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夢の中で僕は、色とりどりの花畑の中を歩いている。僕の後ろに、道はない。振り返る必要は、ないんだ。そのような取り留めのないことをぼんやりと考えながら、僕は歩く。夢特有の不思議な高揚感が、僕に歩くことを続けさせた。ずっと続くような花畑も終わりにさしかかろうとした時、目の前に彼女が立っているのが見えた。
白いワンピース。肩の辺りまで伸びた、茶髪の髪。彼女のことは、これだけしか知らない。いつも、ここで目覚めるのだ。彼女が振り返ろうとした、まさにその瞬間に。だが今日こそは。今日こそは、彼女の顔を見てやる。この花畑にだって、毎日来られるわけじゃあないんだ。僕は、彼女の顔が見たい。
どんな笑い方をするんだろう。
その瞳には、何が映っているの?
僕に教えてくれないか。僕はもっと君のことが知りたい。
そして今。今まさに。まさにこの瞬間に。彼女は振り返るのだ。長い睫毛が揺れる。ああ、後、ほんの一瞬で―
ジリリリリ
現実は非情である。急速に夢はかき消え、僕の脳は一気に現実感を取り戻す。音の発生源である目覚まし時計を止め、この不快な音から開放された。時計は7時半を指している。眠そうな声を上げてもう1人の僕が活動を始める。そうなのだ。あいにく夢の中の僕と、今動き出した僕とは一緒じゃない。いや突き詰めれば元は同じ人間なのだが、残念ながら現実世界の体の主導権は僕には無い。代わりに、夢の中での主導権は僕が握っているというわけだ。
僕の名前は羅村吉平。21才。変わった名前にも程があるが、現実世界に干渉できない僕としては受け入れるしかない。現実世界での僕は、フリーターをやっている。一応高校を卒業して資格も持っているのに、なぜかフリーターをやっているんだ、この男は。現実世界での僕曰く、
「通っていた高校は本当に通いたい高校ではなかった」
らしい。知らねえよ。
というか、この「現実世界での僕」という呼称は長いよな。よし、ここからは表裏一体ということで現実世界での僕のことは「表」と呼ぶことにしよう。
表は、朝食を済ませ、出勤の準備を始めた。今日はアルバイトがある日だ。昨日シフト表を見ていたからな。表と視覚を共有しているから、こいつが見たものは僕も見ているんだ。最も、7時半に起きた時点でアルバイトがあると分かってるんだけど。出勤時間は日によってバラバラとはいえ、用もないのに表が朝早く起きる筈が無い。コイツといったら、休みの日は寝てばっかなのだ。朝、というより昼近くに起きるし、夕寝するし。その代わり、夜更かしする。睡眠時間のバラツキは、健康によくないんだぞ。お前1人の体じゃないんだから気を付けろよ。言ってやりたいが無理だ。しつこいようだが僕は、現実世界に干渉できないし、僕の声はコイツには届かないのだ。
表は母親に挨拶し、家の前に止めてあった自転車に跨がった。車の免許ももってないからねコイツ。まあ車を運転する僕なんて想像できないけどな。
「あ~あ、眠たい」
昨日夜更かしするからだ。確か僕に主導権が移ったのは午前3時だったか。昨日休みだったから昼間はずっと寝てたんだ。その間に僕が自由になれるのはいいが、昼間だとあの花畑に行けないんだよな。名前も知らない彼女。次に会えるのはいつになるだろう。
15分程して、勤務先である回転寿司チェーンに着いた。表はスマホで時間を見た。ただいまの時刻は9時16分。少し早く着いたようだな。先に来ていた店長や先輩に挨拶をしつつ談笑して時間をつぶす。そして手際良く着替えたら時刻は9時半。さあ仕事開始だ。今日も一日頑張れよ、表!
