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第七章 シャクイードの使者
第五十三話 模擬戦
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1カ月後に控える魔法大祭典に向けて、各クラスの練習が始まった。
学園内にある魔法が使用できる魔法競技ホールを時間で借りられる。
放課後に空いていれば良いのだが、予約を取るのもかなり面倒で必要な時間練習出来るか不安である。
「何とか、明日の放課後17時から取ったわ!」
ナディアが廊下から教室に息を切らせて入ってくる。
「流石!委員長!」
クラニルとランクルリット、カルリットの男子3人が声を揃えた。
「流石ね。
ナディア。」
ティアも笑顔で答える。
「任せてよ。」
ナディアは胸を張って得意げだ。
「チーム戦って、勝利条件は?」
エマが冷静な顔で話す
「チーム戦は、各チームの自衛サイドにあるクリスタルに敵チームが魔法を直撃させれば勝利よ。
だから、守りも重要よ。」
「それなら私守る!」
ティアが名乗りを上げた。
「え?あ、そう。
それなら、男子3人が攻撃ね。
サポートは私とエマでやってみる?」
「そうだね。
それで練習やってみよう。」
「探索ゲームの方は内容が開示されないからぶっつけ本番なのよ。
先ずは、競技試合チーム戦に全力よ!」
次の日の放課後。
魔法競技ホールへと向かうと、競技用にステージが組まれていた。
実際の対戦もここで行われる為、練習用にも設置してくれてある。
「おーい!一年!」
ホールにはどこかのチームが待って居た。
「え?もしかして模擬戦できるの?」
ティアはナディアに問いかけた。
「ああ、言わなかったっけ?
そうよ。
練習相手もお互い必要だから、予約の時点で模擬戦も組まれるよ。」
「そ、そうなんだ。」
エマとティアは小さく呟いた。
ホールで待って居たのは、2年生の先輩チーム。
「よお!一年!やろうぜ。」
2年生とは運が悪い。
あちらは経験者、こちらは初心者。
どうなるか。
「ねぇ、使用できる魔法に制限あるの?」
ティアは素朴な疑問を持った。
「特に無いわ。
ただ、致死相当な魔法は反則。
即失格よ。」
「なるほど。
わかったわ。」
ティアは呟いた。
ピィーーッ!
開始の笛が鋭く鳴り響くと同時に、二年生チームの前衛が素早く詠唱を終え、炎の弾丸を撃ち放った。
「速い!」
一年生チームの誰もが反応できぬまま、真紅の火球は一直線にクリスタルへと飛来する。
だが──
「させない!」
ティアの前に光の盾が展開された。
透明な結界が瞬時に広がり、火球を弾き飛ばす。爆ぜた炎は宙に散り、ホールの観客席からどよめきが起こった。
放課後、生徒達は観戦も出来る。
「へぇ、一年のくせに反応できたか」
二年のリーダー格が口元を吊り上げる。
余裕の笑み。
その背後では雷撃の魔法が次の詠唱に入っていた。
「すぐ来る! 気をつけて!」
ナディアが鋭く声を張り上げる。
男子三人は前衛に展開し、迎撃の準備を整えた。
「クラニル、右!
ランクルリットは援護を!」
ナディアの指示が飛ぶ。
次の瞬間、稲妻の槍が走った。
今度はエマが素早く地面に氷壁を生成し、雷を逸らす。
「油断しないで。
二年は私達より速いわ」
冷静な声だが、その額には汗がにじんでいた。
「エマ、ありがとう!
次は俺が行く!」
カルリットが渾身の風刃を放つが、二年生の前衛が軽く盾魔法で弾く。
「おいおい、そんな力じゃ俺たちにゃ届かねぇよ」
二年生の一人があざ笑う。
その瞬間、ティアの胸にじわりと熱が灯った。
──こう言うのも面白いじゃ無い。
命のやり取りは無いけど、チームで戦ってる。
楽しい!
