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春。
城を囲む木々に淡い若葉が萌えはじめ、冷たい風も、どこかやわらかさを帯びていた。
庭園の藤棚には蕾が膨らみ、花壇の手入れをする侍女たちの足元を、小鳥たちが跳ね回る。
そんな春の朝、王宮の政庁棟に、ひときわ目を引く姿があった。
リリーナ王女である。
白いレースの袖が風に揺れ、淡いローズグレーのドレスが歩みに合わせてたおやかに広がる。
姿勢は凛と伸び、顔には微笑が宿る。
透き通るような肌と、落ち着いた琥珀の瞳。その喉元で、淡く光るアクアマリンがゆれていた。
彼女の胸に宿るそれは、弟ユリアンから贈られた“祝福”のかたち。
春の陽に照らされ、宝石は雪解けの川のように静かに輝いている。
政庁の官吏たちは、整列し、まるで聖女を迎えるようにリリーナに頭を下げた。
「本日は、お忙しい中……我ら奨学生に機会を与えてくださり、感謝の言葉もございません」
その中の一人、まだ二十代前半の青年官吏が言う。
緊張しながらも瞳を輝かせている。
「いえ。皆さんが努力した結果です。私は、ほんの少しの手助けをしただけ」
「ですが姫様のお言葉が、どれほどの希望になったか……」
リリーナは一歩近づき、青年の手にそっと花束を手渡した。
早春のクロッカスと水仙が束ねられたそれは、季節の始まりと、新たな誓いの象徴。
「これからの国を担うあなたたちが、胸を張って進めるように。――その力になるために、私はいます」
そう静かに語る声は、鳥のさえずりよりも柔らかく。
青年は言葉も出ないまま、その姿を見つめた。
リリーナの周囲には、まるで春風のように穏やかな空気が流れる。
だがその優しさの裏に、冷たい知略と、何より強い信念があることを、今はまだ誰も知らない。
胸元のアクアマリンが、微かに光を揺らした。
それは、彼女の“戦い”がまだ続いている証だった。
――願わくば、この穏やかさが一日でも長く続きますように。
その祈りだけが、春の陽の下でひそやかに胸に宿っていた。
城を囲む木々に淡い若葉が萌えはじめ、冷たい風も、どこかやわらかさを帯びていた。
庭園の藤棚には蕾が膨らみ、花壇の手入れをする侍女たちの足元を、小鳥たちが跳ね回る。
そんな春の朝、王宮の政庁棟に、ひときわ目を引く姿があった。
リリーナ王女である。
白いレースの袖が風に揺れ、淡いローズグレーのドレスが歩みに合わせてたおやかに広がる。
姿勢は凛と伸び、顔には微笑が宿る。
透き通るような肌と、落ち着いた琥珀の瞳。その喉元で、淡く光るアクアマリンがゆれていた。
彼女の胸に宿るそれは、弟ユリアンから贈られた“祝福”のかたち。
春の陽に照らされ、宝石は雪解けの川のように静かに輝いている。
政庁の官吏たちは、整列し、まるで聖女を迎えるようにリリーナに頭を下げた。
「本日は、お忙しい中……我ら奨学生に機会を与えてくださり、感謝の言葉もございません」
その中の一人、まだ二十代前半の青年官吏が言う。
緊張しながらも瞳を輝かせている。
「いえ。皆さんが努力した結果です。私は、ほんの少しの手助けをしただけ」
「ですが姫様のお言葉が、どれほどの希望になったか……」
リリーナは一歩近づき、青年の手にそっと花束を手渡した。
早春のクロッカスと水仙が束ねられたそれは、季節の始まりと、新たな誓いの象徴。
「これからの国を担うあなたたちが、胸を張って進めるように。――その力になるために、私はいます」
そう静かに語る声は、鳥のさえずりよりも柔らかく。
青年は言葉も出ないまま、その姿を見つめた。
リリーナの周囲には、まるで春風のように穏やかな空気が流れる。
だがその優しさの裏に、冷たい知略と、何より強い信念があることを、今はまだ誰も知らない。
胸元のアクアマリンが、微かに光を揺らした。
それは、彼女の“戦い”がまだ続いている証だった。
――願わくば、この穏やかさが一日でも長く続きますように。
その祈りだけが、春の陽の下でひそやかに胸に宿っていた。
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