11 / 153
第3章 人手不足解消
1
しおりを挟む
コンパクトシティ化が終わり、縮小された新しい領都を歩いてみたくなった。
もっとも、領主一族が不用意に外を出歩くのは危険だとわかっていたから、今日はお忍び。ついてきてくれるのは、いつものグレーテだ。
「……ふむ。思ったより人の顔色が明るいね」
「ええ、お嬢様。領都が小さくなって、移動や管理がしやすくなったのも大きいのでしょう」
市場には、前よりも少しだけ活気が戻っていた。
露店の数は少ないが、子どもが駆け回る声があるだけで、街が生きていると感じる。
私は胸を撫でおろしながらも、心の片隅ではまだ不安を拭えずにいた。
やがて、区画外になった旧領都部分へ足を伸ばす。
そこには、昨日まで確かに建物が立ち並んでいたはずの街並みが、跡形もなく消えていた。
更地になった土地は、草すら生えていない。焼け野原のような静けさに、思わず足を止める。
(……あの一瞬で、こんなふうになるんだ)
地図を媒介に、領主一族の魔力で街の形を動かす――。
昨日、自分もその力の一端を担った。
けれど実際に目にすると、その恐ろしさに背筋が冷たくなる。
「素晴らしいですね。魔力とは、これほどのものを可能にするのですから」
横でグレーテが穏やかに言った。
私は思わず彼女を振り返る。
「……え、素晴らしいの?」
「はい。これほど迅速に形を変えられるのは、領主一族あってこそです」
彼女は誇らしげに微笑んでいた。
私にとっては「怖さ」でしかなかったのに、彼女にとっては「誇り」なのだ。
(……感覚が、違う)
ここはやっぱり、私が生まれた日本じゃない。異世界なんだと、改めて思い知らされる。
そんなふうに歩を進めていると、市場の端でふと目を留めた。
平民の少年が、手にした魔道具をあっさりと起動させている。
灯りをともす程度の簡単なものだが、魔力がなければ扱えないはずだ。
(……え、魔力もちって、洗礼式で確認されて、下位貴族になるんじゃなかったの?)
驚いてグレーテを見ると、彼女は当然といった顔で首を傾げた。
「養子入り先が見つからなければ、平民のままですよ」
「……は?」
思わず声が裏返った。
衝撃の大きさに、足が止まる。
人手不足というか、魔力不足で領地が沈みかけているのに、魔力もちを平民のまま放置している――?
(……これ、致命的すぎない?)
頭の中に警鐘が鳴り響いた。
もっとも、領主一族が不用意に外を出歩くのは危険だとわかっていたから、今日はお忍び。ついてきてくれるのは、いつものグレーテだ。
「……ふむ。思ったより人の顔色が明るいね」
「ええ、お嬢様。領都が小さくなって、移動や管理がしやすくなったのも大きいのでしょう」
市場には、前よりも少しだけ活気が戻っていた。
露店の数は少ないが、子どもが駆け回る声があるだけで、街が生きていると感じる。
私は胸を撫でおろしながらも、心の片隅ではまだ不安を拭えずにいた。
やがて、区画外になった旧領都部分へ足を伸ばす。
そこには、昨日まで確かに建物が立ち並んでいたはずの街並みが、跡形もなく消えていた。
更地になった土地は、草すら生えていない。焼け野原のような静けさに、思わず足を止める。
(……あの一瞬で、こんなふうになるんだ)
地図を媒介に、領主一族の魔力で街の形を動かす――。
昨日、自分もその力の一端を担った。
けれど実際に目にすると、その恐ろしさに背筋が冷たくなる。
「素晴らしいですね。魔力とは、これほどのものを可能にするのですから」
横でグレーテが穏やかに言った。
私は思わず彼女を振り返る。
「……え、素晴らしいの?」
「はい。これほど迅速に形を変えられるのは、領主一族あってこそです」
彼女は誇らしげに微笑んでいた。
私にとっては「怖さ」でしかなかったのに、彼女にとっては「誇り」なのだ。
(……感覚が、違う)
ここはやっぱり、私が生まれた日本じゃない。異世界なんだと、改めて思い知らされる。
そんなふうに歩を進めていると、市場の端でふと目を留めた。
平民の少年が、手にした魔道具をあっさりと起動させている。
灯りをともす程度の簡単なものだが、魔力がなければ扱えないはずだ。
(……え、魔力もちって、洗礼式で確認されて、下位貴族になるんじゃなかったの?)
驚いてグレーテを見ると、彼女は当然といった顔で首を傾げた。
「養子入り先が見つからなければ、平民のままですよ」
「……は?」
思わず声が裏返った。
衝撃の大きさに、足が止まる。
人手不足というか、魔力不足で領地が沈みかけているのに、魔力もちを平民のまま放置している――?