ティアはクリスタルの前から動かず、けれど瞳は冷静だ。
二年生の攻撃は止まらなかった。
火炎、雷撃、風刃──次々と繰り出される魔法は、威力も速さも一年生を凌駕している。
「守りきれるの!?」
観戦に来て居たメリルが思わず観客席で声を上げた。
だが、ティアは揺るがなかった。
「へへへ!通さないわよ。」
両手を広げると、光の盾がいくつも重なり、クリスタルを覆う。
魔法の壁は何度当てられても傷すら入らない。
前衛の男子たちも必死に攻撃を繰り返し、ナディアとエマがサポートに回る。
「ここで負けたら意味がない!」
ナディアの叱咤が飛ぶたびに、一年生チームの連携は少しずつ形を成していった。
そして──制限時間を告げる鐘が高らかに鳴る。
「……終わったのね。」
ティアが息をつき、光の盾を解いた瞬間、会場に静寂が広がった。
「時間切れだ。
結果は──引き分け!」
審判役の教員が高らかに告げると、ホールはざわめきに包まれた。
「おいおい……俺たちが一年相手に引き分け?」
二年生チームのリーダーが苦笑し、仲間たちも肩をすくめる。
「やるじゃねぇか、一年!」
悔しさ半分、認めざるを得ない表情。
一年生チームは肩で息をしながらも、互いに目を合わせ、笑顔を交わした。
「……皆、やるじゃん……!」
ティアは胸の奥からじんわりと熱くなるものを感じた。
「ええ、これなら……まだまだやれるわ!」
ナディアの瞳も輝いていた。
こうして、最初の模擬戦は──引き分け。
しかし、それは彼らにとって敗北以上に価値ある“収穫”となった。
模擬戦が終わった後。
一年生達は汗を拭きながらホールを後にしようとしていた。
だが、その場に残った観戦者たちの間で、ひとつの名前がひそひそと囁かれ始めていた。
「なぁ……一年のあの子、凄くなかったか?」
「クリスタルを最後まで守り切ったんだぞ。
一年なのに、二年相手じゃ並大抵じゃ無理だ。」
「しかも、あの防御魔法……凄い強度だった。
どれだけ当てられても一回も壊れないなんて。
普通、何度か当てれば一度は壊れるはずなのに。」
ざわめきはやがて「ティアって子の防御が異常に強いらしい」という噂となって、学園内に広がり始めた。
「へぇ……一年に面白い子が居るじゃない。」
観客席で腕を組んでいた上級生の少女が、意味深に笑みを浮かべる。
彼女は魔法大祭典でも有力視される三年生の一人だった。
──守りを抜けない。
それは魔法競技試合において、何よりも厄介な存在。
「ふふ、次の祭典……あの子がどこまで通用するか見ものね。」
一方ティアは、そんな噂が広がっていることを全く知らず、仲間と一緒に「負けなかった!」と小さく喜びを分かち合っていた。
模擬戦が終わり、控え室に集まった一年チーム。
ティア以外は皆ぐったりと腰を下ろし、水を飲んで一息ついていたが、最初に口を開いたのはナディアだった。
「ちょっと!前衛の三人!」
ピシッと声が飛ぶ。
クラニル、ランクルリット、カルリットの三人はビクッと肩を揺らした。
「ティアがどれだけ守ってくれたと思ってるの!? あんた達、攻め込まれてばっかりじゃない!」
「い、いや……相手二年だぞ?
