姫さまを倒せ!

ねね

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11 多分、手遅れ

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 翌日のこと。

 朝のお仕事がひと息ついたところで、飛び道工の訓練が行われているという中庭を覗いてみた。

 姫さまの武器は、鉄球か。

 さまざまな大きさ・重さの球が、姫さまの腕から投げ出され、的の鉄板にのめり込んでいく。

 ゴン、ドドドッ、ゴン。

 さっすがー。すんごい重そうな音なのに、さらっと連投とは。

「どう?うちの姫さま。」

 使い魔その2は、鼻高々である。

「カッコいい!なんだか原始的なやり方だけど、強烈な威力があるねー。」

「ふっふっふ。食人鬼は昔、山の中で大岩を投げて獲物をしとめていたって言うじゃない。訓練期間も短いし、すんなり身に付くよう故事に倣ってみたの~。」

「パワーもさることながら、姫さまはコントロールもお見事です。
 課題は、跳弾対策ですね。室内は狭いですから、投げた球が跳ねるようでは使えません。」

「見たとこ、球は鉄板にのめり込んでるよね。跳ねるようには見えないけれど…?」

「いやいや。これだから素人は。」

 使い魔その1、その2が揃って首を横に振った。なんだか楽しそうな腕のジェスチャー付きである。

「姫さまー、次は斜めからお願い致します。」

「わかりました。」

 姫さまが鉄板に対して斜めに位置どりする。

 ガガガン、ガン。ドスドスッ。

 あ、鉄球が鉄板に埋まらない。4発中3発は当たってそのまま真下に落ち、1発は落ちた後さらにコロコロと転がって行ってしまった。

「実際は、夜の暗い部屋の中、望ましくない位置から投げることになるかもしれません。

 的にのめり込まなかった場合でも、そのまま真下に落下するくらいの重さがあるのが安全でしょう。

 幸い、姫さまの筋力であれば多少の重量は問題にならないですし。ここは、大きさと球数を考慮して、ベストな重さを探りますよ。」

 おおっ、頼もしいな~。
 2人の笑顔が輝いてるよ。

 ★ ★ ★

 今日は天気も良い。青空の元、黙々と投げる姫さまと、声をかける仲間たち。

 なんて爽やかなんだ。私も何かやりたいな。

 そうだ、姫さまの夜着を縫おう。

 鎖帷子の上に絹の夜着って、アンバランスだよね。実はずっと気になってたんだ。

 革製で、鎧っぽいデザインにすれば違和感がなくなるんじゃない?

 姫さまはとっても可愛いけれど、お部屋のテイストが変わったこともある。ファッションも多少、路線変更した方が良いだろう。

 それにさっきの姫さま、めちゃくちゃかっこ良かったし!!!

 ★ ★ ★

 この日、私は中庭の木陰に陣取り。上がったテンションのまま、姫さまの夜着を縫い上げた。

 黒革でストンとしたハイネックの夜着を。

 ええと………ちょっと、硬派過ぎたかな?

 何と言うか、作ってる間は、“男受け”という単語が頭からお出掛けしちゃってたんだよね。出来上がりを見て正気づいたと言いますか……。

 いやでも、姫さま筋肉ついてるし。絶対これ似合うし。個人的には萌えるばかりだよ。

 それに、鉄格子のお部屋や鎖帷子と合わせれば、キリッとして良い感じに絵になると思うんだよなー。

 明日の夜は、是非これを着て鉄球を投げて頂きたいものだ。

 そうすれば、きっと“病弱君”だって、軽~く惚れちゃうよ~。

 ……あれ??惚れる前に亡くなっちゃう?

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