(……これ、致命的すぎない?)
頭の中に警鐘が鳴り響いた。
358
あなたにおすすめの小説
存在しないことにされていた管理ギフトの少女、王宮で真の家族に出会う 〜冷遇された日々は、王宮での溺愛で上書きします〜
小豆缶
恋愛
「願った結果を、ほんの少しだけ変えてしまう力」
私に与えられたギフトは、才能というにはあまりにも残酷な自分も人の運命も狂わせるギフトだった。
そのあまりの危うさと国からの管理を逃れるために、リリアーナは、生まれたことそのものが秘匿され、軟禁され、育てられる。
しかし、純粋な心が願うギフトは、ある出来事をきっかけに発動され、運命が動き出す。
二度とそのギフトを使わないと決めて生きてきたのよ
だが、自分にせまる命の危機ーー
逃げていた力と再び向き合わなければならない状況は、ある日、突然訪れる。
残酷なギフトは、リリアーナを取り巻く人たちの、過去、未来に影響し、更には王宮の過去の闇も暴いていく。
私の愛する人がどうか幸せになりますように...
そう、リリアーナが願ったギフトは、どう愛する人に届くのか?
孤独だったリリアーナのギフトが今、王宮で本当の幸せを見つけるために動き始める
悪役令嬢の身代わりで追放された侍女、北の地で才能を開花させ「氷の公爵」を溶かす
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の罪は、万死に値する!」
公爵令嬢アリアンヌの罪をすべて被せられ、侍女リリアは婚約破棄の茶番劇のスケープゴートにされた。
忠誠を尽くした主人に裏切られ、誰にも信じてもらえず王都を追放される彼女に手を差し伸べたのは、彼女を最も蔑んでいたはずの「氷の公爵」クロードだった。
「君が犯人でないことは、最初から分かっていた」
冷徹な仮面の裏に隠された真実と、予想外の庇護。
彼の領地で、リリアは内に秘めた驚くべき才能を開花させていく。
一方、有能な「影」を失った王太子と悪役令嬢は、自滅の道を転がり落ちていく。
これは、地味な侍女が全てを覆し、世界一の愛を手に入れる、痛快な逆転シンデレラストーリー。
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
死んでるはずの私が溺愛され、いつの間にか救国して、聖女をざまぁしてました。
みゅー
恋愛
異世界へ転生していると気づいたアザレアは、このままだと自分が死んでしまう運命だと知った。
同時にチート能力に目覚めたアザレアは、自身の死を回避するために奮闘していた。するとなぜか自分に興味なさそうだった王太子殿下に溺愛され、聖女をざまぁし、チート能力で世界を救うことになり、国民に愛される存在となっていた。
そんなお話です。
以前書いたものを大幅改稿したものです。
フランツファンだった方、フランツフラグはへし折られています。申し訳ありません。
六十話程度あるので改稿しつつできれば一日二話ずつ投稿しようと思います。
また、他シリーズのサイデューム王国とは別次元のお話です。
丹家栞奈は『モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します』に出てくる人物と同一人物です。
写真の花はリアトリスです。
ギルドの受付嬢はうごかない ~定時に帰りたいので、一歩も動かず事件を解きます~
ぱすた屋さん
ファンタジー
ギルドの受付嬢アイラは、冒険者たちから「鉄の女」と呼ばれ、畏怖されている。
絶世の美貌を持ちながら、常に無表情。そして何より、彼女は窓口から一歩も動かない。
彼女の前世は、某大手企業のコールセンター勤務。
営業成績トップを走り抜け、最後には「地獄のクレーム処理専門部署」で数多の暴言を鎮めてきた、対話術の怪物。
「次の方、どうぞ。……ご相談ですか?(クローズド・クエスチョン)」
転生した彼女に備わったのは、声の「真偽」が色で見える地味な能力。
だが、彼女の真の武器は能力ではなく、前世で培った「声のトーン操作」と「心理誘導」だった。
ある日、窓口に現れたのは「相棒が死んだ」と弔慰金をせしめようとする嘘つきな冒険者。
周囲が同情し、ギルドマスターさえ騙されかける中、アイラは座ったまま、静かにペンを走らせる。
「……五秒だけ、沈黙を差し上げます。その間に、嘘を塗り直すおつもりですか?」
戦略的沈黙、オウム返し、そして逃げ場を塞ぐイエス・セット。
現代のコールセンター術を叩きつけられた犯人は、自らその罪を吐き散らし、崩れ落ちる。
「あー、疲れた。一五分も残業しちゃった。……マスター、残業代三倍でお願いしますね」
これは、一歩も動きたくない受付嬢が、口先だけで悪を断罪し、定時退勤を目指す物語。
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします
未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢
十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう
好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ
傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~
こひな
恋愛
市川みのり 31歳。
成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。
彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。
貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。
※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる