婚約破棄された令嬢、気づけば宰相副官の最愛でした

藤原遊

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第一章 婚約破棄と新たな決意

2

セラフィーナの婚約破棄は、その日のうちに宮廷中に広まった。
翌日の社交の場では、彼女が姿を見せぬうちから、噂と嘲笑が飛び交っていた。

「やはりエルンスト家は格が浅い。成り上がりの家に王族の婚姻は重すぎたのだ」
「どれほど学問に秀でていようとも、血統の重みには敵わぬ」
「娘があわれで仕方ない。二度とまともな縁談など来まい」

煌びやかなシャンデリアの下、扇子で口元を隠したご婦人方が、笑みを浮かべて囁く。
笑い声は薄い香水の香りとともに漂い、冷たい刃のようにセラフィーナの耳に届いた。

新興貴族。
それはこの国で常に嘲りと疑念の対象だった。
祖父の代に武勲を立てて爵位を得た家に、由緒正しい家々は決して心を許さない。

セラフィーナは廊下の影に立ち、遠くに聞こえる笑いをただ受け止めていた。
悔しさで胸が焼けつく。
涙が滲むが、決してここで顔を歪めるわけにはいかない。

「セラフィーナ」

振り返れば、父と母が立っていた。
父は険しい顔で唇を結び、母は心配そうに彼女の肩に手を置く。

「気にすることはない。お前に落ち度はない」
「ええ。むしろ才を恐れられたのよ。だからこそ……」

その慰めさえ、無力に響いた。
事実として、彼女は婚約を失い、新興貴族の娘として再び冷たい視線の中に立たされているのだから。

セラフィーナは深く息を吸った。
胸の奥で、決意の炎がさらに強く燃え上がる。

結婚に頼らずとも生きていける。
新興の娘だからこそ、自分の力で道を切り拓く。

誰もが笑うなら、必ず見返してやる。
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