姫さまを倒せ!

ねね

文字の大きさ
9 / 22

9 脱線

しおりを挟む
 弱ったなー。

 私たち、デートのときの求婚者さまたちのご様子が気になって。

 改めて、都に集まった方々の日々の過ごし方というか、日課のようなものを調べてみたのだけれど。

 そこで判った彼らの日課、人気のトップスリーとは。

 ①食人鬼の弱点探し、②近接戦闘の訓練、③薬や毒の収集---だった。

 完全に食人鬼の討伐に来たノリじゃん!

 ちなみに姫さまの護衛に「いいの?」って聞いたらさ。

「先に命を賭けろと言い出したのは、姫さまの方。私たちがこの状況に文句を言うのも、おかしなもんだ。」

 ってばっさり斬られたよ。
 あいつら、あれで仕事してんのかねー。

 求婚者さまたちの熱気を受けて、街も盛り上がっている。まるで何かの試合前みたいだ。

 まあ、彼らも死にたくないだろうし。手っ取り早い手段にのめり込む気持ちは、わからなくもないんだよ。

 事前に100の口説き文句を用意したところで、姫さまを落とせる保証なんてどこにもないもんね。

 それより闘って勝つことを目指したほうが、まだ確かな対策を打てる。

 丸腰かつ一対一で人間が食人鬼に挑む行為に、勝利の見込みがあるかどうかは別として。

 ……あれ、求婚ってこういうモノだっけ?

 彼ら、結果的に遠回りしてると思わないのかな。

 うーん。姫さまのお好みが、原始的な男性だったら良いんだけど。

★ ★ ★

「やはり、姫さまに護身用の短剣くらいはお持たせした方が…。」

 使い魔その1の視線が左右にさ迷った。

 彼女の手元には、フード付きの鎖帷子が広げられている。姫さまの夜着の下にお召し頂く、特注品である。

 先程から、使い魔その1はため息ばかり。何を仕出かすか判らない求婚者さまたちを姫さまの側にあげるのが、余程心配になったらしい。

「でも、求婚者さまたちの武器は全部没収するんでしょ。姫さまだけ凶器ありにするのは、さすがにフェアじゃないよ。」

 割と楽しそうなのは、使い魔その2。

 姫さまのベルトに緊急時用の警報器をとりつけながら、ニコニコ笑っている。

 使い魔その2、お祭り好きだからな。
 騒々しいほど嬉しいんだろうな。

 私は少々、げんなりしているけれども。

「今さらフェアとか言ってもさ~。そもそもこれ、姫さまの為のゲームだし。」

 ぶーくれて続ける。

「ゲームマスターはうちの姫さまだよ。
 姫さまが“この人と結婚します”って言えば、この騒ぎは終わるんだ。

 なのに何が悲しゅうて、こんな防衛装備を整えなくちゃいけないのさ?」

 私は辺りを見渡した。

 ここは、姫さまのご寝室。

 求婚者さまの逃亡を想定して、寝室の窓にはぶっとい鉄格子が入れられた。

 床と壁には鉄板が張られ、武器になりそうな家具は撤去。ハサミやペンなども持ち出され、お部屋の中はまるで牢屋のよう。

 おかげで、血痕のお掃除なんかは楽になりそうではあるけれども。もはや甘い雰囲気はどこにもないと言って良い。

 これがお姫さまの部屋かっつの。

 私がそう言うと、使い魔その2はケラケラと笑った。

「なーに言ってんの。良い感じの非日常感じゃない。これはこれでロマンチックなんだって。問題ないない~。」

 え。
 この鉄のお部屋、ロマンチックなの??

 頭を抱える私を他所に、使い魔その1がボソボソと呟いた。

「重要なのは、非日常感より姫さまの身の安全です。やはり、中に護衛を控えさせたいのですが……。」

 どこまで厳重にお守りするつもりだ。
 過保護すぎてお相手が引くよー!

 やばい。私たちの平常心は、いったい何処へお出掛けしてしまったのか。今は誰からもまともな考えが出てくる気がしない。

 ともかく、使い魔その1を落ち着かせなければ。

「ええと、次に姫さまに挑戦する求婚者さまはどなたでしたっけ?」

「小柄で、腕に覚えがなさそうな方をと考えております。」

 ああ、“病弱君”にするんだったか。

 こんな風に話が盛り上がっちゃって、あの子も災難だな。

「なら、そこまで相手を警戒しなくても良いと思うよ。最初の求婚者さまだって瞬殺だったみたいだし。姫さまを信じて、外野は静観しよう。」

 あれ?
 いつの間にか、姫さまの勝利を祈るみたいなセリフになってるぞ。

 これ、姫さまに旦那さまが見つかることを祈る場面のはずなんだけど。

 おかしいな、どうしてこうなった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

私を婚約破棄した国王が処刑されたら、新しい国王の妃になれですって? 喜んで…と言うとでも?

あんど もあ
ファンタジー
幼い頃から王子の婚約者だったアイリスは、他の女性を好きになった王子によって冤罪をかけられて、田舎で平民として生きる事に。 面倒な貴族社会から解放されて、田舎暮らしを満喫しているアイリス。 一方、貴族たちの信頼を失った王子は、国王に即位すると隣国に戦争を仕掛けて敗北。処刑される。 隣国は、アイリスを新しい国王の妃にと言い出すが、それには思惑があって…。

予言姫は最後に微笑む

あんど もあ
ファンタジー
ラズロ伯爵家の娘リリアは、幼い頃に伯爵家の危機を次々と予言し『ラズロの予言姫』と呼ばれているが、実は一度殺されて死に戻りをしていた。 二度目の人生では無事に家の危機を避けて、リリアも16歳。今宵はデビュタントなのだが、そこには……。

処理中です...