冷徹と噂の辺境伯令嬢ですが、幼なじみ騎士の溺愛が重すぎます

藤原遊

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第二章 学園と婚約者候補

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学園に集う生徒の顔ぶれを見れば、大半は領内貴族の子弟だった。
男爵家や騎士爵家の子どもたち――俺と同じように「仕える側」として育てられてきた者がほとんどだ。

その中で、リシェル様と釣り合う家柄の生徒はわずかしかいない。
王族。宰相家の子息令嬢。公爵や侯爵の子どもたち。
それでもこの年は珍しく多い方だという。
王子の入学に合わせて各家が子を授かるよう努めた結果――そんな噂も耳にした。

当然、辺境伯令嬢であるリシェル様は、この狭い範囲から婿を迎えるべきだと誰もが考えている。
領地のために、魔力の強い血を外から取り入れる必要がある。
そのことを、俺も理解していた。

だからこそ――その時の出会いが胸に突き刺さった。

「初めまして。アルノルト=ディアスと申します」

中庭で、柔らかな声が響いた。
公爵家の三男。
婿入りが可能で、さらに魔道研究に心血を注いでいるという。
辺境伯家にとって、これ以上ない条件の相手だった。

「辺境伯令嬢のお力は以前から伺っております。もしご迷惑でなければ……魔道研究についてお話を伺えませんか」

そう言って頭を下げる姿に、周囲の生徒たちがざわめく。
並び立てば、確かに釣り合って見えた。

「研究、ですか」

リシェル様は少し考えるように目を細め、やがて小さな笑みを浮かべられた。
「……良いでしょう。私も興味があります」

その表情は、剣を握るときとは違う。
静かに知を求める者の輝き。
真摯な言葉に応えるその笑みは、柔らかく――心を許したときにだけ見せるものだった。

俺は知っている。
その笑みを、幼い頃から幾度も見てきた。
冷たい仮面を外し、ごく短い一瞬だけ俺に向けられた、あの微笑みを。

だが今は、別の男に向けられている。

分かっている。
俺は影だ。
辺境伯令嬢が領地のために選ぶのは、こうした「正しい相手」だ。
それが当然の未来。

けれど――想像するだけで胸が焼けた。
いつかこの笑顔が、本当に自分のものではなくなる日が来るのだと。

理性は理解している。
それでも感情はどうしようもなく荒れ狂い、拳を握り締めても抑えきれなかった。

俺は影。
ただ支えるだけの存在。
……なのに、どうしてこれほどまでに嫉妬で胸が締めつけられるのか。
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