【完結】後宮の片隅にいた王女を拾いましたが、才女すぎて妃にしたくなりました

藤原遊

文字の大きさ
32 / 63

31

しおりを挟む
午後、ルナ離宮の広間には、贅を尽くした宝飾品や衣装がずらりと並べられていた。
王宮御用達の商人たちが、誕生日祝いの追加品を携えて集められたのである。

「さあ、カティア。今日は君が欲しいものを、好きなだけ選んでくれて構わないよ」

ユーリとしては、初めての誕生日をもっと特別な思い出にしてやりたかった。
だからこそ――少々、いや、かなり張り切って商人たちを呼び寄せたのだ。

「で、ですが……もう昨日たくさん頂きましたし……」

カティアは小さく戸惑い、控えめに両手を胸元で重ねる。

「いいんだ。昨日はあくまで正式な贈り物だよ。今日は“私からの我儘”さ。妃となった君には、それを受け取ってもらう権利がある」

「……我儘、ですか?」

「そう。――君を飾ることが、今の私の何よりの愉しみなのだから」

まるで絵に描いたような甘い口説き文句を、自然に口に出してしまう。
もはや自覚すら薄いのだから、我ながら重症だとすら思う。

その言葉に、カティアの頬がほんのり赤く染まる。

「……では、一つだけ。お願いしてもいいですか?」

「もちろん。何でも仰ってくれ」

少し迷った後、カティアは視線を伏せがちに言った。

「その……ユーリとお揃いのものが、欲しいです」

私は思わず一瞬だけ息を飲んだ。

(……今、なんと?)

あまりに可愛い申し出に、心臓が跳ねる。

「……嬉しいよ、カティア」

微笑みながら、そっと彼女の手を取る。

「では、君と私に似合う品を、一緒に選ぼう。二人にだけ通じる、特別なお揃いを」

「……はい」

嬉しそうに頷くカティアの表情に、再び私の理性は揺さぶられた。

◇ ◇ ◇

こうして始まった“お揃い探し”は、まさに幸せなひとときだった。

淡い青を基調にした小さな髪飾り。
男性用には控えめに襟元へ留める装飾ピンが仕立てられる。

「この宝石の色……ユーリの瞳に似ています」

「君の髪に映える色でもある。ほら、こうだ――」

私は自らの手で、試着用の髪飾りをカティアの髪にそっと差し込んでみせた。

鮮やかな青が、亜麻色の髪に映え、カティアの可憐さをいっそう引き立てていた。

「……とても、お似合いだ。危うく、誰にも見せたくなくなるところだったよ」

「ゆ、ユーリ……っ」

顔を真っ赤にしながら視線を逸らすカティア。

その反応すらも愛しく思えて、私はさらに追撃を仕掛けた。

「……だが同時に、皆に見せびらかしたい気持ちもある。こんなに可愛らしく、私の妃に相応しい存在なのだと――」

「~~っ……もう、からかわないでください……」

「からかってなどいないさ。すべて本心だよ?」

――商人たちはというと、完全にこの空気には慣れたようで、黙々と商品を差し出しながら、時折苦笑を交わしている。

「殿下、こちらの刺繍入りのマントなども対になりますが」

「うん。良いね。これもいただこう」

次々と揃っていく、まるで舞踏会用の対の衣装や装飾品。
もはや周囲の空気は完全に『新婚の甘すぎるお買い物タイム』となっていた。

(……君の隣に、いつまでもこうして並び立ちたい)

眩しそうに笑うカティアを見つめながら、私はそっと心の中で願っていた。

◇ ◇ ◇

そして――この夜も、再び私の部屋でふたりきりの穏やかな時間が待っている。

それはまた別の甘美な物語として、幕を開けようとしていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼な妻は年上夫を落としたい ~妹のように溺愛されても足りないの~

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
恋愛
この人が私の夫……政略結婚だけど、一目惚れです! 12歳にして、戦争回避のために隣国の王弟に嫁ぐことになった末っ子姫アンジェル。15歳も年上の夫に会うなり、一目惚れした。彼のすべてが大好きなのに、私は年の離れた妹のように甘やかされるばかり。溺愛もいいけれど、妻として愛してほしいわ。  両片思いの擦れ違い夫婦が、本物の愛に届くまで。ハッピーエンド確定です♪  ハッピーエンド確定 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/07/06……完結 2024/06/29……本編完結 2024/04/02……エブリスタ、トレンド恋愛 76位 2024/04/02……アルファポリス、女性向けHOT 77位 2024/04/01……連載開始

