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「――で、あれが暴発の“つもりじゃなかった”って言うんだから、笑えないよなぁ」
カリオスは呆れたように言いながら、杖を軽く肩に担いだ。
ギルドの訓練場の片隅、魔法の痕跡が残った地面を踏みしめながら、リュカは小さく頭を下げる。
「すみません……」
「まあいいさ。暴発でも敵が倒れるだけなら、現場じゃありがたいってのも事実だ。
でも、そのままだと本当に“大変なこと”になる。君もそれ、わかってるんだろ?」
リュカは無言で頷いた。
「それにしても、魔力の量だけじゃなくて、質も異常だ。まるで魔力の“海”を押し込んでるみたいな感覚がある」
カリオスはリュカの額に手をかざし、流れを軽く探る。
「……制御が荒い。だけど、方向性はちゃんとある。……つまり、暴れ馬だな」
「暴れ馬……」
「鞍さえ合えば、すごい騎兵になるぞ?」
そう言って笑うカリオスに、リュカも少しだけ口元を緩めた。
◇
その日から、リュカは自主的に訓練場へ通うようになった。
自分の魔力を制御するために。
誰かを傷つけないように。
そして、シズナの隣にこれからも立つために。
シズナは何も言わなかったが、朝の支度の途中でぽつりと、
「行ってらっしゃい」
と声をかけてくれるようになった。
リュカはそれだけで、十分だった。
◇
「……少し、わかってきたかも」
一週間後。
リュカは、魔力を矢の形に整えて飛ばす練習をしていた。
前は放つだけで周囲に衝撃波が走っていたが、今は狙った的の一点だけを穿つことができる。
(魔力は、ただの“力”じゃない。
意思を込めれば、ちゃんと“形”になる)
言葉にはしないが、それを掴みかけていた。
その帰り道。
ギルドの入口前で、カイルと鉢合わせた。
「よう、新米。最近、頑張ってるじゃないか。何かあったのか?」
「……ちょっと、思うところがあって」
「ふーん。ま、いいことだよ。努力してる人は、見てる人はちゃんと見てるから」
カイルはそう言って、軽く肩を叩こうとしたが――寸前で手を引っ込めた。
リュカがわずかに緊張したことに気づいたからだ。
「……あ、悪い。癖になっててな」
「いえ……ありがとうございます」
リュカは小さく礼を言い、心の奥でまたひとつ、温かいものが灯った気がした。
◇
家に戻ると、シズナが台所で夕食を作っていた。
その背中を見て、リュカは静かに思う。
(俺はまだ、何者にもなれていない。
でも――誰かを守れる“何者か”には、なれるかもしれない)
小さく、心の中で呟いた言葉は、魔力の海の底にゆっくりと沈んでいく。
波立たせることなく、それでも確かに存在を残して。
カリオスは呆れたように言いながら、杖を軽く肩に担いだ。
ギルドの訓練場の片隅、魔法の痕跡が残った地面を踏みしめながら、リュカは小さく頭を下げる。
「すみません……」
「まあいいさ。暴発でも敵が倒れるだけなら、現場じゃありがたいってのも事実だ。
でも、そのままだと本当に“大変なこと”になる。君もそれ、わかってるんだろ?」
リュカは無言で頷いた。
「それにしても、魔力の量だけじゃなくて、質も異常だ。まるで魔力の“海”を押し込んでるみたいな感覚がある」
カリオスはリュカの額に手をかざし、流れを軽く探る。
「……制御が荒い。だけど、方向性はちゃんとある。……つまり、暴れ馬だな」
「暴れ馬……」
「鞍さえ合えば、すごい騎兵になるぞ?」
そう言って笑うカリオスに、リュカも少しだけ口元を緩めた。
◇
その日から、リュカは自主的に訓練場へ通うようになった。
自分の魔力を制御するために。
誰かを傷つけないように。
そして、シズナの隣にこれからも立つために。
シズナは何も言わなかったが、朝の支度の途中でぽつりと、
「行ってらっしゃい」
と声をかけてくれるようになった。
リュカはそれだけで、十分だった。
◇
「……少し、わかってきたかも」
一週間後。
リュカは、魔力を矢の形に整えて飛ばす練習をしていた。
前は放つだけで周囲に衝撃波が走っていたが、今は狙った的の一点だけを穿つことができる。
(魔力は、ただの“力”じゃない。
意思を込めれば、ちゃんと“形”になる)
言葉にはしないが、それを掴みかけていた。
その帰り道。
ギルドの入口前で、カイルと鉢合わせた。
「よう、新米。最近、頑張ってるじゃないか。何かあったのか?」
「……ちょっと、思うところがあって」
「ふーん。ま、いいことだよ。努力してる人は、見てる人はちゃんと見てるから」
カイルはそう言って、軽く肩を叩こうとしたが――寸前で手を引っ込めた。
リュカがわずかに緊張したことに気づいたからだ。
「……あ、悪い。癖になっててな」
「いえ……ありがとうございます」
リュカは小さく礼を言い、心の奥でまたひとつ、温かいものが灯った気がした。
◇
家に戻ると、シズナが台所で夕食を作っていた。
その背中を見て、リュカは静かに思う。
(俺はまだ、何者にもなれていない。
でも――誰かを守れる“何者か”には、なれるかもしれない)
小さく、心の中で呟いた言葉は、魔力の海の底にゆっくりと沈んでいく。
波立たせることなく、それでも確かに存在を残して。
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