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王都を包む冬の夜。
雪の降り積もる音すら吸い込む静寂の中、リリーナはユリアンの十四歳の誕生日を祝う小さな部屋にいた。
戦火と混乱で、今年は控えめな祝いとなった。
卓上には掌ほどの白いケーキ。ろうそくは一本だけ、儀礼用の銀器も控えて質素な装い。それでも――弟は嬉しそうに目を細めていた。
「姉さま、今日はありがとう」
声変わりが始まった少年の声は、以前よりも少し低く、けれど幼さの名残を残している。肩のあたりには剣稽古でついた筋が浮き、精神的な成長と肉体の変化の両方を見せていた。
「ユリアンが元気に十四歳を迎えてくれて……それだけで、姉さまは十分嬉しいわ」
リリーナの言葉に、ユリアンはわずかに顔を赤らめながら、小箱を差し出した。
「これ、ぼくからのお返し。宝石は……手に入らなかったんだけど」
包みを解くと、中には粗削りな灰青色の石を丁寧に紐で編み込んだお守りが現れた。
手作りだとひと目でわかる――だが、その分、祈りと気持ちは強く伝わってきた。
「本当はアクアマリンを探してた。でも……戦で流通が止まって、手に入らなくて。薬師の先生がくれたの、この石。癒しの力もあって、魔力をこめればちゃんと働くんだって」
そう言って、ユリアンは少し自信なさげに笑った。
「だから……これで我慢してくれる? でもいつか、もっと強くて綺麗な宝石で、ちゃんとしたお守りを作るから。それを姉さまに……」
リリーナは、その言葉を最後まで聞かずに、そっとお守りを胸に抱いた。
「ありがとう、ユリアン。姉さまにとっては、これがいちばん嬉しい贈り物よ。あなたが初めて作ってくれたお守り……世界に一つしかない、姉さまだけの護りだから」
ユリアンの顔が、ぱあっと明るくなる。
雪明かりが、胸元の灰青の石に淡い光を映した。
「姉さまが、ずっと元気でいてくれるように――祈ってるよ」
「ええ。祈りは、きっと届くわ」
リリーナは微笑みながらも、内心で冷たい現実を見つめていた。
(兄が帰還する舞踏会が近い。彼の戦果を掲げて貴族たちが動き出す……エドガーの報告では、王位継承を推す動きも加速している)
彼女はこの夜の温もりが、明日には冷えた策略に変わることを知っていた。
だが、それでも。
ユリアンが自らの手で作ったお守り――
それが今、胸元に宿っているということが、心を支えてくれていた。
(私は、守る。弟の未来も、兄の誇りも、王国の均衡も……すべて)
雪は止まぬまま、静かに、慎ましく――けれど確実に積もっていた。
舞踏会のその日が、音もなく近づいている。
雪の降り積もる音すら吸い込む静寂の中、リリーナはユリアンの十四歳の誕生日を祝う小さな部屋にいた。
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「ユリアンが元気に十四歳を迎えてくれて……それだけで、姉さまは十分嬉しいわ」
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「これ、ぼくからのお返し。宝石は……手に入らなかったんだけど」
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手作りだとひと目でわかる――だが、その分、祈りと気持ちは強く伝わってきた。
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そう言って、ユリアンは少し自信なさげに笑った。
「だから……これで我慢してくれる? でもいつか、もっと強くて綺麗な宝石で、ちゃんとしたお守りを作るから。それを姉さまに……」
リリーナは、その言葉を最後まで聞かずに、そっとお守りを胸に抱いた。
「ありがとう、ユリアン。姉さまにとっては、これがいちばん嬉しい贈り物よ。あなたが初めて作ってくれたお守り……世界に一つしかない、姉さまだけの護りだから」
ユリアンの顔が、ぱあっと明るくなる。
雪明かりが、胸元の灰青の石に淡い光を映した。
「姉さまが、ずっと元気でいてくれるように――祈ってるよ」
「ええ。祈りは、きっと届くわ」
リリーナは微笑みながらも、内心で冷たい現実を見つめていた。
(兄が帰還する舞踏会が近い。彼の戦果を掲げて貴族たちが動き出す……エドガーの報告では、王位継承を推す動きも加速している)
彼女はこの夜の温もりが、明日には冷えた策略に変わることを知っていた。
だが、それでも。
ユリアンが自らの手で作ったお守り――
それが今、胸元に宿っているということが、心を支えてくれていた。
(私は、守る。弟の未来も、兄の誇りも、王国の均衡も……すべて)
雪は止まぬまま、静かに、慎ましく――けれど確実に積もっていた。
舞踏会のその日が、音もなく近づいている。
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