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30章 地下迷宮
③
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遺跡の深部に進むにつれ、空気は次第に重くなっていった。三人は慎重に足を進めながらも、会話を交わしていた。
「……俺もつくづく浮いていると思うよ。」
ルイスがふいに呟いた。アリアが不思議そうに振り返る。
「何が?」
「こうしてお前たちと一緒に旅をしていること自体がさ。」
彼の言葉は軽い調子だったが、その背中にはどこか影が差しているように見えた。
「俺はテミス家の剣士だ。本来なら王族や貴族に仕えるべき存在だが……いまだに主人を持たない。」
イアンが歩みを止めてルイスに視線を向ける。
「それで何が問題だ?」
「何が問題か……か。お前には分からないだろうな。」
ルイスは肩をすくめ、続けた。
「俺の剣技も、忠誠も、持ち主がいなければただの飾りだ。そう教えられてきた。それなのに……俺には仕える相手がいないんだ。」
その言葉に、アリアが少しだけ眉をひそめる。
「……でも、それって変じゃない?」
「何が変なんだ?」
ルイスが少し驚いたように問い返すと、アリアはまっすぐに言葉を返した。
「誰かに仕えなきゃ、自分の剣が輝けないなんてことないでしょ。ルイスが強いのは、ルイス自身が頑張ってきたからじゃないの?」
その言葉に、ルイスはしばし黙り込んだ。
焚き火を囲む夜、ルイスは剣を膝に置いてじっと見つめていた。アリアとイアンが眠りについた後、一人で考え込む。
(……アリアの言うことが正しいのかもしれない。それでも、俺の中に空虚感が消えないのはなぜだ。)
剣を握る手に力が入る。
(主人を持つことがテミス家の剣士の誇りだ。それがない俺は、本当に誇り高い存在と言えるのか。)
ルイスの脳裏に、病弱だった妹セリーナの笑顔が浮かぶ。
「ルイス兄様、どうかお兄様自身のために剣を振るってください……」
妹の言葉は優しかったが、その優しさが逆にルイスを縛っているようにも感じた。
「……俺自身のため、か。」
彼は焚き火を見つめながら、小さく溜息をついた。
翌日、三人はさらに遺跡の奥深くへと進んでいた。途中、古代の魔法で仕掛けられた罠に足を踏み入れてしまう。
「くっ……これ、まずいんじゃない?」
アリアが盾を構えながら叫ぶと、壁から次々と矢が飛び出してくる。
「俺が障壁を張る! イアン、援護を頼む!」
ルイスが瞬時に魔力障壁を展開し、前方の矢を防ぐ。その隙にイアンが土魔法で罠の動きを封じ、アリアが敵の魔法陣を破壊していく。
「よし、これで大丈夫……!」
罠が完全に停止した時、ルイスは剣を鞘に収めながら呟いた。
「……俺がいなかったら、今のはどうなっていた?」
アリアが笑いながら答える。
「そりゃあ、困ってたに決まってるじゃん!」
その言葉に、ルイスはわずかに目を細めた。
「そうか。俺にも役目があった、ということか。」
遺跡内の休憩所で、三人が焚き火を囲む。
「ルイス、さっきの話だけどさ。」
アリアが突然切り出し、ルイスが彼女に視線を向ける。
「あんたの剣、誰かに仕えるためのものじゃなくて、自分で振るうためにあるんじゃない?」
ルイスは少し驚いた顔を見せた後、静かに笑った。
「……お前がそう言うなら、そうなのかもしれないな。」
一方、イアンは何も言わず、ただルイスの言葉を聞いていた。しかし、内心では彼に同意していた。
(自分の力をどう使うかは、自分で決めるものだ。)
「……俺もつくづく浮いていると思うよ。」
ルイスがふいに呟いた。アリアが不思議そうに振り返る。
「何が?」
「こうしてお前たちと一緒に旅をしていること自体がさ。」
彼の言葉は軽い調子だったが、その背中にはどこか影が差しているように見えた。
「俺はテミス家の剣士だ。本来なら王族や貴族に仕えるべき存在だが……いまだに主人を持たない。」
イアンが歩みを止めてルイスに視線を向ける。
「それで何が問題だ?」
「何が問題か……か。お前には分からないだろうな。」
ルイスは肩をすくめ、続けた。
「俺の剣技も、忠誠も、持ち主がいなければただの飾りだ。そう教えられてきた。それなのに……俺には仕える相手がいないんだ。」
その言葉に、アリアが少しだけ眉をひそめる。
「……でも、それって変じゃない?」
「何が変なんだ?」
ルイスが少し驚いたように問い返すと、アリアはまっすぐに言葉を返した。
「誰かに仕えなきゃ、自分の剣が輝けないなんてことないでしょ。ルイスが強いのは、ルイス自身が頑張ってきたからじゃないの?」
その言葉に、ルイスはしばし黙り込んだ。
焚き火を囲む夜、ルイスは剣を膝に置いてじっと見つめていた。アリアとイアンが眠りについた後、一人で考え込む。
(……アリアの言うことが正しいのかもしれない。それでも、俺の中に空虚感が消えないのはなぜだ。)
剣を握る手に力が入る。
(主人を持つことがテミス家の剣士の誇りだ。それがない俺は、本当に誇り高い存在と言えるのか。)
ルイスの脳裏に、病弱だった妹セリーナの笑顔が浮かぶ。
「ルイス兄様、どうかお兄様自身のために剣を振るってください……」
妹の言葉は優しかったが、その優しさが逆にルイスを縛っているようにも感じた。
「……俺自身のため、か。」
彼は焚き火を見つめながら、小さく溜息をついた。
翌日、三人はさらに遺跡の奥深くへと進んでいた。途中、古代の魔法で仕掛けられた罠に足を踏み入れてしまう。
「くっ……これ、まずいんじゃない?」
アリアが盾を構えながら叫ぶと、壁から次々と矢が飛び出してくる。
「俺が障壁を張る! イアン、援護を頼む!」
ルイスが瞬時に魔力障壁を展開し、前方の矢を防ぐ。その隙にイアンが土魔法で罠の動きを封じ、アリアが敵の魔法陣を破壊していく。
「よし、これで大丈夫……!」
罠が完全に停止した時、ルイスは剣を鞘に収めながら呟いた。
「……俺がいなかったら、今のはどうなっていた?」
アリアが笑いながら答える。
「そりゃあ、困ってたに決まってるじゃん!」
その言葉に、ルイスはわずかに目を細めた。
「そうか。俺にも役目があった、ということか。」
遺跡内の休憩所で、三人が焚き火を囲む。
「ルイス、さっきの話だけどさ。」
アリアが突然切り出し、ルイスが彼女に視線を向ける。
「あんたの剣、誰かに仕えるためのものじゃなくて、自分で振るうためにあるんじゃない?」
ルイスは少し驚いた顔を見せた後、静かに笑った。
「……お前がそう言うなら、そうなのかもしれないな。」
一方、イアンは何も言わず、ただルイスの言葉を聞いていた。しかし、内心では彼に同意していた。
(自分の力をどう使うかは、自分で決めるものだ。)
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