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第7話 やってみる
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水路に手が入ったのは、その日の午後からだった。
石をどかし、溜まっていた泥を掻き出す。
使う道具は特別なものではない。鍬と桶、それに人の手だけだ。
「ここから、こっちまでな」
声を掛け合いながら、流れを区切っていく。
目印に石を積み、板を立てるだけの簡単な作業だった。
担当も、その場で決まった。
「じゃあ、今週は俺が見る」
「次は、俺だな」
決め事は少ない。その分、覚えやすい。
私は少し離れた場所から、その様子を見ていた。
口を挟むことはない。必要があれば、呼ばれる。
畑の方でも、同じように作業が進んでいた。
水が溜まりやすい場所には葉物を、乾きやすい場所には根の深い作物を。
全部を変えたわけではない。一角だけだ。
去年と同じ作物も、もちろん残している。
「これで、違いが分かる」
そう言ったのは、畑を任されている女だった。
「手間は増えますね」
ロイが、少し離れたところからぽつりと呟く。
「ええ」
私は頷いた。
「でも、迷いは減ります」
水が足りないのか。
詰まっているのか。
誰が見るのか。
考える前に、やることが決まっている。
夕方、もう一度水路を見に行くと、流れは安定していた。
朝よりも澱みが少ない。
「……今日は、ここまでで」
声を掛けると、皆がそれぞれの手を止めた。
疲れていないわけではない。
だが、不満の声も出ていない。
「明日も、同じでいいですか」
誰かがそう聞いた。
「はい」
私はそれだけ答えた。
屋敷に戻る途中、ロイが少し考え込んだ様子で歩いていた。
「……例年より、水を見る回数、増えてますね」
「そうですね」
「でも、その分、
『どうするんだっけ』って言葉は減りました」
私は歩きながら、足元を見る。
石の間を、水が静かに流れている。
「それで十分です」
ロイは、それ以上何も言わなかった。
屋敷に戻ると、朝よりも埃の匂いが薄れている。
掃除をしたわけではない。人の出入りがあっただけだ。
私は窓を開け、外の空気を入れた。
今日の作業で、何かが良くなったかどうかは、まだ分からない。
ただ、昨日と同じではない。
それだけは、確かだった。
石をどかし、溜まっていた泥を掻き出す。
使う道具は特別なものではない。鍬と桶、それに人の手だけだ。
「ここから、こっちまでな」
声を掛け合いながら、流れを区切っていく。
目印に石を積み、板を立てるだけの簡単な作業だった。
担当も、その場で決まった。
「じゃあ、今週は俺が見る」
「次は、俺だな」
決め事は少ない。その分、覚えやすい。
私は少し離れた場所から、その様子を見ていた。
口を挟むことはない。必要があれば、呼ばれる。
畑の方でも、同じように作業が進んでいた。
水が溜まりやすい場所には葉物を、乾きやすい場所には根の深い作物を。
全部を変えたわけではない。一角だけだ。
去年と同じ作物も、もちろん残している。
「これで、違いが分かる」
そう言ったのは、畑を任されている女だった。
「手間は増えますね」
ロイが、少し離れたところからぽつりと呟く。
「ええ」
私は頷いた。
「でも、迷いは減ります」
水が足りないのか。
詰まっているのか。
誰が見るのか。
考える前に、やることが決まっている。
夕方、もう一度水路を見に行くと、流れは安定していた。
朝よりも澱みが少ない。
「……今日は、ここまでで」
声を掛けると、皆がそれぞれの手を止めた。
疲れていないわけではない。
だが、不満の声も出ていない。
「明日も、同じでいいですか」
誰かがそう聞いた。
「はい」
私はそれだけ答えた。
屋敷に戻る途中、ロイが少し考え込んだ様子で歩いていた。
「……例年より、水を見る回数、増えてますね」
「そうですね」
「でも、その分、
『どうするんだっけ』って言葉は減りました」
私は歩きながら、足元を見る。
石の間を、水が静かに流れている。
「それで十分です」
ロイは、それ以上何も言わなかった。
屋敷に戻ると、朝よりも埃の匂いが薄れている。
掃除をしたわけではない。人の出入りがあっただけだ。
私は窓を開け、外の空気を入れた。
今日の作業で、何かが良くなったかどうかは、まだ分からない。
ただ、昨日と同じではない。
それだけは、確かだった。
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