公爵夫人の俺はもうすぐ病気で死ぬので『最期に閣下が元カレさんに抱かれている痴態を見たい』と夫に頼むと……か、か、叶えてくれた?! 

天上青(ゼニスブルー)

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6.真相(前編)【side:ライアン・リード】

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「この度は、わざわざ伯爵領から赴いてくれて、ありがとう。おかげで助かったよ」

「いいえ、お役に立てたのなら、良かったです、閣下」

俺は、ライアン・リード。伯爵家の当主、20歳だ。

そして目の前で柔らかな表情を見せるこの人は、母方の叔父。アレン・ゲーンズ公爵閣下。

俺の亡き母チェスターの2歳下の弟で38歳。ゲーンズ公爵家の当主だ。

この度、訳あって協力させていただくこととなった。閣下の大切な人の幸せのために…。

公爵家の応接間は、まさに豪華そのものだ。
天井まで届く重厚なカーテンが空間を包み込み、匠の手による精緻な家具が並び、光を反射する大理石の床が美しく輝いている。

俺は愛する妻ルヴィーとソファに並んで座り、従者が淹れてくれた紅茶の香りに心を奪われた。それは、香りだけで超高級品だと分かるほどのもので、思わず啜りながらほっと一息ついた。

ああ、本当に上手くいって良かった。

ルヴィーがイーデンに施した治癒魔法が見事に成功したのだ。

「心より感謝する、エルヴィー殿」

閣下は、深く頭を下げた。
普段の冷静で穏やかな彼がここまで感情を露わにするのは珍しい。
俺も内心驚いたが、ルヴィーはいつもの落ち着いた笑みを浮かべている。

「お気になさらず、閣下」

ルヴィーの声は穏やかで、耳に心地いい。

「イーデン殿がお元気になられて何よりです」

その言葉に、閣下の表情が一瞬和らいだ。

俺は、ルヴィーが持つ不思議な力……ただの治癒魔法だけではない、相手の心まで癒す何か……に改めて感謝する。

「結局イーデンは、どのような病だったのだ?」

「慢性的な魔力閉塞症です」

ルヴィーはさらに詳しく続ける。

「簡単に申し上げると、魔力というのは、射精すものを射精さなければ…詰まってしまうのです。まあ、便秘みたいなものです。あとストレスからもそうなります…」

えっと…、射精すものって、つまりそういうことだよ、ね?

魔力は体液にも含まれており、特に精液には一番多く含まれている。
彼は3年以上もの間、性交セックスも自慰も、ほとんどしていなかったってことだろうな、きっと。

「…そ、そうか……」

「あのまま放っておけば、数か月後には、命の危険もあったでしょう」

「うむ…」

なるほど。イーデンが夢の中で女神に言われた言葉は、あながち大袈裟ではなかったようだな…。確かこの世界グレンツェンの創造神は女神アステリアだったか…。


「しかし、ライアン」

「はい」

「幻影魔法とは、よく思いついたな?」

「ええ、使える者は他に聞いたことがありません」

「ああ、私も初めて聞いたよ」

「はい。ルヴィーは、天才ですから」

俺は隣で静かにほほ笑む美しい最愛ルヴィーを、誇らしげに見つめるのだった。

ああ、今日も俺のルヴィーは異世界一だ。


***


「あのままでは良くないと、思ってはいたんだ」

閣下は、事の次第を改めて説明してくれた。

「結果的に、イーデンの命を守るには、彼を死んだことにするしかなかったのでしょう?」

「ああ。もう、それしか手立てはなかったな」


事の発端は、三年前に遡る。

イーデンの兄君が帝国の皇帝陛下のお眼鏡に適い、第三妃となった。
そこまでは良かったのだが。

しかし、その妃への皇帝の寵愛があまりにも独占的だったため、正妃と第二妃の生家が暗躍を始めた。

第三妃には唯一の肉親としてイーデンがいる。しかも、彼ら兄弟はとても仲が良い。つまり、イーデンが兄君にとっての唯一の弱点だったのだ。

イーデンを生きたまま捕らえ、第三妃を操るための人質にするか、あるいはイーデンを孕ませて、第三妃と血縁関係を築こうと企てるか。いずれにせよ、イーデンには利用価値がある。

皇宮で第三妃を暗殺するのはリスクが高い。皇帝の影は常にそこにあり、近づくことすら難しい。ならば、隣国で田舎の低位貴族の令息をどうにかする方が、成功率は高いだろう。

我が国はその情報をつかんだものの、国はただ護衛を数名つけただけ。上層部は事の重大さを全く理解していない。
イーデンを守り切るには限界があった。


そこで居てもたってもいられず名乗りを上げたのが、アレン・ゲーンズ公爵だ。

以前、外務大臣を兼任していた関係で、イーデン兄弟とは顔見知りでもあった。

しかも、ゲーンズ公爵家は、代々防御魔法の才に恵まれ、彼の居城は強固な結界で守られている。その結界は、長年にわたり歴代の当主によって重ね掛けされてきたもので、国の中でも随一の安全を誇る場所とされていた。まさに、我が国で最も安全な拠点と言っても過言ではない。

閣下は結婚を前提に、花嫁修業も兼ねて婚前から公爵領の居城でイーデンを保護していたのだが。

幾度となく間諜スパイ暗殺者アサシンが送り込まれ、イーデンは何度も誘拐されかけた。

しかも、間諜スパイたちは自白させる前に自害してしまう。もちろん、帝国に抗議できるだけの証拠は一片すら残さない。

イーデンを守るには、物理的な防御だけではだめだ。あらゆる手段を使わなければ。

閣下は自分なら彼を守りきれると信じていた。しかし、敵はあらゆる手段を使って巧妙に暗中飛躍を仕掛け、相当な苦戦を強いられた。その状態がなんと、3年以上も続いてしまった。

いっそ、既に死んだことにしようか?

―――― そう思っていた矢先。

イーデンの『もうすぐ病気で死にます』宣言があった。創造神アステリアに、夢の中で告げられたと。

しかし『最期の望みに、閣下アレンの痴態を見たい』と言われるとは、思ってもみなかったそうな。

そりゃそうだよな。
しかも、世間の噂を信じていたのか、お相手は俺をご指名のようだったし。……叔父上、よく許したな。

「イーデンの最期の望みを叶えてあげたかったんだよ」

「ええ」

「なんだか、面白そうだったしね」

「はぁ……」

「普段は無欲な彼の、初めてのおねだりだったから」

「はい……」

イーデンの性嗜好は理解できないがねえ」

「あー、はい」

そうですよねー。

「叔父上、イーデンにとってのエロスとは。ヤるものではなく、見るものなのかもしれませんね」

前世のAV鑑賞みたいな?
ヤるよりAV見てる方が好きって奴、一定数いるからな。
AVだけでなく、エロ漫画とかも、さ。

ルヴィーと毎晩のように何時間も性交りまくる俺には、全く理解できないがな。

「しかし、ただの顔見知りでしかなかった彼と、どうして結婚してまで守りたいと思ったのですか?」

この元夫婦が心から愛し合っていたようには思えない。まるで兄弟のように仲は良かったようだが。

「まあ、帝国の第三妃に恩を売るチャンスだろう?」

なるほど、やはり高位貴族様は違う。駆け引きや切り札は貴族にとっては重要だからな。

「それに貧乏男爵家の次男よりも、公爵夫人のほうが、なにかあったときに国が動く」

「ええ」

「そして何よりも、私が。彼を守りたいと、そう思ったのだよ」

「……はい」

だから、それがどうしてなのかを聞いているのだが。聞かない方が良かったかな?

閣下は、ゆったりとした動作で葉巻を口に運び、味わいながら燻らせた。

「イーデンは、大好きだった兄に。チェスターによく似ていたからねぇ……」

「――っ?俺の母に、ですか?」




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