暖炉が好きなシンデレラ

ねね

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25 身の丈に合ったお付き合い、とは

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 ぎゅうぎゅう、ぎゅうぎゅう。

(優しい王子さま。とっても大人しい王子さま。どこか乙女のような、夢見がちなひと。)

 シンデレラは、じーーーーっと王子さまを眺めました。

 スカーフの覆面が付いているので、目の辺りしか見えませんが。王子さまは、彼女よりよほど繊細で温かな顔つきをしています。

 とても、可愛いですね。

 こんな覆面なんかを付けて会いに来てくれる王子さまは。どっぷり血迷った状態が通常運転の、たいへん楽しいお方です。

 一方、かなりなきかん気の坊やでもあり。そこがまた、とてもとても可愛い……ええ。可愛い人なのです。

(うん。
 これは、お嫁さんなんちゃらはナイな。)

 彼はおそらく結婚どころか、交際の申し込みもできないのではないでしょうか。

 なんたって王子さまは。この逃げ癖のあるシンデレラが安心してしまうレベルで、穏やかなのですよ。

 いつも息をひそめた状態で、とても器用に安らいでいるのですから。

(なんか、邪魔しちゃ悪いし。)

 ………そんな気持ちになってしまいます。

(あー。私は、甘い雰囲気の作り方が分からない。下手に動けば、びっくりされそう。

 だから。恋人とか愛人とか夫婦とか、こう、わかりやすく外面を整えたかったのに。

 無理っぽい。うーん、どうしようかなー。)

 シンデレラは困りました。

☆ ☆ ☆

 ぐずぐずしている間に、王子さまのお連れの皆さんも、話のネタが尽きてきたようです。

「~今日のお昼は蒸し肉でアッサリと~。」

 口上が、もはや雑談に移行しております。

 シンデレラは気持ちを仕切り直して、王子さまを突っつきました。

「あの、王子さま。」

「なあに?」

「靴、持ってきてくれてありがとうございます。」

「うん……。」

「それで、あの。今度のお休みの日。一緒に、遊びに行きませんか?」

 フツーに、仲良く。次に会う約束を。
 遊びに行きましょう、王子さま!

 シンデレラは目一杯、圧をかけました。

 ………果たして王子さまをフツーに誘って良いものなのか。そこの良し悪しはシンデレラにはよく分かりません。

 でも、嫌なら断ってもらえば良いですし。

 まずは一歩。シンデレラは王子さまを、遊びに誘ってみたのです。

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