手を洗って、キッチンへ入る。表はキッチンの担当だ。寿司を握ってお客さんに提供するポジション。開店時間までは仕込みの時間だ。
「吉平、サバの骨抜いといて」
店長が言う。
「了解です。了解ウォッチ! なんちゃって」
くっだらね~。
そんなこんなで開店時間となり、お客さんが入ってきた。結構な繁盛店なので、開店から昼過ぎまではなかなか忙しい。だが僕にできることは何もないので、目を閉じた。僕には睡眠は必要ないが、休息は必要なのだ。少し視覚を遮断して、入ってくる情報を減らす。ただ、聴覚も共有しているから完全にゼロにはできないが。
「店長、3番テーブルの女の子、可愛くないですか」
「ああ」
ふと、そんな会話を耳にして僕は目を開けた。表は、店長の顔を見ている。なんだよ、その女の子の顔を見せろよ。表がもう一度見なけりゃ僕には見えないんだよ。その声が聞こえたわけでもないだろうが、表はもう一度3番テーブルに目をやった。なるほど、顔立ちの整った美人な女の子が座っている。腰までありそうな綺麗な黒髪だ。おそらく立ったら結構な長身だろう。正面には中年女性が座っている。母親だろうか。
「ヤバい、メッチャ好みだわ」
嘘だろ。ああいう子が好みなのか、お前。あの女の子は綺麗過ぎるよ。僕だったら、もう少し小柄で、茶髪の女の子が好きだな。美人というよりは可愛らしい女の子の方が、長く付き合うにはいいと思うよ。そんな僕の声は当然表には届かない。表は女の子に好かれようと、滅茶苦茶愛想良く接客していた。
午後9時半。今日の仕事はここまでだ。出勤が遅い日はもっと遅い時間まで働くことになるが、今日は朝早く来たんだ。そろそろコイツを休ませてやってくれ。表はみんなに挨拶をして、自転車に乗り帰路へ着いた。自宅へ入るとささっと入浴と夕食を済ませ、寝床へと潜り込んだ。通常ならここから長い「スマホいじりタイム」が始まるのだが、今日の勤務は結構忙しかったはずだ。僕の読みが正しければ…
「…………」
やはり!表はすぐに寝息を立てはじめた。それと同時に僕に体の主導権が移る。
やった!こんなに早く活動が出来れば、またあの花畑へ行けるかも知れない。夢の世界というのは結構混沌としていて、今まで見てきた夢の世界のみならず、起きていた時間に見たものがそのまま夢に影響されていたりする。僕の生きている世界というのは、それはもう、カオスなのだ。あの花畑になかなか行けない理由は、そこにある。しかし今日は、時間がたっぷりある。おそらく表が寝たのは11時頃だろう。だから例え7時半に起きたとしても8時間以上は僕の時間だ。それだけあれば、あの花畑を見つけることもできるだろう。
それから僕は、あの花畑を探し始めた。その道中には、サバの妖怪に骨を抜かれそうになる夢や、腰まで届く黒髪に絡まりそうになる夢などがあったが、省略する。
そして、僕は遂に花畑を見つけた。この花の香り。忘れる筈が無い。あの待ち焦がれた花畑に、僕は来ている。そうだ、僕は。
僕は、彼女に会うためだけに、生きているんだ。名前も知らない、顔も見たことが無い彼女。
僕は花畑に足を踏み入れる。
走り出す。
夢特有の不思議な高揚感が、僕に走ることを続けさせた。
ずっと続くような花畑も終わりにさしかかる。そこに、立っているのが。
白いワンピース。
肩まで伸びた、茶髪の髪。
彼女のことは、これだけしか知らない。
いつも、ここで目覚めるのだ。
彼女が振り返ろうとした、まさにその瞬間に。
だが今日こそは。
今日こそは、彼女の顔を見てやる。
この花畑にだって、毎日来られるわけじゃあないんだ。
僕は、彼女の顔が見たい。
彼女は、ゆっくりと振り返る。長い睫毛。茶髪がさらりと揺れる。その瞳は髪と同じように茶色く、潤んだ光を放っている。その瞳に映った僕は、泣きそうな顔をしていた。可愛らしい顔立ち。そうだ。僕の好みはこういう女の子なんだ、表よ。やっぱり付き合うならさ。こういう女の子がいい。現実世界でもこういう女の子を見つけろよ。
彼女は、口を開いた。
「君は―やっと会えたな」
んん?なんか思ってたのと話し方が違う。まあ…これはこれで、アリかな…
「やっと会えたって、それはこっちのセリフだ。僕は、ずっと君と話したかった。でもまずは、名前を聞きたい。君の名前は何と言うの?」
「私?…そうだね、レムとでも呼んでくれ」
「レム?それってレム睡眠とかノンレム睡眠とかのレム?」
「どうかな」
レムだなんて…もしやこの子には元々名前がないのか。だからこんな日本人離れした名前を咄嗟に…
「君のことは、何と呼べばいいかな」
「…えっ、僕?えっと…」
どうしよう。彼女がこんな名前を言うなんて思わなかった。自分だけ完全に純日本人みたいな名前を言うのは恥ずかしくなってきた。ていうか、羅村吉平とか変な名前だし。よし。
「僕のことは、ラムと呼んでくれ」
うん。夢の中では、こういう名前が合ってる。そうだ、僕は羅村吉平ではなく、ラムなのだ。表の羅村吉平に対して、裏のラム。いいじゃん。
「おかしな名前だね」
レムはクスクスと笑った。
そうです。僕らは表も裏も変な名前です……
白いワンピース。肩の辺りまで伸びた、茶髪の髪。彼女のことは、これだけしか知らない。いつも、ここで目覚めるのだ。彼女が振り返ろうとした、まさにその瞬間に。だが今日こそは。今日こそは、彼女の顔を見てやる。この花畑にだって、毎日来られるわけじゃあないんだ。僕は、彼女の顔が見たい。
どんな笑い方をするんだろう。
その瞳には、何が映っているの?
