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アルセリア王国――かつて私がリディア妃殿下へ求婚を申し出た国。
今となっては、あの時の行動を思い返しては、ただただ苦笑するばかりだ。
今回は、アレクシス殿下からの縁談申し出を辞退する形となった謝罪と、改めての親善訪問という名目での来訪だ。
(……まさか、こんな形で再訪するとは)
馬車の中。窓の外を眺めるカティアは、少しだけ緊張した面持ちを浮かべている。
けれど、その背筋はしっかりと伸び、正妃としての気高さが感じられた。
「緊張している?」
私は小さく声をかける。
「……少しだけ。でも、ユーリが隣にいてくださるので平気です」
その言葉に、私は自然と微笑んだ。
やがて馬車が宮殿の前に着き、待ち構えていたのはアレクシス殿下とリディア様、そして王太子夫妻――王太子殿下と、聖女サクラ殿下だった。
「ようこそ、アルセリア王国へ」
「このたびも、温かなご歓待に感謝いたします、アレクシス殿下」
互いに礼を交わし、カティアも優美な動作で深く頭を下げる。
「改めて、今回の縁談辞退に際し、ご厚意に感謝するとともに、ご迷惑をおかけしましたこと、お詫び申し上げます」
「いえ、貴殿らしい誠実な対応と拝察しています」
アレクシス殿下は静かに微笑んだ。
(……まあ、殿下のあの縁談は、発破をかけるつもりでのことだったのだろうが)
だが――
「それよりも、カティア殿下」
リディア様が穏やかな笑みを浮かべ、カティアにそっと歩み寄った。
「無理はしていませんか? 突然の成婚と伺って、ずっと気にかけておりましたの」
カティアはほんのり頬を染めつつ、けれどしっかりと答える。
「ありがとうございます、リディア殿下。ユーリはとても優しくしてくださいます。私は――幸せです」
その慎ましくも穏やかな答えに、リディア様は安堵の表情を浮かべた。
「それなら何よりですわ。以前お会いした時も、貴女はとても利発で可愛らしく――あの時から、私も貴女を気に入っておりましたの」
「もったいないお言葉、ありがとうございます、リディア殿下」
カティアが丁寧に礼を返す。
その様子を見ていたサクラ殿下が、ぱっと表情を明るくした。
「本当にお似合いですわ! 前にお会いしたときも思いましたけれど……まさかお二人が本当にご成婚なさるなんて! 最初にお聞きした時は、驚いて声が出ませんでしたの」
「サクラ殿下にも祝福していただけて、光栄です」
カティアはにこやかに微笑んで応えた。
そのやり取りを、アレクシス殿下も静かに見守っていた。
私はその様子を眺めながら、そっとカティアの肩に手を置く。
微笑む私に、アレクシス殿下がどこか苦笑を含んだ視線を向けてきた。
(……やはり、お見通しということか)
だが今となっては、駆け引きも終わり、ただ友好と家族の温かな空気が広がっていた。
──
こうして、アルセリア王国訪問の幕は静かに開いた。
今となっては、あの時の行動を思い返しては、ただただ苦笑するばかりだ。
今回は、アレクシス殿下からの縁談申し出を辞退する形となった謝罪と、改めての親善訪問という名目での来訪だ。
(……まさか、こんな形で再訪するとは)
馬車の中。窓の外を眺めるカティアは、少しだけ緊張した面持ちを浮かべている。
けれど、その背筋はしっかりと伸び、正妃としての気高さが感じられた。
「緊張している?」
私は小さく声をかける。
「……少しだけ。でも、ユーリが隣にいてくださるので平気です」
その言葉に、私は自然と微笑んだ。
やがて馬車が宮殿の前に着き、待ち構えていたのはアレクシス殿下とリディア様、そして王太子夫妻――王太子殿下と、聖女サクラ殿下だった。
「ようこそ、アルセリア王国へ」
「このたびも、温かなご歓待に感謝いたします、アレクシス殿下」
互いに礼を交わし、カティアも優美な動作で深く頭を下げる。
「改めて、今回の縁談辞退に際し、ご厚意に感謝するとともに、ご迷惑をおかけしましたこと、お詫び申し上げます」
「いえ、貴殿らしい誠実な対応と拝察しています」
アレクシス殿下は静かに微笑んだ。
(……まあ、殿下のあの縁談は、発破をかけるつもりでのことだったのだろうが)
だが――
「それよりも、カティア殿下」
リディア様が穏やかな笑みを浮かべ、カティアにそっと歩み寄った。
「無理はしていませんか? 突然の成婚と伺って、ずっと気にかけておりましたの」
カティアはほんのり頬を染めつつ、けれどしっかりと答える。
「ありがとうございます、リディア殿下。ユーリはとても優しくしてくださいます。私は――幸せです」
その慎ましくも穏やかな答えに、リディア様は安堵の表情を浮かべた。
「それなら何よりですわ。以前お会いした時も、貴女はとても利発で可愛らしく――あの時から、私も貴女を気に入っておりましたの」
「もったいないお言葉、ありがとうございます、リディア殿下」
カティアが丁寧に礼を返す。
その様子を見ていたサクラ殿下が、ぱっと表情を明るくした。
「本当にお似合いですわ! 前にお会いしたときも思いましたけれど……まさかお二人が本当にご成婚なさるなんて! 最初にお聞きした時は、驚いて声が出ませんでしたの」
「サクラ殿下にも祝福していただけて、光栄です」
カティアはにこやかに微笑んで応えた。
そのやり取りを、アレクシス殿下も静かに見守っていた。
私はその様子を眺めながら、そっとカティアの肩に手を置く。
微笑む私に、アレクシス殿下がどこか苦笑を含んだ視線を向けてきた。
(……やはり、お見通しということか)
だが今となっては、駆け引きも終わり、ただ友好と家族の温かな空気が広がっていた。
──
こうして、アルセリア王国訪問の幕は静かに開いた。
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