虐げられ王女と忠誠の騎士〜運命を結ぶ婚約の物語〜

藤原遊

文字の大きさ
14 / 22

13

しおりを挟む
翌朝、ルミナリエは静かに目を覚ました。
夜中に考え続けたせいで、少し頭が重い。それでも、心の中には一つの決意が形を成していた。長い間、自分を縛り付けてきた王宮という場所――それを離れる覚悟がようやく芽生えたのだ。

彼女はゆっくりと立ち上がり、窓の外を見つめた。
朝日が王宮の庭園を照らしている。その光景を見ていると、懐かしさと共に寂しさも湧き上がる。それでも、彼女は微笑んだ。

「さようなら……私の過去。」

そう小さく呟くと、彼女は準備を整えて扉を開けた。向かった先は――ヴィクターの部屋。

ヴィクターは、窓辺で剣を磨いていた。
剣の刃に映る自分の顔を見つめながら、ルミナリエがどんな決断を下すのかを考えていた。彼女の選択を尊重するつもりではいるものの、不安が完全に消えるわけではない。

「もし、彼女が王宮に残ると言ったら……。」

その時、自分はどうするべきなのか。彼は深く息を吐き、頭を振った。彼女の意思を尊重する。それが自分の役割だと心に刻む。

ノックの音が響いた。
「ヴィクター殿、少しお話をしてもよろしいでしょうか?」

ルミナリエの声だった。

「どうぞ。」
ヴィクターはすぐに立ち上がり、扉を開けた。そこには、いつもより穏やかな表情を浮かべた彼女が立っていた。

「ありがとうございます。」
ルミナリエは静かに部屋に入り、彼の前に立った。その姿には、どこか決意が感じられた。

「ヴィクター殿……私は、決めました。」
ルミナリエの声は、静かだがしっかりとした響きを持っていた。

「私は……王宮を去り、あなたと共に生きる道を選びます。」

その言葉に、ヴィクターの目が大きく見開かれる。彼は一瞬言葉を失ったが、すぐに深く頷いた。

「本当に、それでよろしいのですか?」
彼の声には、彼女を思う気持ちが滲んでいた。

「ええ。」
ルミナリエは微笑みながら答えた。
「私は、この場所で生きていくのが、自分にとっての幸せだとは思えません。それに……あなたと共にいれば、どんな道でも歩んでいける気がします。」

その言葉に、ヴィクターは胸が熱くなるのを感じた。彼女が自分を信じてくれている――それは、これまでの人生で手にしたどんな名誉よりも嬉しいものだった。

「ルミナリエ様……ありがとうございます。」
彼は静かに頭を下げた。
「必ず、あなたを幸せにしてみせます。どんな困難が待っていようとも、私はあなたを守ります。」

「……ありがとう、ヴィクター殿。」
ルミナリエは優しく微笑んだ。その瞳には、これまでにない力強さが宿っていた。

その後、ルミナリエはミレイアを呼び寄せた。
「ミレイア、私……決めました。辺境へ向かうことに。」

ミレイアは微笑みながら頷いた。
「素晴らしい決断です、ルミナリエ様。それがあなたにとっての幸せなら、私はそれで十分です。」

「でも、あなたを巻き込むことになってしまうわ。」
ルミナリエの声には申し訳なさが含まれていた。

「お気になさらないでください。」
ミレイアは笑顔で答えた。
「私は、どこまでもお供いたします。ルミナリエ様と共にいることが、私の幸せなのです。」

その言葉に、ルミナリエは心から感謝の気持ちを抱いた。彼女がいてくれるなら、どんな未来でも乗り越えられる――そう感じた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

白い結婚に、猶予を。――冷徹公爵と選び続ける夫婦の話

鷹 綾
恋愛
婚約者である王子から「有能すぎる」と切り捨てられた令嬢エテルナ。 彼女が選んだ新たな居場所は、冷徹と噂される公爵セーブルとの白い結婚だった。 干渉しない。触れない。期待しない。 それは、互いを守るための合理的な選択だったはずなのに―― 静かな日常の中で、二人は少しずつ「選び続けている関係」へと変わっていく。 越えない一線に名前を付け、それを“猶予”と呼ぶ二人。 壊すより、急ぐより、今日も隣にいることを選ぶ。 これは、激情ではなく、 確かな意思で育つ夫婦の物語。

