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ぼっちと幼女と邪神
幼女と邪神と唐揚げ
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唐揚げにする予定の肉の下拵えをしていると、ミドリがカウンター越しにじっとこっちを見ていた。
俺の手元を追うたびに、頭が小さく左右に揺れる。
「何か気になるか?」
「にく……しまう……?」
袋の中に肉を放り込んでいるのを見て、「どこかに片付けてる」と思ったらしい。
「肉は仕舞わないぞ。こうやって調理するんだ」
一口大に切り分けた鳥のもも肉を、まとめて袋の中に落としていく。
しょうゆベースの漬けダレを流し込み、軽く揉み込んでいくと、肉の表面がしっとりと光を帯びた。
このまま置けば味が入るが、待つのも面倒なので、時間加速で二時間ほど一気に進める。
漬け終わった肉を取り出し、今度は衣をまぶす。
粉のついた指先を軽く払ってから、鍋の上に視線を移した。
油は魔法で適温に固定してある。
表面は静かだが、温度だけはいつでも肉を受け入れられる状態だ。
隣では、ミドリがカウンターに指先をかけて背伸びしていた。
瞳が油の張られた鍋と俺の手元を行ったり来たりしている。揚げるところを見たいらしい。
「クレバス」
「なんじゃ? 飯はまだかのう?」
「ミドリを抱っこして揚げるところを見せてやってくれ」
「うむ、頼まれた」
クレバスがひょいとミドリを抱え、鍋のほうへ向きを変える。
俺はミドリにだけ弾除けの魔法をかけておいた。油が跳ねても、クレバスに全部飛ぶように。
結界は張ってあるが、気分の問題だ。
温度が落ちないよう維持しながら、唐揚げの種を油の中へ落とす。
表面が触れた瞬間、ぱちぱちと小さく弾ける音が台所に広がり、じわじわと香ばしい匂いが立ちのぼる。
「おにくのにおい!!」
寝室のほうからシロが飛び出してきた。
寝起きのままなのか、服の裾がほんの少しずれている。匂いに釣られて飛び起きたのが丸わかりだ。
本当は全部揚げ終わったら起こしに行くつもりだったが、その手間は省けた。
衣が固まり始め、表面が色づいてきたところで、一度油から引き上げる。
表面にまとわりついた油がきらきらと光りながら落ちていく。
二度揚げ用に、しばし皿の上で休ませる。
「んしょ……」
クレバスの体をよじ登る気配がした。
いつもの要領で、シロがクレバスの肩の上に収まっていく。今や定位置と言っていい。
再び油の中へ返し、きつね色が濃くなったところで、順々に唐揚げを引き上げていく。
濃い色の衣がカラリと音を立て、皿の上に山ができていった。
「試食するか?」
声をかけると、全員の首が同時に動いた。
揚げたてをひとつ取り、魔法で少しだけ温度を落とす。
まずはシロとミドリの口元に持っていく。
衣を噛み破った瞬間、さくりと軽快な音がして、中から湯気と肉汁がにじみ出た。
「妾の分は無いのか!?」
「ほらよ」
今度は温度を下げていないやつを一つ、クレバスの口へ放り込む。
「あっつ!!???」
目を白黒させながら、それでも噛むのは止めない。
舌を出して顔を歪めながらも、頬の内側に押し込んでどうにか飲み込もうとしているあたり、本当に食い意地が張っている。
そうこうしているうちに、揚げの作業は終わった。
唐揚げの山を皿ごと持ち、サラダと炊いた米をよそってから、リビングへ移動する。
それぞれがいつもの定位置に腰を落ち着けると、自然と手が唐揚げへ伸びた。
シロとクレバスが、競うような勢いでもぐもぐと頬張る。
ミドリも負けじとフォークを使い、小さな口いっぱいに唐揚げと白米を運んでいた。
「あまり急いで食うなよー」
そう声をかけたところで、ミドリが空になった茶碗をこつんと俺の方へ差し出してきた。
「おにいちゃ……おかわり……」
一瞬、手が止まる。
ミドリがおかわりを求めてきたのは、そういえば初めてだ。
茶碗の縁には、ほんの少しだけタレの跡が残っている。
口元には、唐揚げの衣の細かい欠片がついていた。
「おう。好きなだけ食え」
茶碗を受け取り、米をよそって戻してやると、ミドリは嬉しそうに小さく頷き、また静かに食べ始めた。
正面では、シロがアイコンタクトでクレバスに合図を送り、さりげなく唐揚げの皿を自分側に寄せさせている。
クレバスもそれを止めるどころか、一緒になって山を崩していた。
ハムスターみたいに頬を膨らませながら次々と口へ詰め込む二人と、黙々とペースを崩さず食べ続けるミドリ。
皿の山はみるみる低くなり、米の入った器も空になっていく。
食卓のあちこちから、幸せそうな咀嚼音が途切れることなく続いていた。
その様子を眺めていると、油の後始末だの片付けだの、そういった面倒ごとはどうでもよくなる。
作った分だけきれいに消えていく唐揚げの皿と、満足そうな顔が並んでいる光景は、それだけで十分な報酬だ。
