス様、とりあえずは無事でなによりです。サーシャ様もご自分を制して、成長されましたね」
「あんなゴロツキ、もう少しでわたくし蹴り飛ばしてやるところでしたわ」
勢いづくサーシャにラルフはため息をついた。
「ここはひと目が多いです。騒ぎになる前に出ましょう。それに、紹介しないといけない方たちがいます」
そう言うとラルフは、昨日、昼食を食べた家へと2人を案内するのだった。
「おかえり、ラルフ。後ろの2人が例の王子様とお姫様なの?」
待ちかまえていたルリィが声をかけると、レクスとサーシャはけげんな顔をしてルリィを眺めた。
「ごめんなさい、自己紹介もしないで。私ったら失礼だったわね。
私はルリィといいます。隣にいるのはアトラです。私たち、危ないところをラルフさんに助けられて。
それで、この羅針盤の力が必要って言われて...」
そう言ってルリィが羅針盤を見せるとレクスは驚いて言った。
「まさか! それは時の羅針盤!? あなたは何者なんですか?」
問いかけるレクスになぜかアトラが自慢げに言った。
「ルリィはあのエドワード・スパークの子孫なんだぜ!」
それを聞くとレクスは急に態度を改めて言った。
「スパークの血を引く方とお会いできるとは光栄です。5大英雄の中でももっとも偉大な方だったと王家に記録が残っています」
「いや、私はまだまだ未熟だし。でも、できる限りの事はしたいと思っています」
慌てて謙遜するルリィにアトラが重ねて言う。
「本当に俺たちはまだ駆け出し冒険者なんだ。ラルフは俺たちの力が必要って言ってくれたけど、正直何ができるのかまだわかってないんだ」
自信無げなアトラにラルフが言う。
「じゃあ、少しだけ伝説の力っていうのを試してみようか。レクス王子、秩序の指輪はお持ちですか?」
レクスがうなずくと、ラルフは指輪をルリィに手渡すように言った。
そして、いきなりテーブルを音もなくふたつに切った。
「ルリィ嬢ちゃん、元に戻れって強く念じながら、”リ・ループ”って言ってみてくれないか?」
戸惑いながらルリィが唱える。
「リ・ループ」
すると、割れたはずのテーブルが元の状態に戻った。
「なに、これ!?」
驚くルリィとアトラにラルフが言った。
「これが秩序の指輪と時の羅針盤が揃った時の力だ。俺も実際に見るまでは半信半疑だったけどな」
目を丸くしている2人に向かって、ラルフは声を強めた。
「この力があれば俺はかなりむちゃな戦い方もできる。そして、オルガ王を必ずお助けしてみせる!」
「ラルフ、私も戦うぞ!」
レクスも決意を秘めた目をして応じた。
男2人が盛り上がっていると、不意にサーシャがのんびりした様子で
「ところでお兄様、朝ごはんはまだかしら?」
空気の読めないサーシャの一言で一同は顔を見合わせて笑うのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる