不要とされた私が、拾われた先で人生を立て直すまで

藤原遊

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第1話 不要とされた理由

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精霊魔法を使えないことが、
それほど致命的な欠陥だとは思っていなかった。

少なくとも、口に出して言われるまでは。

「――セシリア。あなたは、この家には不要です」

父の声は淡々としていた。
怒りも失望もない。ただ、事実を告げるだけの声音。

私は静かに顔を上げる。

「……理由は、やはり精霊魔法、ですか」

そう問い返すと、母はわずかに視線を逸らした。
答えそのものが、すでに分かっていることを確認するような仕草だった。

ローディン家は、代々精霊との縁が深い家系だ。
豊かな加護を受け、領地を潤し、作物を実らせてきた。

その中で私は――
精霊の気配を、感じ取ることができなかった。

「貴族として、それは致命的よ」

母はそう言って、ため息をつく。

「魔力はある。でも精霊を扱えない。
それでは、この家の価値を次代に繋げないわ」

反論しようと思えば、できたのかもしれない。
魔力制御の成績は悪くなかった。
書類仕事や家政の習熟も、人並み以上だった。

けれど、それらはこの場では意味を持たない。

「……分かりました」

私は、そう答えた。

声が震えなかったことに、自分でも少し驚く。
泣き叫ぶほどの感情は、もう残っていなかった。

父が一通の書類を差し出してくる。

「形式上は、家の爵位の一つを継がせる。
魔境に近い開拓地の領主を命じる」

魔境――
精霊の気配が薄く、人が寄りつかない土地。

「領主が、本当に住む必要はない。
名義だけで構わない場所だ」

つまり、追い出し先として都合が良い、ということだろう。

私は書類を受け取り、静かに頷いた。

「準備は、すぐに整えます」

「……ああ」

それだけだった。

この家に、私を引き止める言葉はない。
精霊に選ばれなかった娘は、最初から数に入っていなかったのだから。

部屋に戻り、荷物をまとめながら思う。

――精霊がいない土地、か。

不安がないと言えば、嘘になる。
けれど、不思議と胸の奥は静かだった。

この家に残っていても、
私はずっと「足りないもの」として扱われ続ける。

それなら――。

私は、荷をまとめ終え、扉を閉めた。

そうして私は、
誰も期待していない領地へ向かうことになった。
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