――この平穏な日々が、できることならずっと続いてほしい。
そう願いながら、俺もひとつ唐揚げを摘まんだ。
俺の手元を追うたびに、頭が小さく左右に揺れる。
「何か気になるか?」
「にく……しまう……?」
袋の中に肉を放り込んでいるのを見て、「どこかに片付けてる」と思ったらしい。
「肉は仕舞わないぞ。こうやって調理するんだ」
一口大に切り分けた鳥のもも肉を、まとめて袋の中に落としていく。
しょうゆベースの漬けダレを流し込み、軽く揉み込んでいくと、肉の表面がしっとりと光を帯びた。
このまま置けば味が入るが、待つのも面倒なので、時間加速で二時間ほど一気に進める。
漬け終わった肉を取り出し、今度は衣をまぶす。
粉のついた指先を軽く払ってから、鍋の上に視線を移した。
油は魔法で適温に固定してある。
表面は静かだが、温度だけはいつでも肉を受け入れられる状態だ。
隣では、ミドリがカウンターに指先をかけて背伸びしていた。
瞳が油の張られた鍋と俺の手元を行ったり来たりしている。揚げるところを見たいらしい。
「クレバス」
「なんじゃ? 飯はまだかのう?」
「ミドリを抱っこして揚げるところを見せてやってくれ」
「うむ、頼まれた」
クレバスがひょいとミドリを抱え、鍋のほうへ向きを変える。
俺はミドリにだけ弾除けの魔法をかけておいた。油が跳ねても、クレバスに全部飛ぶように。
結界は張ってあるが、気分の問題だ。
温度が落ちないよう維持しながら、唐揚げの種を油の中へ落とす。
表面が触れた瞬間、ぱちぱちと小さく弾ける音が台所に広がり、じわじわと香ばしい匂いが立ちのぼる。
「おにくのにおい!!」
寝室のほうからシロが飛び出してきた。
寝起きのままなのか、服の裾がほんの少しずれている。匂いに釣られて飛び起きたのが丸わかりだ。
本当は全部揚げ終わったら起こしに行くつもりだったが、その手間は省けた。
衣が固まり始め、表面が色づいてきたところで、一度油から引き上げる。
表面にまとわりついた油がきらきらと光りながら落ちていく。
二度揚げ用に、しばし皿の上で休ませる。
「んしょ……」
クレバスの体をよじ登る気配がした。
いつもの要領で、シロがクレバスの肩の上に収まっていく。今や定位置と言っていい。
再び油の中へ返し、きつね色が濃くなったところで、順々に唐揚げを引き上げていく。
濃い色の衣がカラリと音を立て、皿の上に山ができていった。
「試食するか?」
声をかけると、全員の首が同時に動いた。
揚げたてをひとつ取り、魔法で少しだけ温度を落とす。
まずはシロとミドリの口元に持っていく。
衣を噛み破った瞬間、さくりと軽快な音がして、中から湯気と肉汁がにじみ出た。
「妾の分は無いのか!?」
「ほらよ」
今度は温度を下げていないやつを一つ、クレバスの口へ放り込む。
「あっつ!!???」
目を白黒させながら、それでも噛むのは止めない。
舌を出して顔を歪めながらも、頬の内側に押し込んでどうにか飲み込もうとしているあたり、本当に食い意地が張っている。
そうこうしているうちに、揚げの作業は終わった。
唐揚げの山を皿ごと持ち、サラダと炊いた米をよそってから、リビングへ移動する。
それぞれがいつもの定位置に腰を落ち着けると、自然と手が唐揚げへ伸びた。
シロとクレバスが、競うような勢いでもぐもぐと頬張る。
ミドリも負けじとフォークを使い、小さな口いっぱいに唐揚げと白米を運んでいた。
「あまり急いで食うなよー」
そう声をかけたところで、ミドリが空になった茶碗をこつんと俺の方へ差し出してきた。
「おにいちゃ……おかわり……」
一瞬、手が止まる。
ミドリがおかわりを求めてきたのは、そういえば初めてだ。
茶碗の縁には、ほんの少しだけタレの跡が残っている。
口元には、唐揚げの衣の細かい欠片がついていた。
「おう。好きなだけ食え」
茶碗を受け取り、米をよそって戻してやると、ミドリは嬉しそうに小さく頷き、また静かに食べ始めた。
正面では、シロがアイコンタクトでクレバスに合図を送り、さりげなく唐揚げの皿を自分側に寄せさせている。
クレバスもそれを止めるどころか、一緒になって山を崩していた。
ハムスターみたいに頬を膨らませながら次々と口へ詰め込む二人と、黙々とペースを崩さず食べ続けるミドリ。
皿の山はみるみる低くなり、米の入った器も空になっていく。
食卓のあちこちから、幸せそうな咀嚼音が途切れることなく続いていた。
その様子を眺めていると、油の後始末だの片付けだの、そういった面倒ごとはどうでもよくなる。
作った分だけきれいに消えていく唐揚げの皿と、満足そうな顔が並んでいる光景は、それだけで十分な報酬だ。
――この平穏な日々が、できることならずっと続いてほしい。
そう願いながら、俺もひとつ唐揚げを摘まんだ。
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