冷徹と噂の辺境伯令嬢ですが、幼なじみ騎士の溺愛が重すぎます

藤原遊

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第七章 決戦と真実

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最果ての森の奥は、昼なお薄闇に包まれていた。
鬱蒼と茂る木々の間からは冷たい風が吹き抜け、鼻を突く血と獣臭が漂っている。
鳥の声ひとつなく、聞こえるのは枝を踏み割る音と、兵たちの鎧が擦れる気配のみ。

「……来ます!」

斥候の叫びと同時に、黒い影が木々の間から飛び出した。
魔物――いや、群れを率いているのは明らかに魔族の手だ。
統率が取れ、挟撃の形でこちらを包もうとしていた。

「弓隊、前へ! 一斉射!」

私の声に、張り詰めた弦の音が重なる。
矢の雨が降り注ぎ、先頭の魔物たちが次々と倒れ込んだ。
だが、奥からは新たな咆哮が響き渡り、血走った目を持つ獣が雪崩れ込む。

「前衛、盾を合わせろ! 崩すな!」

鋼が激突し、火花が散った。
大地を揺らす衝撃が続き、押し返されそうになる。
私は杖を掲げ、結界を重ねて味方の列を守る。

「――カイ!」

振り返らずとも、彼の動きはわかる。
影のように半歩後ろから私を護り、必要なときにはすでに前に出ていた。

「はっ!」

鋭い掛け声と共に剣が閃き、獣の首が弾け飛ぶ。
その動きはしなやかで、かつ容赦がない。
血飛沫が降りかかるのを結界で防ぎながら、私は背を預ける。

だが、敵は途切れない。
まるで尽きることのない波のように押し寄せ、精鋭部隊ですら徐々に後退を余儀なくされていく。

「下がるな! ここを抜かせば城が危うい!」

声を張り上げ、兵を鼓舞する。
胸の奥に走る恐怖を押し殺し、ひたすらに冷徹であろうと振る舞った。

だが――わかっている。
冷静であればあるほど、心は凍えていく。

もしここで押し切られたら。
もしこの戦いで命を落とすとしたら、最初に犠牲となるのはカイだ。

その未来を思うだけで、喉が焼けるように痛んだ。

「リシェル様!」

カイの声がすぐ背後から飛ぶ。
彼が私のために剣を振るう音が、耳を打つ。
その一撃一撃が、彼の命を削っているように思えてならなかった。

私は奥歯を噛みしめ、魔力を込める。
炎の奔流が森を薙ぎ払い、咆哮が悲鳴へと変わる。
押し寄せる波が一瞬だけ途絶えた。

「進め! 敵の中枢を叩く!」

この戦いを長引かせれば、守りが崩れる。
ここで決着をつけるしかない――そう己に言い聞かせながら、私は軍勢をさらに森の奥へと導いた。
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