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2 おたすけ
しおりを挟む「ふっちー、ふっちー!」
呼び掛ければサイネージに映る山が揺れ、現代的な街の通りに妖しい気配が立ち込める。
やがて映像の向こうでぴょこんと跳ねる影。ツヤツヤした翠の肌に大きな目。
“ふっちー”こと浅井淵が、本性であるアマガエルの姿をしてやって来た。
(わお。すんごい綺麗!!)
真暗はキャーキャー騒ぎたい気分を押さえて口をつぐみこむ。
妖気は凄いけれどもアマガエル。
たいそう美しいので真暗にとっては羨ましい限りだが、この辺は本人も気にしているらしき繊細な問題だ。
サラリとスルーするのが大人の対応というものだろう。
『来たぞ。どうした?』
(あーー……声は低いままなんだ。)
見た目アマガエルなのに違和感がもの凄い。真暗は斜め上を見て気持ちを仕切り直す。
「よっ、久しぶりふっちー。
実は今、静がこっちに来ててさ。」
『えっっ!?静って異形だよね?』
「うん。もうホネだよ。」
骨格標本状態の静は大きく手を振ってふっちーに挨拶した。
ふっちーは愕然としている。
『それ、静なんだ……ダメじゃん。』
「あはは。人の世に来るとどうしてもね。化けた姿を保てずに本性に戻されちゃう。」
鬼が人の世を忌避する最大の理由がこれだ。人の世に来ると鬼は力が落ちて己の姿すらまともに保てない。
化けていない生など鬼にとっては息ぐるしいものなのだ。
「静だってこの格好は嫌だと思う。だから、なんでこんな姿になってまで来たのかを本人に聞きたいんだけど……。ほら、声帯がないもんだから静の声が出ないんだわ。
ふっちー、悪いんだけど妖気を送ってよ。あなたの力で一時的に静の姿を戻したい。」
青池の主であるふっちーの力は実は強大なのだ。彼ならば鬼の世と人の世の境界地からでもそれなりの力を送れるはず。
真暗と静の期待に満ちた目がアマガエルを見つめる。
『うーん。しょうがないなあ。』
ふっちーは引き受けてくれた。
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