僕に教えてくれないか。僕はもっと君のことが知りたい。
そして今。今まさに。まさにこの瞬間に。彼女は振り返るのだ。長い睫毛が揺れる。ああ、後、ほんの一瞬で―
ジリリリリ
現実は非情である。急速に夢はかき消え、僕の脳は一気に現実感を取り戻す。音の発生源である目覚まし時計を止め、この不快な音から開放された。時計は7時半を指している。眠そうな声を上げてもう1人の僕が活動を始める。そうなのだ。あいにく夢の中の僕と、今動き出した僕とは一緒じゃない。いや突き詰めれば元は同じ人間なのだが、残念ながら現実世界の体の主導権は僕には無い。代わりに、夢の中での主導権は僕が握っているというわけだ。
僕の名前は羅村吉平。21才。変わった名前にも程があるが、現実世界に干渉できない僕としては受け入れるしかない。現実世界での僕は、フリーターをやっている。一応高校を卒業して資格も持っているのに、なぜかフリーターをやっているんだ、この男は。現実世界での僕曰く、
「通っていた高校は本当に通いたい高校ではなかった」
らしい。知らねえよ。
というか、この「現実世界での僕」という呼称は長いよな。よし、ここからは表裏一体ということで現実世界での僕のことは「表」と呼ぶことにしよう。
表は、朝食を済ませ、出勤の準備を始めた。今日はアルバイトがある日だ。昨日シフト表を見ていたからな。表と視覚を共有しているから、こいつが見たものは僕も見ているんだ。最も、7時半に起きた時点でアルバイトがあると分かってるんだけど。出勤時間は日によってバラバラとはいえ、用もないのに表が朝早く起きる筈が無い。コイツといったら、休みの日は寝てばっかなのだ。朝、というより昼近くに起きるし、夕寝するし。その代わり、夜更かしする。睡眠時間のバラツキは、健康によくないんだぞ。お前1人の体じゃないんだから気を付けろよ。言ってやりたいが無理だ。しつこいようだが僕は、現実世界に干渉できないし、僕の声はコイツには届かないのだ。
表は母親に挨拶し、家の前に止めてあった自転車に跨がった。車の免許ももってないからねコイツ。まあ車を運転する僕なんて想像できないけどな。
「あ~あ、眠たい」
昨日夜更かしするからだ。確か僕に主導権が移ったのは午前3時だったか。昨日休みだったから昼間はずっと寝てたんだ。その間に僕が自由になれるのはいいが、昼間だとあの花畑に行けないんだよな。名前も知らない彼女。次に会えるのはいつになるだろう。
15分程して、勤務先である回転寿司チェーンに着いた。表はスマホで時間を見た。ただいまの時刻は9時16分。少し早く着いたようだな。先に来ていた店長や先輩に挨拶をしつつ談笑して時間をつぶす。そして手際良く着替えたら時刻は9時半。さあ仕事開始だ。今日も一日頑張れよ、表!