そりゃ強いって……」
「言い訳しないの!」
ナディアの怒声に、三人は小さく縮こまって黙り込む。
「ティアが居なかったら、何度クリスタルを壊されてたと思うの。」
ナディアの言葉に、全員の視線が自然とティアへと集まる。
ティアは肩をすくめて苦笑した。
「ははは、いや、私だって必死だったわよ。
防御は結構しんどいんだから。」
そのとき、エマが落ち着いた声で言った。
「でも……見事だったわ、ティア。
あの防御は、凄かったわ。
全く壊れないなんて。
私では、あんなに強固な防御魔法作れない。」
「え、そ、そう?」
ティアは少し頬を赤らめて照れ笑いを浮かべる。
「あなたのおかげで引き分けに持ち込めた。
それは全員が認めるべき事実よ。」
エマの真っ直ぐな言葉に、ナディアも大きく頷いた。
「そうね。
次は前衛がもっと踏ん張らないといけない。
ティアに全部任せるなんて論外よ!」
「……は、はい……」
肩身の狭そうに答える男子三人。
その姿にティアは思わず吹き出しそうになるが、ぐっとこらえて微笑むのだった。
学園内にある魔法が使用できる魔法競技ホールを時間で借りられる。
放課後に空いていれば良いのだが、予約を取るのもかなり面倒で必要な時間練習出来るか不安である。
「何とか、明日の放課後17時から取ったわ!」
ナディアが廊下から教室に息を切らせて入ってくる。
「流石!委員長!」
クラニルとランクルリット、カルリットの男子3人が声を揃えた。
「流石ね。
ナディア。」
ティアも笑顔で答える。
「任せてよ。」
ナディアは胸を張って得意げだ。
「チーム戦って、勝利条件は?」
エマが冷静な顔で話す
「チーム戦は、各チームの自衛サイドにあるクリスタルに敵チームが魔法を直撃させれば勝利よ。
だから、守りも重要よ。」
「それなら私守る!」
ティアが名乗りを上げた。
「え?あ、そう。
それなら、男子3人が攻撃ね。
サポートは私とエマでやってみる?」
「そうだね。
それで練習やってみよう。」
「探索ゲームの方は内容が開示されないからぶっつけ本番なのよ。
先ずは、競技試合チーム戦に全力よ!」
次の日の放課後。
魔法競技ホールへと向かうと、競技用にステージが組まれていた。
実際の対戦もここで行われる為、練習用にも設置してくれてある。
「おーい!一年!」
ホールにはどこかのチームが待って居た。
「え?もしかして模擬戦できるの?」
ティアはナディアに問いかけた。
「ああ、言わなかったっけ?
そうよ。
練習相手もお互い必要だから、予約の時点で模擬戦も組まれるよ。」
「そ、そうなんだ。」
エマとティアは小さく呟いた。
ホールで待って居たのは、2年生の先輩チーム。
「よお!一年!やろうぜ。」
2年生とは運が悪い。
あちらは経験者、こちらは初心者。
どうなるか。
「ねぇ、使用できる魔法に制限あるの?」
ティアは素朴な疑問を持った。
「特に無いわ。
ただ、致死相当な魔法は反則。
即失格よ。」
「なるほど。
わかったわ。」
ティアは呟いた。
ピィーーッ!
開始の笛が鋭く鳴り響くと同時に、二年生チームの前衛が素早く詠唱を終え、炎の弾丸を撃ち放った。
「速い!」
一年生チームの誰もが反応できぬまま、真紅の火球は一直線にクリスタルへと飛来する。
だが──
「させない!」
ティアの前に光の盾が展開された。
透明な結界が瞬時に広がり、火球を弾き飛ばす。爆ぜた炎は宙に散り、ホールの観客席からどよめきが起こった。
放課後、生徒達は観戦も出来る。
「へぇ、一年のくせに反応できたか」
二年のリーダー格が口元を吊り上げる。
余裕の笑み。
その背後では雷撃の魔法が次の詠唱に入っていた。
「すぐ来る! 気をつけて!」
ナディアが鋭く声を張り上げる。
男子三人は前衛に展開し、迎撃の準備を整えた。
「クラニル、右!
ランクルリットは援護を!」
ナディアの指示が飛ぶ。
次の瞬間、稲妻の槍が走った。
今度はエマが素早く地面に氷壁を生成し、雷を逸らす。
「油断しないで。
二年は私達より速いわ」
冷静な声だが、その額には汗がにじんでいた。
「エマ、ありがとう!
次は俺が行く!」
カルリットが渾身の風刃を放つが、二年生の前衛が軽く盾魔法で弾く。
「おいおい、そんな力じゃ俺たちにゃ届かねぇよ」
二年生の一人があざ笑う。
その瞬間、ティアの胸にじわりと熱が灯った。
──こう言うのも面白いじゃ無い。
命のやり取りは無いけど、チームで戦ってる。
楽しい!
