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3章
3話 アタナシア
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セーラに案内されてルリィ達は岬に向かっていた。
海辺への道を歩いていると、突然、前方に魔獣が現れた。
その魔獣は牛程の大きさで、大きな口と牙を持っているワニのような姿をしていた。
「あれは海獣グウェィト!?」
ルリィが驚くより早くセーラが戦闘態勢になると、アトラも剣を構えた。
セーラが背中に背負っていたアトラの身長程もあるツヴァイヘンダーで、グウェィトに斬りかかった。かなりの使い手である事が一目でわかる。
セーラが前方のグウェィトと戦っている間に、側面からも数匹のグウェィトが襲ってきた。 セーラはそれに気づくと顔をしかめた。
「この数はまずいな」
グウェィト達が迫ってきた。だが、その時、グウェィトの群れが次々に黒い槍のような物に貫かれて動かなくなっていった。
ルリィが注意深く黒い”なにか”を目で追うと、”なにか”は布の様な形状になり前方へ向かっていった。
しばらくすると前方から黒いマフラーを纏った小柄な人物が歩いてきて、口を開いた。
「待ちきれなくて迎えに来てしまったよ、スパーク」
スパークという名前にセーラが驚く。ルリィとアトラもその名前で呼ばれたことに驚いた。
「私はルリィ、ルリィ・スパークです。でも、なんであなたは私の事を知っているの?」
「スパークの事で僕が知らないことは無いよ。ずっと待っていたからね」
「あなた何者?」
「失礼、自己紹介が遅れたね。僕はアタナシア。たぶん、君が探しているのは僕だよ」
「ちょっと待って、全然意味がわからないんだけど」
2人の会話を聞いていたセーラが割って入る。
「スパークに関する話か...興味があるな」
「ここから先の話は”かの島”に挑む者にしか聞かせられないけれど、覚悟はある?」
それを聞いて頷くルリィとアトラだが、セーラはゆっくりと首を振った。
「騎士様の話は聞いていたが...そうかスパークの血の者が関係していたとは。
では、羅針盤も持っているんだな?」
ルリィは一瞬、困った顔をしてから頷いた。
「なるほど、コステルに襲われたのは貴方だったのか。
私にも羅針盤を奪えという伝令はあったんだが断った。私の仕事はギルド長で盗賊では無いからな」
複雑な表情でセーラがそう言った。
「私は羅針盤には関わらない。コステルの事は同じギルド長として恥じている」
組合にもどるとだけ言って、セーラは帰って行った。
「賢い選択だね。アトラ君は本当に大丈夫なのかい?」
「ルリィと”かの島”に行くことは最初から決めてる」
「じゃあ、ゆっくり話ができるところに行こうか、この先だ」
案内された先は岬の下にある小さな洞窟だった。中には生活感は無いが椅子とテーブルだけがあった。
「まずルリィ、君はどの程度自分がしなければいけないことを理解しているんだい?」
「えっと、”かの島”に行ってお母さんとお父さんを助けるの!」
アタナシアは呆れた顔になった
「自分たちの意志で行った両親を助けたい? 彼らならその気になればいつでも帰ってこれるよ」
「え? どういう意味?」
「彼らが帰ってこないのは”かの島”の禍を島から出さないために戦っているからだ。
君がしないといけないのは”かの島”の禍自体を壊す事だよ。
そのためには羅針盤と4つの力が必要だ。もうひとつは持ってるんだろう? 秩序の指輪に挨拶させてくれないかな?」
ルリィは戸惑いながらも指輪をアタナシアに渡した。アタナシアは一瞬懐かしそうな顔をして、久しぶりだねLOWと言ったようだった。
それから指輪をルリィに返すと言った。
「力の使い方を覚えないといけないよ、ルリィ。
この先に訓練の扉を作っておいた。それからアトラ君にはこの黒牙布の使い方を教えてあげよう」
アタナシアは黒いマフラーをアトラに渡した。どうやら黒牙布というらしい。
「じゃあルリィ、修行をする覚悟ができたら扉の中に入ってください」
洞窟の奥には不自然に綺麗な白い扉があった。
「覚悟はできています!」
ルリィは扉に手をかけるとアトラを見た。
