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ジュドーを迎え入れた生活はバタバタと忙しなかった。
ジュドーが騒がしいのではない、むしろ大人しい方だ。
騒がしいのは兄二人だった。
まともに料理をしない二人がトーストと目玉焼きを作ったのだが焦がしてしまい、こんなの
ジュドーに食べさせられない!とレオナルドがわめき、ジュドーのために買ったチョコマー
ガリンをヒエラルがこんなの初めて買ったとしみじみ言っていた。
お風呂だってシャワーで普段済ませる二人は、子供はシャワーだけだと風邪引くかな?バスタブ使えるようにしないと、と二人で泡だらけになりながら磨いた。
そんな生活を一週間も過ごせば、三人で暮らすことにも少しは慣れてきていた。
そんななか、三人で出かけるとレオナルドがジュドーと手を繋ぎながら。
「今日はお仕事だよー」
陽気に言えば、エコバックを持ったヒエラルが。
「ジュドーはまだ留守番させるのは心配だから一緒に行くぞ」
「そうそう」
レオナルドが笑いながらジュドーの口にキスを落とそうとすれば。
「虫歯菌が移る」
「えー」
たしなめられて、しぶしぶという風に額へキスを落とした。
すっかりブラコンに出来上がっている。
目的地に着くまでにジュドーにはソフトクリーム、レオナルドはクレープ、ヒエラルがタピオカミルクティーを手に、古びた倉庫街まで来た。
タピオカをもちもちと食べるヒエラルに、レオナルドが半眼を向ける。
「JKかお前は」
「お前こそかわいこぶるな」
イチゴチョコレートのクレープを頬張るレオナルドにまったく同じ表情をヒエラルは向けた。
サクサクとワッフルコーンを食べ終えたジュドーの口元を拭ってやり、自分達のゴミをヒエラルのエコバックに入れていると、遠目にひとつの倉庫に男が入っていった。
「あれだな」
ヒエラルの言葉に男の入っていった倉庫の入口へ行くと、エコバックから透明なレインコートを二人は着込み、レオナルドがヒエラルにも黄色のレインコートを着せた。
そして倉庫へと入っていく。
そこには、よれよれの服装に無精ひげの男が立っていた。
レオナルドとヒエラルを見やったあと、ジュドーに気づき困惑した表情を浮かべる。
一メートルほど離れた距離で三人が立ち止まると、男がおどおどと口を開いた。
「依頼したハッセだ、お前らがダリアか?二人いるのか?」
「そーそー俺ら二人で活動してんの」
レオナルドが軽快に答えると、ほっとしたようにハッセは肩の力を抜いた。
レオナルドの指で遊んでいるジュドーに視線をやり口を何度か閉口させるが、気にしない事にしたらしい。
「とにかく早速だが仕事を頼みたい」
勢い込んで口を開いた。
「いやー悪いけどうち仲介屋通さないと、仕事しない主義なんだよね」
レオナルドの言葉に、ハッセが目を剥いた。
「じゃあ何でわざわざ会うなんて言ったんだ?仕事を受けてくれるからじゃないのか?」
「あんたを殺してくれって連絡が入ったんだ」
「ひっ」
ヒエラルの言葉に喉を引きつらせると、ハッセはざり、と靴底を滲ませ後ずさった。
「仲介屋を通してたらこんなバッティングは滅多にないんだけどね。依頼料を渋って安く済ませようしたのが裏目に出たね」
レオナルドがケラケラ笑うと、指で遊んでいたジュドーの手をそっと離させる。
そしてハッセがそれに気を取られた瞬間。
「う、ぐぁ」
ノーモーションでヒエラルの投げたナイフが、ハッセの喉にめり込んでいた。
「たす」
血しぶきが上がった瞬間、いつのまにか目の前に来ていたレオナルドが、駄目押しとばかりにナイフを閃かせる。
頸動脈を切り裂かれたハッセはひゅっひゅっと空気を漏らして痙攣しながら汚い倉庫の床へ倒れていた。
返り血まみれになったレインコートをバサリとレオナルドとヒエラルが脱いで、床へと投げ捨てる。
レオナルドが振り返ると、返り血でレインコートを汚したジュドーの顔に、一滴赤い血液が付着していた。
「ああ、顔に飛んじゃってるな」
エコバックからタオルを取り出し、そのまろい頬を拭いてやるとジュドーのレインコートも脱がせて適当に地面に放った。
「ジュドー、仕事が終わったぞ」
ヒエラルの言葉にパチクリと目を丸くすると。
「なんのおしごとやさん?」
小首を傾げる。
それに顔を見合わせると、二人は声を揃えて笑った。
「殺し屋だよ」
「ころしや?」
オウム返しするジュドーの頭にポンと手を置いて、レオナルドが目線を合わせた。
「ジュドー、このことは俺たちだけの秘密だ」
しーっと口の前で人差し指を立てると。
「わかった!」
はい、と右手を上げてジュドーがいいお返事をした。
「にしても馬鹿だよなーここらでアビーちゃん通さずに仕事依頼するなんて。こいつの片付けは?」
肩越しにヒエラルへ振り返ると、スマホを操作しながら。
「清掃屋が派遣されてる。問題ない」
ヒエラルの返答に立ち上がると、ジュドーの右手を取って入口へと歩き出す。
「よーし仕事も終わったし遊園地でも行くか」
「相変わらず好きだな」
「楽しいじゃん」
ジュドーの左手を手に取って歩き出したヒエラルは肩をすくめてみせた。
「俺はローストビーフが食べたくなった」
「お、いいね。今日は肉にするか」
「ぼくもたべる」
わいわいと話しながら、兄弟たちは薄暗い倉庫から明るい外へと出ていった。
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