溺愛王子の甘すぎる花嫁~悪役令嬢を追放したら、毎日が新婚初夜になりました~

紅葉山参
恋愛
侯爵令嬢リーシャは、婚約者である第一王子ビヨンド様との結婚を心から待ち望んでいた。けれど、その幸福な未来を妬む者もいた。それが、リーシャの控えめな立場を馬鹿にし、王子を我が物にしようと画策した悪役令嬢ユーリーだった。 ある夜会で、ユーリーはビヨンド様の気を引こうと、リーシャを罠にかける。しかし、あなたの王子は、そんなつまらない小細工に騙されるほど愚かではなかった。愛するリーシャを信じ、王子はユーリーを即座に糾弾し、国外追放という厳しい処分を下す。 邪魔者が消え去った後、リーシャとビヨンド様の甘美な新婚生活が始まる。彼は、人前では厳格な王子として振る舞うけれど、私と二人きりになると、とろけるような甘さでリーシャを愛し尽くしてくれるの。 「私の可愛い妻よ、きみなしの人生なんて考えられない」 そう囁くビヨンド様に、私リーシャもまた、心も身体も預けてしまう。これは、障害が取り除かれたことで、むしろ加速度的に深まる、世界一甘くて幸せな夫婦の溺愛物語。新婚の王子妃として、私は彼の、そして王国の「最愛」として、毎日を幸福に満たされて生きていきます。

完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました

らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。 そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。 しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような… 完結決定済み

離婚を望む悪女は、冷酷夫の執愛から逃げられない

柴田はつみ
恋愛
目が覚めた瞬間、そこは自分が読み終えたばかりの恋愛小説の世界だった——しかも転生したのは、後に夫カルロスに殺される悪女・アイリス。 バッドエンドを避けるため、アイリスは結婚早々に離婚を申し出る。だが、冷たく突き放すカルロスの真意は読めず、街では彼と寄り添う美貌の令嬢カミラの姿が頻繁に目撃され、噂は瞬く間に広まる。 カミラは男心を弄ぶ意地悪な女。わざと二人の関係を深い仲であるかのように吹聴し、アイリスの心をかき乱す。 そんな中、幼馴染クリスが現れ、アイリスを庇い続ける。だがその優しさは、カルロスの嫉妬と誤解を一層深めていき……。 愛しているのに素直になれない夫と、彼を信じられない妻。三角関係が燃え上がる中、アイリスは自分の運命を書き換えるため、最後の選択を迫られる。

愛しの第一王子殿下

みつまめ つぼみ
恋愛
 公爵令嬢アリシアは15歳。三年前に魔王討伐に出かけたゴルテンファル王国の第一王子クラウス一行の帰りを待ちわびていた。  そして帰ってきたクラウス王子は、仲間の訃報を口にし、それと同時に同行していた聖女との婚姻を告げる。  クラウスとの婚約を破棄されたアリシアは、言い寄ってくる第二王子マティアスの手から逃れようと、国外脱出を図るのだった。  そんなアリシアを手助けするフードを目深に被った旅の戦士エドガー。彼とアリシアの逃避行が、今始まる。

女王は若き美貌の夫に離婚を申し出る

小西あまね
恋愛
「喜べ!やっと離婚できそうだぞ!」「……は?」 政略結婚して9年目、32歳の女王陛下は22歳の王配陛下に笑顔で告げた。 9年前の約束を叶えるために……。 豪胆果断だがどこか天然な女王と、彼女を敬愛してやまない美貌の若き王配のすれ違い離婚騒動。 「月と雪と温泉と ~幼馴染みの天然王子と最強魔術師~」の王子の姉の話ですが、独立した話で、作風も違います。 本作は小説家になろうにも投稿しています。

処理中です...