処刑を望んだ悪役令嬢ですが、幼なじみの騎士が手放してくれません

藤原遊

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番外編 もう一人のヒロイン

10

休日の昼下がり。王都の目抜き通りにある洒落たカフェの階段を、俺はゆっくりと上がった。
二階は貸し切りにしてある。扉を開けた瞬間――ぱたぱたと駆け寄ってきたセラフィーナが、目をまん丸にした。

「え、ええっ……!? に、二階全部……? こ、こんなの……贅沢過ぎます……!」

両手を頬に当てて真っ赤になっている。
あまりに大げさな反応に、思わず吹き出してしまった。

「ははっ……いや、だって俺ら、普通に話すには人目が多すぎるだろう? それに伯爵令嬢がカフェに来るなら、このくらい普通じゃないか?」
「わ、わたし……? 伯爵令嬢……」

セラフィーナは目を瞬かせ、首をかしげたあと、気恥ずかしそうにへらりと笑った。

(……本当に伯爵令嬢なんだよな、この子)

出自を知っているだけに、元平民の反応がまだ抜けきらないのだと感じる。
けれど――そんなところも悪くない。むしろ正直で、俺には好ましく思えた。

「さ、行こうか」

軽く右手を差し出すと、セラフィーナは一瞬ためらったものの、嬉しそうにその手を取った。
その顔には、いつもの明るさと、ほんの少しの照れが混ざっていた。

(今日は――この子の全部を聞いてやる。泣かなくてもいいように、ちゃんと受け止めてやるんだ)

そう心に決めながら、俺はセラフィーナをテーブルへとエスコートした。
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