不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。

翼 うみ
恋愛
父の会社を立て直す交換条件のため、ほぼ家族に身売りされた形で関東最大級の極道・桜花組の次期組長に嫁入りしたジェシカ。しかし母を亡くして以降、義母と義妹に虐げられていたジェシカは実家を出られるなら、と前向きだった。夫となる和仁には「君を愛することはない」と冷たく突き放される。それでもジェシカは傷つくことはなく、自分にできることを探して楽しんでいた。 和仁には辛い過去がありそれ故に誰のことも愛さないと決めていたが、純真で健気なジェシカに段々と惹かれてゆき――。 政略結婚から始まる溺愛シンデレラストーリー。

「俺にしがみつくのはやめろ」と言われて恋が覚めたので、しがみつかずにリリースします。相容れないとほざくあなたは、今、私に捨てられましたわ

西野歌夏
恋愛
前世でフラれた記憶を思いだしたフローラ・ガトバンは、18歳の伯爵令嬢だ。今まさにデジャブのように同じ光景を見ていた。 エイトレンスのアルベルト王太子にまつわるストーリーです。 ※の付いたタイトルは、あからさまな性的表現を含みます。苦手な方はお気をつけていただければと思います。 2025.5.29 完結いたしました。

【完結】氷狼魔術師長様と私の、甘い契約結婚~実は溺愛されていたなんて聞いていません!~

雨宮羽那
恋愛
 魔術国家アステリエで事務官として働くセレフィアは、義理の家族に給料を奪われ、婚期を逃した厄介者として扱われていた。  そんなある日、上司である魔術師長・シリウスが事務室へやってきて、「私と結婚してください」と言い放った!  詳しく話を聞けば、どうやらシリウスにも事情があるようで、契約結婚の話を持ちかけられる。  家から抜け出るきっかけだと、シリウスとの結婚を決意するセレフィア。  同居生活が始まるが、シリウスはなぜかしれっとセレフィアを甘やかしてくる!? 「これは契約結婚のはずですよね!?」  ……一方セレフィアがいなくなった義理の家族は、徐々に狂い始めて……? ◇◇◇◇  恋愛小説大賞に応募しています。  お気に入り登録、♡、感想などいただければ、作者が大変喜びます( . .)"  モチベになるので良ければ応援していただけると嬉しいです! ※この作品は「小説家になろう」様にも掲載しております。 ※表紙はAIイラストです。文字入れは「装丁カフェ」様を使用しております。 ※小説内容にはAI不使用です。

恐怖侯爵の後妻になったら、「君を愛することはない」と言われまして。

長岡更紗
恋愛
落ちぶれ子爵令嬢の私、レディアが後妻として嫁いだのは──まさかの恐怖侯爵様! しかも初夜にいきなり「君を愛することはない」なんて言われちゃいましたが? だけど、あれ? 娘のシャロットは、なんだかすごく懐いてくれるんですけど! 義理の娘と仲良くなった私、侯爵様のこともちょっと気になりはじめて…… もしかして、愛されるチャンスあるかも? なんて思ってたのに。 「前妻は雲隠れした」って噂と、「死んだのよ」って娘の言葉。 しかも使用人たちは全員、口をつぐんでばかり。 ねえ、どうして?  前妻さんに何があったの? そして、地下から聞こえてくる叫び声は、一体!? 恐怖侯爵の『本当の顔』を知った時。 私の心は、思ってもみなかった方向へ動き出す。 *他サイトにも公開しています

氷の宰相補佐と押しつけられた厄災の花嫁

瑞原唯子
恋愛
王命により、アイザックはまだ十歳の少女を妻として娶ることになった。 彼女は生後まもなく始末されたはずの『厄災の姫』である。最近になって生存が判明したが、いまさら王家に迎え入れることも始末することもできない——悩んだ末、国王は序列一位のシェフィールド公爵家に押しつけたのだ。

冷遇された妻は愛を求める

チカフジ ユキ
恋愛
結婚三年、子供ができないという理由で夫ヘンリーがずっと身体の関係を持っていた女性マリアを連れてきた。 そして、今後は彼女をこの邸宅の女主として仕えよと使用人に命じる。 正妻のアリーシアは離れに追い出され、冷遇される日々。 離婚したくても、金づるであるアリーシアをそう簡単には手放してはくれなかった。 しかし、そんな日々もある日突然終わりが来る。 それは父親の死から始まった。

本の虫令嬢ですが「君が番だ! 間違いない」と、竜騎士様が迫ってきます

氷雨そら
恋愛
 本の虫として社交界に出ることもなく、婚約者もいないミリア。 「君が番だ! 間違いない」 (番とは……!)  今日も読書にいそしむミリアの前に現れたのは、王都にたった一人の竜騎士様。  本好き令嬢が、強引な竜騎士様に振り回される竜人の番ラブコメ。 小説家になろう様にも投稿しています。

処理中です...