【完結】後宮の片隅にいた王女を拾いましたが、才女すぎて妃にしたくなりました

藤原遊

文字の大きさ
12 / 63

11

しおりを挟む
翌朝、ルナ離宮・執務室。
朝の柔らかな光が書類を照らす中、私は手を止めてふと昨日の光景を思い返していた。

「……いやはや、驚かされましたな」

ノルベルトが、苦笑混じりに静かに呟く。

「カティア殿下の観察眼もさることながら――あの傾聴の技術。まるで幾度も宮廷交渉を経験してきたかのような老練ぶりでした」

「本当に、そう思うよ」

私は手元の書簡を閉じ、小さく息を吐いた。

「相手の表情、間の取り方、声の抑揚、隠された本音の所在……見事に把握していた。あの場にいた妃たちも、まさか彼女が情報を引き出していたとは気付くまい」

「殿下が外交へお連れになる日も、そう遠くないかもしれませぬな」

「いや、もはや今すぐにでも連れて行けるだろう」

私は素直にそう呟いた。

(ここまで才覚を備えているとは――埋もれていた年月が惜しい)

だが――

「……ふふ」

私は思わず小さく笑ってしまった。

「どうかなされましたか?」

「いや。いや、なに……」

私は自分の内心に少し戸惑っていた。

昨日の帰り道。
王宮内で買い求めた珍しい新作菓子を手渡した時のことが、ふと胸によみがえっていた。

「まあ……初めて見るお菓子です」

いつもの冷静な仮面をほんの僅かに外して、驚きと嬉しさが滲む声色。
警戒心ではなく、年相応の少女らしい純粋な好奇心が顔を覗かせていた。

「いただきます」

そう言って嬉しそうに菓子を頬張る彼女の表情――
それが、妙に印象に残っている。

(……可愛い、か)

私は内心で呟き、少しだけ首を振った。
今まで彼女を「才ある王女」として見ていた自分に、微かな変化が芽生えているのを自覚する。

「殿下?」

ノルベルトが、わずかに口元を引き結びながらこちらを窺っていた。

「……まだ幼い。私にとっては、妹のようなものだ」

私は静かに言い切った。

ノルベルトは苦笑しながら、控えめに頷いた。

「――ええ、もちろん、そのように理解しております」

その声音には、皮肉とも遠慮ともつかぬ柔らかな含みがあったが――
私はあえてそれ以上は追及しなかった。

視線を戻した執務机の上で、朝陽に照らされる書簡の文字がやけに鮮やかに映っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼な妻は年上夫を落としたい ~妹のように溺愛されても足りないの~

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
恋愛
この人が私の夫……政略結婚だけど、一目惚れです! 12歳にして、戦争回避のために隣国の王弟に嫁ぐことになった末っ子姫アンジェル。15歳も年上の夫に会うなり、一目惚れした。彼のすべてが大好きなのに、私は年の離れた妹のように甘やかされるばかり。溺愛もいいけれど、妻として愛してほしいわ。  両片思いの擦れ違い夫婦が、本物の愛に届くまで。ハッピーエンド確定です♪  ハッピーエンド確定 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/07/06……完結 2024/06/29……本編完結 2024/04/02……エブリスタ、トレンド恋愛 76位 2024/04/02……アルファポリス、女性向けHOT 77位 2024/04/01……連載開始

不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。

翼 うみ
恋愛
父の会社を立て直す交換条件のため、ほぼ家族に身売りされた形で関東最大級の極道・桜花組の次期組長に嫁入りしたジェシカ。しかし母を亡くして以降、義母と義妹に虐げられていたジェシカは実家を出られるなら、と前向きだった。夫となる和仁には「君を愛することはない」と冷たく突き放される。それでもジェシカは傷つくことはなく、自分にできることを探して楽しんでいた。 和仁には辛い過去がありそれ故に誰のことも愛さないと決めていたが、純真で健気なジェシカに段々と惹かれてゆき――。 政略結婚から始まる溺愛シンデレラストーリー。