ティアはクリスタルの前から動かず、けれど瞳は冷静だ。
二年生の攻撃は止まらなかった。
火炎、雷撃、風刃──次々と繰り出される魔法は、威力も速さも一年生を凌駕している。
「守りきれるの!?」
観戦に来て居たメリルが思わず観客席で声を上げた。
だが、ティアは揺るがなかった。
「へへへ!通さないわよ。」
両手を広げると、光の盾がいくつも重なり、クリスタルを覆う。
魔法の壁は何度当てられても傷すら入らない。
前衛の男子たちも必死に攻撃を繰り返し、ナディアとエマがサポートに回る。
「ここで負けたら意味がない!」
ナディアの叱咤が飛ぶたびに、一年生チームの連携は少しずつ形を成していった。
そして──制限時間を告げる鐘が高らかに鳴る。
「……終わったのね。」
ティアが息をつき、光の盾を解いた瞬間、会場に静寂が広がった。
「時間切れだ。
結果は──引き分け!」
審判役の教員が高らかに告げると、ホールはざわめきに包まれた。
「おいおい……俺たちが一年相手に引き分け?」
二年生チームのリーダーが苦笑し、仲間たちも肩をすくめる。
「やるじゃねぇか、一年!」
悔しさ半分、認めざるを得ない表情。
一年生チームは肩で息をしながらも、互いに目を合わせ、笑顔を交わした。
「……皆、やるじゃん……!」
ティアは胸の奥からじんわりと熱くなるものを感じた。
「ええ、これなら……まだまだやれるわ!」
ナディアの瞳も輝いていた。
こうして、最初の模擬戦は──引き分け。
しかし、それは彼らにとって敗北以上に価値ある“収穫”となった。
模擬戦が終わった後。
一年生達は汗を拭きながらホールを後にしようとしていた。
だが、その場に残った観戦者たちの間で、ひとつの名前がひそひそと囁かれ始めていた。
「なぁ……一年のあの子、凄くなかったか?」
「クリスタルを最後まで守り切ったんだぞ。
一年なのに、二年相手じゃ並大抵じゃ無理だ。」
「しかも、あの防御魔法……凄い強度だった。
どれだけ当てられても一回も壊れないなんて。
普通、何度か当てれば一度は壊れるはずなのに。」
ざわめきはやがて「ティアって子の防御が異常に強いらしい」という噂となって、学園内に広がり始めた。
「へぇ……一年に面白い子が居るじゃない。」
観客席で腕を組んでいた上級生の少女が、意味深に笑みを浮かべる。
彼女は魔法大祭典でも有力視される三年生の一人だった。
──守りを抜けない。
それは魔法競技試合において、何よりも厄介な存在。
「ふふ、次の祭典……あの子がどこまで通用するか見ものね。」
一方ティアは、そんな噂が広がっていることを全く知らず、仲間と一緒に「負けなかった!」と小さく喜びを分かち合っていた。
模擬戦が終わり、控え室に集まった一年チーム。
ティア以外は皆ぐったりと腰を下ろし、水を飲んで一息ついていたが、最初に口を開いたのはナディアだった。
「ちょっと!前衛の三人!」
ピシッと声が飛ぶ。
クラニル、ランクルリット、カルリットの三人はビクッと肩を揺らした。
「ティアがどれだけ守ってくれたと思ってるの!? あんた達、攻め込まれてばっかりじゃない!」
「い、いや……相手二年だぞ?
そりゃ強いって……」
「言い訳しないの!」
ナディアの怒声に、三人は小さく縮こまって黙り込む。
「ティアが居なかったら、何度クリスタルを壊されてたと思うの。」
ナディアの言葉に、全員の視線が自然とティアへと集まる。
ティアは肩をすくめて苦笑した。
「ははは、いや、私だって必死だったわよ。
防御は結構しんどいんだから。」
そのとき、エマが落ち着いた声で言った。
「でも……見事だったわ、ティア。
あの防御は、凄かったわ。
全く壊れないなんて。
私では、あんなに強固な防御魔法作れない。」
「え、そ、そう?」
ティアは少し頬を赤らめて照れ笑いを浮かべる。
「あなたのおかげで引き分けに持ち込めた。
それは全員が認めるべき事実よ。」
エマの真っ直ぐな言葉に、ナディアも大きく頷いた。
「そうね。
次は前衛がもっと踏ん張らないといけない。
ティアに全部任せるなんて論外よ!」
「……は、はい……」
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