「私頑張るね」
「無理するなよルリィ」
ルリィは扉の中へと入っていった。
海辺への道を歩いていると、突然、前方に魔獣が現れた。
その魔獣は牛程の大きさで、大きな口と牙を持っているワニのような姿をしていた。
「あれは海獣グウェィト!?」
ルリィが驚くより早くセーラが戦闘態勢になると、アトラも剣を構えた。
セーラが背中に背負っていたアトラの身長程もあるツヴァイヘンダーで、グウェィトに斬りかかった。かなりの使い手である事が一目でわかる。
セーラが前方のグウェィトと戦っている間に、側面からも数匹のグウェィトが襲ってきた。 セーラはそれに気づくと顔をしかめた。
「この数はまずいな」
グウェィト達が迫ってきた。だが、その時、グウェィトの群れが次々に黒い槍のような物に貫かれて動かなくなっていった。
ルリィが注意深く黒い”なにか”を目で追うと、”なにか”は布の様な形状になり前方へ向かっていった。
しばらくすると前方から黒いマフラーを纏った小柄な人物が歩いてきて、口を開いた。
「待ちきれなくて迎えに来てしまったよ、スパーク」
スパークという名前にセーラが驚く。ルリィとアトラもその名前で呼ばれたことに驚いた。
「私はルリィ、ルリィ・スパークです。でも、なんであなたは私の事を知っているの?」
「スパークの事で僕が知らないことは無いよ。ずっと待っていたからね」
「あなた何者?」
「失礼、自己紹介が遅れたね。僕はアタナシア。たぶん、君が探しているのは僕だよ」
「ちょっと待って、全然意味がわからないんだけど」
2人の会話を聞いていたセーラが割って入る。
「スパークに関する話か...興味があるな」
「ここから先の話は”かの島”に挑む者にしか聞かせられないけれど、覚悟はある?」
それを聞いて頷くルリィとアトラだが、セーラはゆっくりと首を振った。
「騎士様の話は聞いていたが...そうかスパークの血の者が関係していたとは。
では、羅針盤も持っているんだな?」
ルリィは一瞬、困った顔をしてから頷いた。
「なるほど、コステルに襲われたのは貴方だったのか。
私にも羅針盤を奪えという伝令はあったんだが断った。私の仕事はギルド長で盗賊では無いからな」
複雑な表情でセーラがそう言った。
「私は羅針盤には関わらない。コステルの事は同じギルド長として恥じている」
組合にもどるとだけ言って、セーラは帰って行った。
「賢い選択だね。アトラ君は本当に大丈夫なのかい?」
「ルリィと”かの島”に行くことは最初から決めてる」
「じゃあ、ゆっくり話ができるところに行こうか、この先だ」
案内された先は岬の下にある小さな洞窟だった。中には生活感は無いが椅子とテーブルだけがあった。
「まずルリィ、君はどの程度自分がしなければいけないことを理解しているんだい?」
「えっと、”かの島”に行ってお母さんとお父さんを助けるの!」
アタナシアは呆れた顔になった
「自分たちの意志で行った両親を助けたい? 彼らならその気になればいつでも帰ってこれるよ」
「え? どういう意味?」
「彼らが帰ってこないのは”かの島”の禍を島から出さないために戦っているからだ。
君がしないといけないのは”かの島”の禍自体を壊す事だよ。
そのためには羅針盤と4つの力が必要だ。もうひとつは持ってるんだろう? 秩序の指輪に挨拶させてくれないかな?」
ルリィは戸惑いながらも指輪をアタナシアに渡した。アタナシアは一瞬懐かしそうな顔をして、久しぶりだねLOWと言ったようだった。
それから指輪をルリィに返すと言った。
「力の使い方を覚えないといけないよ、ルリィ。
この先に訓練の扉を作っておいた。それからアトラ君にはこの黒牙布の使い方を教えてあげよう」
アタナシアは黒いマフラーをアトラに渡した。どうやら黒牙布というらしい。
「じゃあルリィ、修行をする覚悟ができたら扉の中に入ってください」
洞窟の奥には不自然に綺麗な白い扉があった。
「覚悟はできています!」
ルリィは扉に手をかけるとアトラを見た。
「私頑張るね」
「無理するなよルリィ」
ルリィは扉の中へと入っていった。
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