冷徹と噂の辺境伯令嬢ですが、幼なじみ騎士の溺愛が重すぎます

藤原遊

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番外編

エスコート

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城の回廊を歩くとき、カイは軍務中とまるで違う顔をする。
副官としての彼は常に半歩後ろに控え、冷静で揺るぎなく、影のように私を支えてくれる。

けれど――公務を終え、ただの「私」として歩くとき。
彼は当然のように隣に立ち、差し伸べられる手を私が取るのを待っている。

「リシェル様、こちらを」

差し出された腕。
騎士としての所作のはずなのに、その瞳は……あまりに真っ直ぐすぎる。

(どうして、そんな目で……)

軍議の場では決して見せない眼差し。
そこに宿るのは、主従の忠義ではなく、ひとりの男の愛情。
それがひしひしと伝わってきて、心臓が早鐘を打つ。

必死に平生を装い、涼やかな声を作る。

「……ありがとう、カイ」

ほんの短い言葉を返すだけで、喉が渇くほど緊張する。
私が平静を保っているつもりでも、彼にはきっと伝わってしまっているのだろう。

「はい。……リシェル様」

柔らかな声音。
その響きに、足が一瞬もつれそうになった。

――公務の場では半歩後ろ。
だが、こうして廊下を歩くたびに思い知らされる。
彼はもう、私の隣を歩く人なのだと。

それを誇らしく思うと同時に、どうしようもなく照れくさくて。
私は顔を逸らし、無理やり何事もないように歩みを進めるのだった。
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