【完結】孤独を抱いた英雄と、孤独に生まれた魔法使い〜元Sランクと訳あり美少年の共同生活〜

藤原遊

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「――で、あれが暴発の“つもりじゃなかった”って言うんだから、笑えないよなぁ」

 

カリオスは呆れたように言いながら、杖を軽く肩に担いだ。
ギルドの訓練場の片隅、魔法の痕跡が残った地面を踏みしめながら、リュカは小さく頭を下げる。

 

「すみません……」

「まあいいさ。暴発でも敵が倒れるだけなら、現場じゃありがたいってのも事実だ。
でも、そのままだと本当に“大変なこと”になる。君もそれ、わかってるんだろ?」

 

リュカは無言で頷いた。

 

「それにしても、魔力の量だけじゃなくて、質も異常だ。まるで魔力の“海”を押し込んでるみたいな感覚がある」

カリオスはリュカの額に手をかざし、流れを軽く探る。

「……制御が荒い。だけど、方向性はちゃんとある。……つまり、暴れ馬だな」

「暴れ馬……」

「鞍さえ合えば、すごい騎兵になるぞ?」

そう言って笑うカリオスに、リュカも少しだけ口元を緩めた。

 

 



 

その日から、リュカは自主的に訓練場へ通うようになった。
自分の魔力を制御するために。
誰かを傷つけないように。
そして、シズナの隣にこれからも立つために。

 

シズナは何も言わなかったが、朝の支度の途中でぽつりと、

「行ってらっしゃい」

と声をかけてくれるようになった。

リュカはそれだけで、十分だった。

 

 



 

「……少し、わかってきたかも」

一週間後。
リュカは、魔力を矢の形に整えて飛ばす練習をしていた。

前は放つだけで周囲に衝撃波が走っていたが、今は狙った的の一点だけを穿つことができる。

(魔力は、ただの“力”じゃない。
意思を込めれば、ちゃんと“形”になる)

言葉にはしないが、それを掴みかけていた。

 

その帰り道。

ギルドの入口前で、カイルと鉢合わせた。

「よう、新米。最近、頑張ってるじゃないか。何かあったのか?」

「……ちょっと、思うところがあって」

「ふーん。ま、いいことだよ。努力してる人は、見てる人はちゃんと見てるから」

カイルはそう言って、軽く肩を叩こうとしたが――寸前で手を引っ込めた。

リュカがわずかに緊張したことに気づいたからだ。

「……あ、悪い。癖になっててな」

「いえ……ありがとうございます」

リュカは小さく礼を言い、心の奥でまたひとつ、温かいものが灯った気がした。

 

 



 

家に戻ると、シズナが台所で夕食を作っていた。
その背中を見て、リュカは静かに思う。

(俺はまだ、何者にもなれていない。
でも――誰かを守れる“何者か”には、なれるかもしれない)

小さく、心の中で呟いた言葉は、魔力の海の底にゆっくりと沈んでいく。
波立たせることなく、それでも確かに存在を残して。
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