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「僕にやっと会えたって…君は僕のことを知っていたの?僕は初めて君と顔を合わせたのに」
僕はレムに問うた。
「おかしな質問だな」
レムは言う。
「君は私によく会いに来てくれていたじゃないか。最も、すぐに花畑から出てしまうんだけど」
「君に会いに来ていたのは本当だけど、いつもタイミング悪く現実世界に戻されてしまってね」
「私達のような『夢の中の住人』は、主要人格―君のいう『表』が目覚める時に、体の主導権を明け渡し、姿が消える。だけど、その時には若干のタイムラグがあるんだ」
「どういうこと?」
「私達の姿が消えるタイミングのことだよ。体の主導権を渡した瞬間には消えない。少しの間だけ姿が残るんだ。だから私が振り向いた時、君の意識は花畑にはないものの、君の姿だけはあるというわけだ」
そうだったのか。
「実は夢の中で人に会えたのはレムちゃん。君が初めてだった。僕はずっと君と話したくて、」
「何で私とそんなに話したかったんだ?」
僕の言葉を遮り、レムは悪戯っぽく笑った。
「その前に聞きたい。君は…レムちゃん、君は……」
これだけは絶対に聞かなければならない。
「君はどこか知らない場所で生きてる実在する人間なの?それとも…僕の夢の中でだけ生きてる人間なの?」
ずっと考えていた。彼女がどこから来たのか…そのルーツを。
僕は、決して表には出てこれない裏の人間だ。
夢の中だけ。そこだけが僕の生きる世界。現実世界に生きる人間に僕の言葉が届くことはないから、いつも孤独を感じていた。
そんなとき、彼女を見つけたのだ。
奇跡だと思った。自分と同じ世界に生きている人間がいることが、信じられなかった。
今まで色の無かった世界に、色とりどりの花が咲き始める。
彼女は、背を向けたままだった。手を伸ばせば届きそうな距離に、彼女はいる。僕は走り出すが、彼女の顔を見ることはかなわなかった。
何度も何度も、彼女に会いに来たのだ。だがいつ来ても、彼女と目を合わせることも話すこともできない。
いつしか、僕は思い始めた。
彼女は、僕の妄想上の人物なのではないかと。
それでもいい、とは思えなかった。
悲しすぎるのだ。それでは、あまりにも、悲しすぎる。
僕は、顔も声も名前も知らない後ろ姿だけの彼女に、恋をしていたからだ。
君が僕の妄想だったとしたら、あるいは彼女と両想いになり、一緒に毎日を過ごすことも、可能だったかも知れない。
でもそれでは悲しすぎる。自分を愛してくれるのは結局自分だけ。そうなるじゃないか。
だから僕は。もし君が僕を好きじゃないと言ったとしても、それはそれでいいんだ。だから、返事を聞かせてくれ。
僕は、君のことが、好きだ。
「私は、君の妄想上の人間ではないよ。私は、自分の意思で、ここにいるんだ」
僕は……
「君のことが、好きだ」
ジリリリリ
突如鳴り響く目覚まし時計の音。
馬鹿野郎、表のやつ…今日は休みのはずだ。目覚まし時計を切ってなかったな!
花畑は色を無くし、僕の意識は急速に現実世界へと引きずり込まれる。あるいは色を無くしているのは僕の方かもしれない。視界がぼやける。レムの姿が…見えなくなる!
だが僕は必死で意識を保とうとした。今このタイミングで消えてしまうのは、嫌だった。彼女は、まだ何も言っていないんだ。
「レ、レムちゃん……」
歪む視界の中、レムは口を開く。
「大丈夫。今はとりあえず戻っておけ。二度と会えなくなるわけじゃない。今だけ、少しの別れだよ。次に会った時はもっと仲良くなれるはずだ。君と私は、絶対にもう一度会える」
視界が真っ暗になった。
「バカ……でも大好きだよ。ラムくん」
バカ?何を言ってるんだ。レムちゃん。
目覚まし時計を叩きつけ、ベルの音は止まった。ところがコイツは起きない。二度寝を始めた。くそ…最悪だ。用が無いなら目覚まし時計を切っとけよ。
羅村吉平さんよ、おまえさん、夢の中でも幸せになれないんだな。
僕はレムに問うた。
「おかしな質問だな」
レムは言う。
「君は私によく会いに来てくれていたじゃないか。最も、すぐに花畑から出てしまうんだけど」
「君に会いに来ていたのは本当だけど、いつもタイミング悪く現実世界に戻されてしまってね」
「私達のような『夢の中の住人』は、主要人格―君のいう『表』が目覚める時に、体の主導権を明け渡し、姿が消える。だけど、その時には若干のタイムラグがあるんだ」
「どういうこと?」
「私達の姿が消えるタイミングのことだよ。体の主導権を渡した瞬間には消えない。少しの間だけ姿が残るんだ。だから私が振り向いた時、君の意識は花畑にはないものの、君の姿だけはあるというわけだ」
そうだったのか。
「実は夢の中で人に会えたのはレムちゃん。君が初めてだった。僕はずっと君と話したくて、」
「何で私とそんなに話したかったんだ?」
僕の言葉を遮り、レムは悪戯っぽく笑った。
「その前に聞きたい。君は…レムちゃん、君は……」
これだけは絶対に聞かなければならない。
「君はどこか知らない場所で生きてる実在する人間なの?それとも…僕の夢の中でだけ生きてる人間なの?」
ずっと考えていた。彼女がどこから来たのか…そのルーツを。
僕は、決して表には出てこれない裏の人間だ。
夢の中だけ。そこだけが僕の生きる世界。現実世界に生きる人間に僕の言葉が届くことはないから、いつも孤独を感じていた。
そんなとき、彼女を見つけたのだ。
奇跡だと思った。自分と同じ世界に生きている人間がいることが、信じられなかった。
今まで色の無かった世界に、色とりどりの花が咲き始める。
彼女は、背を向けたままだった。手を伸ばせば届きそうな距離に、彼女はいる。僕は走り出すが、彼女の顔を見ることはかなわなかった。
何度も何度も、彼女に会いに来たのだ。だがいつ来ても、彼女と目を合わせることも話すこともできない。
いつしか、僕は思い始めた。
彼女は、僕の妄想上の人物なのではないかと。
それでもいい、とは思えなかった。
悲しすぎるのだ。それでは、あまりにも、悲しすぎる。
僕は、顔も声も名前も知らない後ろ姿だけの彼女に、恋をしていたからだ。
君が僕の妄想だったとしたら、あるいは彼女と両想いになり、一緒に毎日を過ごすことも、可能だったかも知れない。
でもそれでは悲しすぎる。自分を愛してくれるのは結局自分だけ。そうなるじゃないか。
だから僕は。もし君が僕を好きじゃないと言ったとしても、それはそれでいいんだ。だから、返事を聞かせてくれ。
僕は、君のことが、好きだ。
「私は、君の妄想上の人間ではないよ。私は、自分の意思で、ここにいるんだ」
僕は……
「君のことが、好きだ」
ジリリリリ
突如鳴り響く目覚まし時計の音。
馬鹿野郎、表のやつ…今日は休みのはずだ。目覚まし時計を切ってなかったな!
花畑は色を無くし、僕の意識は急速に現実世界へと引きずり込まれる。あるいは色を無くしているのは僕の方かもしれない。視界がぼやける。レムの姿が…見えなくなる!
だが僕は必死で意識を保とうとした。今このタイミングで消えてしまうのは、嫌だった。彼女は、まだ何も言っていないんだ。
「レ、レムちゃん……」
歪む視界の中、レムは口を開く。
「大丈夫。今はとりあえず戻っておけ。二度と会えなくなるわけじゃない。今だけ、少しの別れだよ。次に会った時はもっと仲良くなれるはずだ。君と私は、絶対にもう一度会える」
視界が真っ暗になった。
「バカ……でも大好きだよ。ラムくん」
バカ?何を言ってるんだ。レムちゃん。
目覚まし時計を叩きつけ、ベルの音は止まった。ところがコイツは起きない。二度寝を始めた。くそ…最悪だ。用が無いなら目覚まし時計を切っとけよ。
羅村吉平さんよ、おまえさん、夢の中でも幸せになれないんだな。
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