姫さまを倒せ!

ねね

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10 備えても憂いは消えない

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 1本、2本、3本。緑の瓶が3つ、青い瓶は2つ、黒い瓶は……7本、と。

 まだまだあるよ。多いなー。

 私は今、“病弱君”の荷物を記録しているところだ。彼の挑戦は、明後日なのだが。体調が安定しないということで、少々早めの入城となった。彼は今日から、お城の客間に滞在する。

 “病弱君”の荷物は、薬品系の物がとても多い。何かの液体やら粉やらが大箱に数個分もある。

 服なんて3日分しかないのにねー。そう考えると、この薬品の量は驚きだ。

 即席の竈を作る道具や簡単な器具なんかも持ち込まれており、どうやらここでも薬を作るつもりでいるらしい。

 彼、フツーに薬屋でもして食べて行けば良いのに。

 ちなみに、なぜ姫さま付きの使い魔である私がこんなことをしているのかというと、それはもちろん姫さまの安全保障の為。

 敵情視察をして来いと、使い魔その1に放り込まれたのである。

 求婚者さまは敵じゃない、敵じゃあないよ、お姉さん!

 まあ、状況が状況なだけに、私もたいした抗議をせず、引き受けちゃった訳だけれどもさ。

★ ★ ★

「大量の薬品、ですか……。」

 使い魔その1が口ごもる。

「どれも、劇薬ではないらしいよ?
 ひと通りウチのお医者さんに見てもらったけど、取り立てて不審な物は無いって。」

「………。」

 迷える使い魔その1。

 材料が無害でも、調合すればわからない。心配だ、と顔に書いてある。

 ポンポンと、使い魔その2が彼女の背中を叩いた。

「唯一の趣味だって言ってたからねー。
 求婚する日まで楽しみたいって言われたら、流石に取り上げられないよ。」

「そうそう。あんまり疑うのも失礼だって。相手の目的は、姫さまとの結婚なんだしさ~。」

「ですが…。もし、姫さまにおかしな薬でも盛られたら…。」

「そこはほら、出されたものは食べないよう、姫さまによーく申し上げようよ。」

「あと、彼とはある程度の距離を取るようにお伝えしないとね。」

「ん?あー、毒針でも打たれたら困るってことか。
 ……あれ?近寄らないと命とれなくない?
 姫さまって、体の接触を伴う近接戦闘が専門だったよね?」

 しん、と部屋に静寂が落ちた。

 自分で言った言葉の意味が、じわじわと重く感じられる。

 そう、姫さまは食人鬼。素手で首を引き千切るほどの豪腕だけれども、首に引き千切るような真似はできないのだ。

 姫さまと夜を過ごして、朝まで生きていたらご結婚。

 え、つまり、距離を取って朝まで逃げられちゃったら、姫さまはご結婚?

 それなら、ひとまず求婚の惨劇は終るけど。果たしてそれで、良いのだろうか。

 がたり、と使い魔その1が立ち上がった。

「姫さまの午後のご予定は無かったはずです。至急、部屋の中でも使えるタイプの飛び道工の訓練を行います。使い魔その2はついて来て下さい。
 使い魔その3は、姫さまの明日の予定の調整を。できれば1日、空けて下さい。」

 ですよねー。

 ごめんよ、“病弱君”。

 選ぶのは姫さまなんだ。君は小細工なしで、当たって砕けてくれ。

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