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1 街の陰
しおりを挟む真暗とスケルトンの二人連れは、やがてシャッターが閉まった店の間にある細い路地に行き着いた。
ここは比較的暗い通りで人気もあまりない。大きな看板の後ろにしゃがんでしまえば道側から姿を隠すこともできる。
暫くは人の目に付かずに居れるだろう。
弾む息を整えながら、真暗はホネに話しかけた。
「静。なんでここ来たの?
それもそんな格好になっちゃってさー。」
手のひらを突きだして反対の手の指でトントンと叩いて見せれば、意図を察した静は徐に真暗の手に向きなおる。
そしてゆっくりと手のひらに文字を書いた。
“ご・め・ん・な・さ・い。”
じっと真暗を見上げる小さなしゃれこうべ。眼球がないのでよく分からないけれども、おそらく上目遣いになっていそうだ。
真暗は大きく息を吐く。
………彼女はなんだかんだ弟に弱いのだ。この、スケルトンの弟に。
山奥家の父はスケルトンで母は山姥である。姉の真暗は母に似て山姥系の鬼となり、弟の静は父に似たのであった。
「あー、はいはい。うん、びっくりしたね。会社出たらいきなり白骨が飛び付いてきたんだからね……。
お姉ちゃんは骨格のプロじゃないんだよ。最初は誰かと思ったよ。」
あれが静だと分かったのは消去法だ。この年頃のスケルトンで、真暗に飛び付いてきそうなのは弟くらいしかいないと踏んだ。
「それで?静のお肉はどうしたの。いつもはこんなに骨しかない訳じゃないでしょう。」
“ひ・と・の……………”
「人の世に来たら、肉が落ちた?大丈夫なの、体調は?」
“へ・い・き”
(うーん。文字を書いて喋るのはまだるっこしいな……。)
どうしたものかと、真暗は辺りを見回す。
すると向かいの大通りにある店のサイネージが目に留まった。そこにはちょうどお誂え向きに天然水の宣伝で山が映っている。
青々とした実に良い山だ。真暗は、映像の山に向かって小声で呼び掛けた。
「ふっちー、ふっちー!」
サイネージの映像がピタリと静止した。
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