手を洗って、キッチンへ入る。表はキッチンの担当だ。寿司を握ってお客さんに提供するポジション。開店時間までは仕込みの時間だ。
「吉平、サバの骨抜いといて」
店長が言う。
「了解です。了解ウォッチ! なんちゃって」
くっだらね~。
そんなこんなで開店時間となり、お客さんが入ってきた。結構な繁盛店なので、開店から昼過ぎまではなかなか忙しい。だが僕にできることは何もないので、目を閉じた。僕には睡眠は必要ないが、休息は必要なのだ。少し視覚を遮断して、入ってくる情報を減らす。ただ、聴覚も共有しているから完全にゼロにはできないが。
「店長、3番テーブルの女の子、可愛くないですか」
「ああ」
ふと、そんな会話を耳にして僕は目を開けた。表は、店長の顔を見ている。なんだよ、その女の子の顔を見せろよ。表がもう一度見なけりゃ僕には見えないんだよ。その声が聞こえたわけでもないだろうが、表はもう一度3番テーブルに目をやった。なるほど、顔立ちの整った美人な女の子が座っている。腰までありそうな綺麗な黒髪だ。おそらく立ったら結構な長身だろう。正面には中年女性が座っている。母親だろうか。
「ヤバい、メッチャ好みだわ」
嘘だろ。ああいう子が好みなのか、お前。あの女の子は綺麗過ぎるよ。僕だったら、もう少し小柄で、茶髪の女の子が好きだな。美人というよりは可愛らしい女の子の方が、長く付き合うにはいいと思うよ。そんな僕の声は当然表には届かない。表は女の子に好かれようと、滅茶苦茶愛想良く接客していた。
午後9時半。今日の仕事はここまでだ。出勤が遅い日はもっと遅い時間まで働くことになるが、今日は朝早く来たんだ。そろそろコイツを休ませてやってくれ。表はみんなに挨拶をして、自転車に乗り帰路へ着いた。自宅へ入るとささっと入浴と夕食を済ませ、寝床へと潜り込んだ。通常ならここから長い「スマホいじりタイム」が始まるのだが、今日の勤務は結構忙しかったはずだ。僕の読みが正しければ…
「…………」
やはり!表はすぐに寝息を立てはじめた。それと同時に僕に体の主導権が移る。
やった!こんなに早く活動が出来れば、またあの花畑へ行けるかも知れない。夢の世界というのは結構混沌としていて、今まで見てきた夢の世界のみならず、起きていた時間に見たものがそのまま夢に影響されていたりする。僕の生きている世界というのは、それはもう、カオスなのだ。あの花畑になかなか行けない理由は、そこにある。しかし今日は、時間がたっぷりある。おそらく表が寝たのは11時頃だろう。だから例え7時半に起きたとしても8時間以上は僕の時間だ。それだけあれば、あの花畑を見つけることもできるだろう。
それから僕は、あの花畑を探し始めた。その道中には、サバの妖怪に骨を抜かれそうになる夢や、腰まで届く黒髪に絡まりそうになる夢などがあったが、省略する。
そして、僕は遂に花畑を見つけた。この花の香り。忘れる筈が無い。あの待ち焦がれた花畑に、僕は来ている。そうだ、僕は。
僕は、彼女に会うためだけに、生きているんだ。名前も知らない、顔も見たことが無い彼女。
僕は花畑に足を踏み入れる。
走り出す。
夢特有の不思議な高揚感が、僕に走ることを続けさせた。
ずっと続くような花畑も終わりにさしかかる。そこに、立っているのが。
白いワンピース。
肩まで伸びた、茶髪の髪。
彼女のことは、これだけしか知らない。
いつも、ここで目覚めるのだ。
彼女が振り返ろうとした、まさにその瞬間に。
だが今日こそは。
今日こそは、彼女の顔を見てやる。
この花畑にだって、毎日来られるわけじゃあないんだ。
僕は、彼女の顔が見たい。
彼女は、ゆっくりと振り返る。長い睫毛。茶髪がさらりと揺れる。その瞳は髪と同じように茶色く、潤んだ光を放っている。その瞳に映った僕は、泣きそうな顔をしていた。可愛らしい顔立ち。そうだ。僕の好みはこういう女の子なんだ、表よ。やっぱり付き合うならさ。こういう女の子がいい。現実世界でもこういう女の子を見つけろよ。
彼女は、口を開いた。
「君は―やっと会えたな」
んん?なんか思ってたのと話し方が違う。まあ…これはこれで、アリかな…
「やっと会えたって、それはこっちのセリフだ。僕は、ずっと君と話したかった。でもまずは、名前を聞きたい。君の名前は何と言うの?」
「私?…そうだね、レムとでも呼んでくれ」
「レム?それってレム睡眠とかノンレム睡眠とかのレム?」
「どうかな」
レムだなんて…もしやこの子には元々名前がないのか。だからこんな日本人離れした名前を咄嗟に…
「君のことは、何と呼べばいいかな」
「…えっ、僕?えっと…」
どうしよう。彼女がこんな名前を言うなんて思わなかった。自分だけ完全に純日本人みたいな名前を言うのは恥ずかしくなってきた。ていうか、羅村吉平とか変な名前だし。よし。
「僕のことは、ラムと呼んでくれ」
うん。夢の中では、こういう名前が合ってる。そうだ、僕は羅村吉平ではなく、ラムなのだ。表の羅村吉平に対して、裏のラム。いいじゃん。
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