「俺にしがみつくのはやめろ」と言われて恋が覚めたので、しがみつかずにリリースします。相容れないとほざくあなたは、今、私に捨てられましたわ

西野歌夏
恋愛
前世でフラれた記憶を思いだしたフローラ・ガトバンは、18歳の伯爵令嬢だ。今まさにデジャブのように同じ光景を見ていた。 エイトレンスのアルベルト王太子にまつわるストーリーです。 ※の付いたタイトルは、あからさまな性的表現を含みます。苦手な方はお気をつけていただければと思います。 2025.5.29 完結いたしました。

【完結】氷狼魔術師長様と私の、甘い契約結婚~実は溺愛されていたなんて聞いていません!~

雨宮羽那
恋愛
 魔術国家アステリエで事務官として働くセレフィアは、義理の家族に給料を奪われ、婚期を逃した厄介者として扱われていた。  そんなある日、上司である魔術師長・シリウスが事務室へやってきて、「私と結婚してください」と言い放った!  詳しく話を聞けば、どうやらシリウスにも事情があるようで、契約結婚の話を持ちかけられる。  家から抜け出るきっかけだと、シリウスとの結婚を決意するセレフィア。  同居生活が始まるが、シリウスはなぜかしれっとセレフィアを甘やかしてくる!? 「これは契約結婚のはずですよね!?」  ……一方セレフィアがいなくなった義理の家族は、徐々に狂い始めて……? ◇◇◇◇  恋愛小説大賞に応募しています。  お気に入り登録、♡、感想などいただければ、作者が大変喜びます( . .)"  モチベになるので良ければ応援していただけると嬉しいです! ※この作品は「小説家になろう」様にも掲載しております。 ※表紙はAIイラストです。文字入れは「装丁カフェ」様を使用しております。 ※小説内容にはAI不使用です。

恐怖侯爵の後妻になったら、「君を愛することはない」と言われまして。

長岡更紗
恋愛
落ちぶれ子爵令嬢の私、レディアが後妻として嫁いだのは──まさかの恐怖侯爵様! しかも初夜にいきなり「君を愛することはない」なんて言われちゃいましたが? だけど、あれ? 娘のシャロットは、なんだかすごく懐いてくれるんですけど! 義理の娘と仲良くなった私、侯爵様のこともちょっと気になりはじめて…… もしかして、愛されるチャンスあるかも? なんて思ってたのに。 「前妻は雲隠れした」って噂と、「死んだのよ」って娘の言葉。 しかも使用人たちは全員、口をつぐんでばかり。 ねえ、どうして?  前妻さんに何があったの? そして、地下から聞こえてくる叫び声は、一体!? 恐怖侯爵の『本当の顔』を知った時。 私の心は、思ってもみなかった方向へ動き出す。 *他サイトにも公開しています

氷の宰相補佐と押しつけられた厄災の花嫁

瑞原唯子
恋愛
王命により、アイザックはまだ十歳の少女を妻として娶ることになった。 彼女は生後まもなく始末されたはずの『厄災の姫』である。最近になって生存が判明したが、いまさら王家に迎え入れることも始末することもできない——悩んだ末、国王は序列一位のシェフィールド公爵家に押しつけたのだ。

冷遇された妻は愛を求める

チカフジ ユキ
恋愛
結婚三年、子供ができないという理由で夫ヘンリーがずっと身体の関係を持っていた女性マリアを連れてきた。 そして、今後は彼女をこの邸宅の女主として仕えよと使用人に命じる。 正妻のアリーシアは離れに追い出され、冷遇される日々。 離婚したくても、金づるであるアリーシアをそう簡単には手放してはくれなかった。 しかし、そんな日々もある日突然終わりが来る。 それは父親の死から始まった。

本の虫令嬢ですが「君が番だ! 間違いない」と、竜騎士様が迫ってきます

氷雨そら
恋愛
 本の虫として社交界に出ることもなく、婚約者もいないミリア。 「君が番だ! 間違いない」 (番とは……!)  今日も読書にいそしむミリアの前に現れたのは、王都にたった一人の竜騎士様。  本好き令嬢が、強引な竜騎士様に振り回される竜人の番ラブコメ。 小説家になろう様にも投稿しています。

処理中です...